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2026/05/28 12:00

作品の背景や思いの丈を、自信をもって見せてほしい―グッドデザイン・ニューホープ賞審査委員長対談1 / 2 [PR]

作品の背景や思いの丈を、自信をもって見せてほしい―グッドデザイン・ニューホープ賞審査委員長対談

次世代を担うデザイナーの育成を目的に設立された、「グッドデザイン・ニューホープ賞」。5回目の開催を迎える2026年度は、3月25日から8月17日まで応募を受け付けています。応募資格を持つのは国内の各種専修専門学校生・大学生・大学院生、あるいは2025年6月1日以降に卒業・修了した方。テーマは設けず、在学中に独自に創作した作品が対象です。

2026年度のグッドデザイン・ニューホープ賞キービジュアル

一般的な学生や若手デザイナー向けのデザイン賞と異なるのは、受賞者が参加できるワークショップや企業のデザイン・スタジオ見学ツアーといった応募/受賞後のプログラムが充実し、受賞者同士や審査委員との継続的な交流の場が提供されること。こうした場をきっかけに、受賞作の次なる展開や新たな活動も生まれています。

そんな同賞は、2026年度の審査委員長にデザインジャーナリストの川上典李子さんとデザイナーの原田祐馬さんを迎えました。今回の対談では、同賞にかける思いや今デザインを学んでいる世代に抱く印象、応募者に伝えたいことなどについて話していただきました。

応募した人同士のつながりに価値がある

――原田さんは昨年、グッドデザイン・ニューホープ賞「仕組みのデザイン」カテゴリーの審査委員を務め、川上さんは今年から同賞に参加されます。グッドデザイン・ニューホープ賞の目的である「将来のデザイン分野の発展を担う新しい世代の活動を支援すること」の意義について、まずはお二人の考えを伺えますか。

川上典李子さん(以下、川上):これまでの受賞作品はずっと拝見していて、ニューホープ賞ならではの発想、提案に驚かされてきました。学生や新卒社会人のみなさんが今何に関心があり、どういうところに課題を感じているのかが見えてくるところにこの賞の醍醐味を感じています。

川上典李子さんポートレート

川上典李子 ジャーナリスト。デザイン誌『AXIS』編集部を経て1994年に独立、デザイン分野を中心に取材・執筆を行う。21_21 DESIGN SIGHTのアソシエイトディレクター、武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科客員教授、同大学 空間演出デザイン学科 非常勤講師、桑沢デザイン研究所 非常勤講師などを務める

川上:ニューホープ賞には4つのカテゴリー(「物のデザイン」「場のデザイン」「情報のデザイン」「仕組みのデザイン」)があり、これはグッドデザイン賞と関連しています。商品化や現実化がされていない作品で応募できるので、グッドデザイン賞と比較すると、応募作品の中には現実性を詰めていく必要があるアイデアもあります。

ただ、とてもフレッシュで幅広い提案が集まってくるのが魅力で、これからデザインの世界に出ていく方々の発想やデザインが評価され今後に生かされていくのは、グッドデザイン賞に関心を持ってくださる企業にとっても刺激になることではないかと思っています。こうした2つの賞の関係性もとても面白いと思いますね。

原田祐馬さん(以下、原田):審査委員長をお引き受けするにあたって、ニューホープ賞の設立時に審査委員長を務められた安次富隆さんや2025年度まで審査に携わられた齋藤精一さんに話を聞いて面白いなと思ったのは、必ずしも大学で評価されている人たちがこの賞で評価されるわけではない、ということです。

大学ではいい成績を収めても、社会に出ると行き詰まってしまうことってありますよね。逆に、大学で評価されていなくても、働き始めるとどんどん成長する人もいる。この賞が、大学の中での評価とは違う目で見てもらえる場として、社会と接続する一つのきっかけになればいいなと思っています。

原田祐馬さんポートレート

原田祐馬 デザイナー。UMA/design farm代表、どく社共同代表。京都市立芸術大学客員教授、秋田公立美術大学客員教授、京都精華大学客員教授、名古屋芸術大学デザイン総合研究所ディレクター、花園近鉄ライナーズコミュニケーションディレクター、DESIGNEAST実行委員会などを務める。フィールドワークと現場を大切にし、日本中を移動しながら活動する

川上:大学で取り組んだ課題や卒業制作を改めてまとめ直して応募してくださる方も多いと思うんですが、応募にあたってその内容をブラッシュアップしたり、チーム編成を変えて新たなアイデアを盛り込んでくれたりするのだろうと予想しています。

この賞はやはり制約があまりない中でチャレンジできる機会でもあるので、その可能性は無限大だと思いますね。「こんなアイデアは認められない、評価されないのでは」と自分で線を引いてしまうのではなく、自分の気持ちを存分に作品に表現してくれるとうれしいですよね。

受賞式典の壇上での記念写真

2025年度授賞式の様子。中央に最優秀賞受賞者

原田:ニューホープ賞の意義という点では、応募した学生同士でつながりが生まれることにも価値があると思っています。応募者が参加できる「フォローアップ・ゼミ」や受賞者が参加できる「デザインワークショップ」などですね。僕は第1回目からワークショップの講師を担当していますが、こうした場で参加者同士の交流が生まれているのを見ると、ニューホープ賞は一般的なアワードにはない将来的な広がりを感じさせてくれます。

例えば、第1回で最優秀賞を受賞した奥村春香さん(受賞作品「第3の家族」)は、アフタープログラムで出会った受賞者の人たちと一緒にプロジェクトを起こしていて。近しい志を持つ人たちとつながって、お互いのアイデアに刺激を与え合いながら、支え合える関係になれるのはとてもいいなと思います。

――アワードだけで終わらない、その後の交流やつながりがニューホープ賞の特徴であると。

原田:いくつかのイベントでは過去にニューホープ賞を受賞したOB・OGの子たちも来てくれるのですが、その中の一人に、「会社でうまく立ち回れない」と会うたびに相談してくれるOBがいて。ただ、やっと自分でデザインした製品ができたと最近伝えてくれたんです。その報告はとてもうれしかったです。

ワークショップ参加者がテーブルを囲んで作業している様子

デザインワークショップの様子

川上:大学の先生や友だちとはまた違う、第3、第4の居場所になっているのがいいですよね。継続的にアドバイスをもらったり、立ち返ることができる場になっている。

新しい世代のデザイナーに対して個人的に興味があるのは、一緒に物事を考えてみたいと思う他者に、積極的に自分からアプローチしていくところなんですよね。プロダクトの学生がエンジニアと組んだり、サイエンス分野の人を巻き込んでグループやチームを組み、考えを交じり合わせながら前に進んでいく姿など、とても有機的だなと。そうした交流が生まれるきっかけがニューホープ賞にはあるし、やはり他とは違うアワードの形である気がしています。

原田:アワード自体がプロジェクト化されて、参加者の今後の活動に影響を与えていくのがいいですよね。そうした場所を作ることがニューホープ賞の存在意義の一つだと思います。

個人的な体験や課題から生まれるデザイン

――「新しい世代のデザイナー」という話が出ましたが、新しい世代のデザインについてお二人はどういった印象を持っていますか?

原田:グッドデザイン賞から生まれた賞だからだと思いますが、「社会性」とつながっているものが多い印象があります。他には、素材の探求をしていくような方や、サイエンスやテクノロジーの分野とオーバーラップしたデザインを志向する人も増えていますよね。プログラミング教育を小さい頃から受けてきている世代だと思うので、仕組みから考えていくことが体に馴染んでいるんだと思います。

2025年度の最優秀賞作品(佐野風史・藤本未来「天体音測会」)も、バックエンドをしっかり作り上げているところがすごくて、そこをやり切る力があるなと感銘を受けました。

二人の男女がヘッドホンを装着し、夜空を見上げている様子の「天体音測会」作品イメージ

「天体音測会」。光害により星の見えない都市部で、星を音で聴く取り組み。データの可聴化技術の習得からプロトタイピングを重ねたプロダクト化、検証を重ねた先でのサービスデザイン、社会に届ける体験価値のデザインまでを丁寧に行った点などが評価された

川上:2024年度の受賞作品で印象に残っているひとつに、都市の生きづらさから逃れる避難場所を作り出す試みを提示する作品(中川優奈「日常の死角に夢を見る。」)があるのですが、自分の内面に素直に向き合った上で、自然にプロダクトアウトしている作品もこれまで興味深く目にしていました。SNSなどを通して社会に対してリアクションするのが当たり前になっている現代だからこそなのだと思いますが、個人的な不安や悩みをデザインによって社会に開いていく作品には、今後の社会への大きな可能性を感じます。

原田:2025年度の受賞作の中には、狩猟した猪や鹿を山から持ち帰るための運搬機(上田俊一「DBT」)をデザインしている方がいましたね。猟師としてのフィールドワークを通して得た課題から出発しているとのことで、これも実感値がとても高い。社会課題というものをそこまで意識せずに、「身近な人が困っているから」といった動機からスタートしている感じがするんですよね。インクルーシブデザインの方向に近いかもしれません。

川上:いいですよね。誰か一人のために考えたことは、もっと大多数の人にとっても大切だという感覚がある。

原田:それがアワードで評価されると、「私もこんなことを考えています」って手を挙げる人が増えていくんだろうなと思います。

川上:大切なところですね。また、実感から生まれるデザインって、人間らしい。それに新しい世代のみなさんが挑戦していることがうれしいです。大学やデザインの専門学校で学生と接していると、それぞれになにかきっかけさえあれば、広く能動的に動いていくエネルギーがあることを感じます。だからこそ、アワードを通して新しい人や価値観に出会ってほしい。情報が多すぎる社会になっていますから、こうした実体験の持つ意味も大きくなっていると思います。

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