第8回 日銀グランプリ~キャンパスからの提言~《学生限定》

募 集 終 了

  • 文芸・コピー・論文
  • 募集要項
  • 結果発表

応募作品数:136編
受賞作品数:5編
主催:日本銀行

最優秀賞

「起業アイデアの新たなコンテスト方式~Facebook 活用によるアイデアの進化を目指して~」

「起業アイデアの新たなコンテスト方式
~Facebook 活用によるアイデアの進化を目指して~」
明治大チーム

【審査員評】
明治大学チームの提言は、ソーシャル・ネットワーキング・システム(SNS)の一つであるフェイスブックを利用して、大学内で皆がアイデアを出し合いながら、起業コンテストを行うというものです。
フェイスブックの「いいね!」ボタンがどれだけ押されたかでコンテストの優勝者を決定する仕組みは、非常にシンプルで分かり易く、かつ実現可能性も高いと思います。また、コメント機能を活用してアイデアをブラッシュアップしていけるという点は、従来のコンテストにはない利点だと思います。
一方、提言のスキームにはクリアしなければならない論点があるように思います。まず、学内における「いいね!」の数で評価する場合、真に優れたアイデアが選ばれるかどうか不確実な面があります。実際の起業の前に、実現可能性や収益性について何らかのスクリーニングの仕組みが必要ではないかと考えられます。また、フェイスブック上で起業アイデアを開示することによって、そのアイデアを第三者に盗用されてしまうリスクがあります。さらに、ファンドの資金をどのようにして集めるかについては、工夫が必要だと思われます。

優秀賞

「ネットとリアルのつながり金融~IT と人的サポートを融合した21世紀型金融ビジネス~」

「ネットとリアルのつながり金融
~IT と人的サポートを融合した21世紀型金融ビジネス~」
成城大チーム

【審査員評】
成城大学チームの提言は、新しいクラウドファンディングの仕組みとして、リアルのイベントにおけるプレゼンテーションを導入することにより、IT 技術と人の繋がりを融合させた新しい金融サービスを切り拓いていくという内容でした。
本提言では、従来のクラウドファンディングにおいて資金調達に失敗したり、資金調達後のプロジェクト運営に失敗したりするような案件についても、資金面や専門家の助言を通じて「再挑戦」を後押ししようとしています。わが国では、ともすると難しいとされてきた再挑戦が可能となることで、失敗を恐れずにリスクを取る動きを促進することが期待されます。また、ネット上の情報だけでは、資金調達者や運営事業者の信用を得にくいことを踏まえ、イベントの開催などリアルとの組み合わせやクレジットカード業界団体の提供する信用情報の活用により信用を補完しようと試みている点にも、工夫の跡が窺われました。
一方、既に成功している既存のクラウドファンディングとの差別化が十分に図られているのか、はっきりしない面があるように思いました。また、説明の中でも触れられていましたが、提言された新しいスキームの収益性についても、課題があると思います。特に、イベント開催などリアルとの組み合わせにより本スキームの信用を補完するのはよい発想ですが、他方で、それに伴うコスト面の検討がやや甘いのではないでしょうか。地域金融機関など現にリアルのビジネスを手掛けている事業者(いわば「目利き」)と連携していくことなどが考えられるのではないかと思いました。

「高齢者向け金融教育チーム『出張知るぽると号』~プロボノとボランティアの二人三脚~」

「高齢者向け金融教育チーム『出張知るぽると号』
~プロボノとボランティアの二人三脚~」
専修大チーム

【審査員評】
金融機関等を退職した金融の専門家のボランティアとそれをサポートする大学生が、二人三脚で高齢者向けに金融知識を提供し、最終的には、高齢者が金融資産の選択の幅を広げられるようにしていこうとする提言です。
「プロボノ」となる退職した専門家のボランティア、プロボノを支える学生ボランティアが協力しながら、金融知識の普及を進めていくという仕組みは、実現性や発展性の高い取り組みだと思います。また、高齢者、プロボノ、学生ボランティア、それぞれの立場で具体的なメリットが期待される点も、高い評価を得ました。
ただ、良質な金融知識を提供するために、プロボノの質をどうやって確保していくのか、仮にトラブルが発生した場合にどのように解決していくのか、といった点について、より突っ込んだ検討があればよいと思いました。また、今回の提言は主に「どうやって金融知識を高齢者に届けるか」に着目したものとなっていますが、それに加えて「どのような金融知識が提供されれば、金融リテラシーを向上させることができるか」という視点がないと、最終的な目的は達成できません。こうした視点での検討があれば、提言がより説得的なものとなったように思います。また、本提案を子供向けの金融教育に活用してみることも検討に値するかもしれません。

敢闘賞

「宝くじ型ファンド ~『感情』から始まる社会への貢献~」

「宝くじ型ファンド ~『感情』から始まる社会への貢献~」
東京理科大チーム

【審査員評】
東京理科大チームの提言は、インターネットで宝くじを販売し、その資金を成長性や社会貢献の観点から選んだ企業に投資するというものです。
社会に貢献したい人々の「感情」を、身近な宝くじを通して実際の投資に結び付けようとする試みは、学生らしい視点に基づくものだと感じました。宝くじを購入した投資家が社会貢献意識のもとで、当選配当金も期待できる点は大きなメリットだと思います。また、今回の提言では、手間をいとわず周囲にアンケート調査を実施し、その集計結果を分析して自らの考え方を裏付けています。これは独りよがりの提言になってしまうことを防ぐ工夫であると思います。
本提言を実行に移すためには、宝くじに関する法令との関係をどのように考えるかという大きな課題があります。また、ファンドと宝くじの購入者との間の法律関係や本スキームにおける「宝くじ券」の法令上の位置付けなど、本ファンドの仕組みについて、より現実的な観点からの検討が必要であるように思いました。さらに、地方自治体に収益が帰属し、その収益を公共のために用いる既存の宝くじとの棲み分けをどうするか、といった問題もあると思います。

「伝統文化を活かした長期投資のしくみ~海外政府系ファンドを対象とした日本庭園ファンド設立の提案~」

「伝統文化を活かした長期投資のしくみ
~海外政府系ファンドを対象とした日本庭園ファンド設立の提案~」
慶應義塾大チーム

【審査員評】
長期投資に積極的な海外政府系ファンドから資金調達し、その資金を投資して日本庭園の集客力を高め、ひいては文化財の活性化にも繋げようという提言でした。
これまで経済合理性という面からは、必ずしも光が当たってこなかった公立の日本庭園にスポットを当て、長期投資の対象となり得る観光資源として評価し直した点は、着眼点として面白いと思います。フランスの事例なども参考にしつつ、実際に日本庭園に足を運んでフィールドワークを行い、そこで見聞きしたことを踏まえて提案を検討している点も評価できるところです。
一方、投資ファンドとして成立するためには、一定の収益性が確保されていることが必要条件です。財政再建が課題となっている中、公立庭園の運営予算も削減される可能性があり、その打開策の一つになり得るとの主張でしたが、現状の赤字幅(費用と収入のギャップ)が大きいだけに、収益性についてより突っ込んだ検討があれば良かったと思います。また、海外政府系ファンドについては、収益最大化を志向しているため、日本庭園を保存したいという本提案の目指す方向性と異なってくることも予想されます。こうした場合に、どのようにして出資者である海外政府系ファンドと、庭園を管理する国・地方自治体、ひいては納税者との間で利害を調整し、望ましい方向に持っていくかという点についても、具体的な検討が欲しかったところです。