結果発表
2026/05/12 10:00

FactorISM ART AWARD 2025

主催:MUIC Kansai、FactorISM、株式会社The Chain Museum

受賞作品数:6点

グランプリ賞

時間を辿る帳_松村釦
鈴木美緒
時間を辿る帳_松村釦
作品コメント
松村釦を使い、ボタンに内包された思いを鑑賞者が辿ることのできる作品である。これらのボタンは洋服に付くことができなかったが、ボタンを製造する過程で、ボタン一つ一つに思いや時間が込められている。そして「ボタンを洋服に縫い付けて、誰かが着て、人々の暮らしと共にある」というあったかもしれないボタンの物語に思いを馳せてほしい。ボタンとはとても身近なものである。ボタンの帳の中を歩きながら、職人さんの思いに触れ、日々自分たちが身につけているボタンについても考えてもらえたらと思う。松村釦の過去から未来への時間の物語を提示する。

松村釦株式会社

松尾泰貴 審査員特別賞

Manustructure
新家亮太
Manustructure
作品コメント(一部抜粋)
製造業における生産は本来、効率と精度を追求する工学的営みである。しかしその内側には、機械の反復運動や職人の所作が織りなす無意識のリズムと秩序 ── 構造化された美が潜んでいる。《Manustructure》は、工場で稼働する機械に光を当て、その影を支持体へ落とすことで生産システムの構造そのものを描き出す作品である。映し出されるのは機械の実体ではなく、部品を生成し続ける装置のシルエット。形態は抽象化され、機械という具体的存在は美的構造体 ── すなわちシステムとして立ち現れる。NIINOMIはアーティストとして“System as Art”という概念を提唱し、個体ではなく関係性と構造こそが美を生むという態度を示してきた。本作では、自律的に稼働する機械がつくる複雑で非人間的な運動のなかに、絵画的構成や詩的リズムが見出される。


吉川鐵工株式会社

齋藤精一 審査員特別賞

遡及空間(そきゅうくうかん)
中村 岳
遡及空間(そきゅうくうかん)
作品コメント
廃材にアクリル絵具を塗り、三次元空間に「描く」ことで、新たな立体感と浮遊感を生み出す「三次元絵画」プロジェクト。作品は、舞台美術や大工の経験を活かし、廃材を組み立て、平面と彫刻の狭間を行き交う“虚像”の立体構造として空間に浮かび上がります。これにより観客は作品空間に溶け込み、重力から解放された無重力のような感覚を体験。さらに、地域の文化や伝統を素材として取り込み、制作の過程から観客や土地と対話し、共創的なアート活動を展開します。作品はそれ自体が町のシンボルとなり、観る者に没入型の視覚旅を提供。従来の平面絵画がもたらせなかった自由な空間操作を提示し、新しい芸術表現の可能性を切り拓きます。

株式会社小泉製作所

木ノ下智恵子 審査員特別賞

2025
冬木遼太郎
2025
作品コメント
100年後、もしくはそれより先の未来に技術を伝えるための立体作品を制作する。それは単なるオブジェではなく「多彩な技術のカタログ」として、さまざまな工法・技術を用いてつくられる。職人的な技術は、その技術が高度であるほど手垢が残っていないように見え、偏りのない精度でものを作り上げていく。それにつれて、どのくらい難しいものであるか、素人目にはわからないものになっていく点が興味深い。一方で、技術者同士にしかわからなかったりするそれは、深度のあるコミュニケーションだと言えると思う。作品は五感を通して鑑賞されるが、誰もが共通で理解できない技術がそこに存在している一方で、それが遠い時間を経たコミュニケーションとして用いられること、その複雑な視点の可視化が本プランの試みです。

株式会社一瀬製作所

小西利行 審査員特別賞

記憶の雨音
塩月卓也
記憶の雨音
作品コメント(一部抜粋)
無数の金属の筒が、天井から静かに吊り下がっている。重力に導かれ、光を纏い、空間を変える。一本一本がわずかに揺れながら、他の筒と干渉し、触れ合い、ときにかすかな音を鳴らす。金属が奏でるその微細な音は、風に揺れる葉のようでもあり、どこかで聞いたことのあるような、記憶の底をくすぐるような響きをもつ。かつて工場でこの鉄パイプが奏でていた音は、全く異なるスケール・スピードで繊細に蘇る。長さ120mm前後、直径19mmの鉄パイプ。その表面には、来場者や照明、周囲の壁までもが映り込む。中空のパイプは、空気や音を通し、空間の“気配”までも透過させる。それは単なる物体の集合ではなく、空間そのものを感じ取るセンサーであり、媒介である。足を踏み入れることで気流が変わり、筒がわずかに揺れ、音と反射が応える。鑑賞者の存在や動作そのものが、作品の一部になる。


株式会社友安製作所

オーディエンス賞

Catch the Wave
藤田クレア
Catch the Wave
作品コメント
銅のプレス抜き型をアンテナに用いた鉱石ラジオ。その姿は、盆栽のように形を整えた工業の樹。ラジオは電源を持たず、空間に漂う目に見えない声を拾い上げる。不可視の信号が音となって立ち上がるとき、自然と技術、静寂と響きがひとつの景色を結ぶ。

チトセ工業株式会社
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