結果発表
2020/06/04 10:00

第23回 文化庁メディア芸術祭 フェスティバル・プラットフォーム賞

応募作品数:46点
受賞作品数:2点
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会
ジオ・コスモス カテゴリー

フェスティバル・プラットフォーム賞

球小説
YouYouYou(日本)
球小説※完成イメージ
作品コメント
ジオ・コスモスに小説の文章を映し出すことで、VRなどの360度映像が周囲の風景を丸ごと記録しているのと同じように、シーンを丸ごと文字にして閉じ込める作品。ページは玉ねぎの皮のように「層」となっており、この層が剥がれることで、次のストーリーが現れる。読者は、球体の真下となる1階、横から見ることができる3階と5階の吹き抜けに面したスペース、ジオ・コスモスの側面をぐるりと巡るオーバルブリッジのそれぞれの場所から、小説を読むことができる。各ページには同時多発的に起こるさまざまな出来事が記されている。読者は任意の位置からストーリーを読み進めることができるが、巨大な球体に表示されるすべての文章を読むことはできず、小説の全体像を把握することはできない。球体を眺める複数の読者たちは、それぞれ別々の場所に立ち、別々の景色を想像しながらも、同じ時間、同じストーリーを共有する。
審査コメント(水谷仁美)
どの応募もクオリティが高く非常に悩ましい審査会となったが、今回は「平面という制限から解放され、球体という新しい視覚表現を手に入れ……」と本カテゴリーのコンセプトにも記載されている通り、球体で表現する意義と新しい表現方法へのチャレンジ度合いを重視して、本作品を選定させていただいた。小説を球体で表現しようとするチャレンジは、古くからある文字というメディアの表現の可能性を広げるものであり、審査委員の関心と期待が集まった。また「四角い本のようにめくるものではなく、玉ねぎの皮のように丸ごと剥ける」、「別々の景色を想像しながらも、同じ時間、同じストーリーを共有」という表現は、球体ならではの特性を生かした世界観で、その統一されたコンセプトやメッセージがさらに映像を見てみたいと思わせるものだった。球体で表現するこの小説の世界がどのような展開で進んでいくのか、実際に上映されるのが非常に楽しみだ。
ドームシアター カテゴリー

フェスティバル・プラットフォーム賞

Starman
Tiff RANDOL(米国)、CEN Kelon(中国)、Thor FREUDENTHAL(ドイツ、米国)、YEN Shih-Lien(台湾)
Starman© IAMEVE、Photo: Starman Banner(made by Kelon Cen)
作品コメント
歌手・パフォーミングアーティストとして活躍するIAMEVE(アイアムイブ)によってつくられた、フルドーム短編映像。歌手自身が扮するイブと、そのソウルメイト、スターマンが多元的な世界で互いを求め合い再会する物語を、魅惑的な映像で描く。舞台となる宇宙空間に現れる地平線や丘、木などの要素は、ボディペインターのマイケル・ロズナーによるペイントを全身に施したイブ自身の体で構成されている。人体によって表現された風景はグリーンバックで撮影され、アニメーションを合成。のびやかなボーカルパートに、耳から体内へと染み込んでいくような広がりのある音が重ねられている。本作は、IAMEVEがメディアを超えて展開するサイエンスファンタジープロジェクト「The Everything Nothing」の一部でもあり、創造、分裂した自己、そして物質的存在の超越をテーマにしている。
審査コメント(水口哲也)
ドームの全天周を生かした演出、ミュージックビデオの新展開を思わせるような音楽と映像の融合、ディテールまで練り込まれたアート性、さらには、無限の広がりを感じさせるそのスケール感、宇宙を舞台にした壮大なストーリー性など、多くの点で非常に高い評価を得た。ユニークで、異質なオーラをまとった作品。ドーム映像を前提としたストーリーボードを観察すると、制作者がどれだけドームの利点を生かして、さまざまな表現に挑戦しようとしたのか、そのプロセスが伝わってくる。本チーム、本スタッフによる、さらなるドーム映像の挑戦に期待を感じずにはいられない。
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