第17回 文化庁メディア芸術祭

募 集 終 了

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応募作品数:4,347点
受賞総数:32点/功労賞:4名
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会

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アート部門/大賞

cr t mgn

Photo : Uwe Walter Courtesy Galerie EIGEN + ART Leipzig/Berlin and The Pace Gallery

「cr t mgn」

Carsten NICOLAI(ドイツ)
©2013 Carsten Nicolai. All rights reserved.

メディアインスタレーション

作品概要

本作は、テレビのモニターに映るイメージが、磁石の力を受けて変化するさまを「見る」こと、そして電磁波の作用によって発生した音を「聴く」ことを観客に促す。モニター上には、空間内に設置された4つのネオン管の光が映し出される。天井から吊られているのは、磁石の付いた揺れる振り子。その磁界をテレビに設置されたアンテナが捉え、振り子が通過するたびに、モニター上のイメージは歪んでいく。一方でアンテナは電磁波を分析する装置として音響機材へとつながっている。電磁波の変動が音響信号へと変換されることで、観客はそれを「音」として知覚することができる。本作は、日常の中では人間が感じることができない電磁波を、視覚と聴覚で捉えることを可能にする。

アート部門/優秀賞

   を超える為の余白

©三原聡一郎

「   を超える為の余白」

三原 聡一郎(日本)
©2013 Soichiro Mihara All rights reserved.

メディアインスタレーション

作品概要

本作は、エアーポンプ、電源制御回路、水、シャボン液、グリセリン、エタノールそして電気を用いて空間中に「泡」を発生させるインスタレーションであり、2011年より作者が展開する「空白」のプロジェクトの一環に位置づけられている。テーマである「空白」は、アートの観点による未解決の“問い”の為のスペース、常に変化し続ける把握不能な“規模”を示す。作者にとって、何かを失った「空虚」な出来事の印象は、時を経て「空白」に変化していった。本作では、常に変化するこの現代の状況を「泡」の生成によって具現化した。具体的な形を持たず、重さもない、巨大な塊として変化し続ける「泡」。観客にそれを直視させることで、「社会」の在り方に気づきを与える作品。本作の光景は、当事者と他者の関係性、社会を規定する近代以降の枠組み、3.11以降の今を考えるための多様な視点について、議論のきっかけを生み出している。


Dronestagram

©James Bridle / booktwo.org

「Dronestagram」

James BRIDLE(イギリス)
©James Bridle

ウェブサイト

作品概要

本作は、無人航空機(drone)に攻撃された人目につかない風景を、調査された報道記事、地図データ、ソーシャルメディアを通じて明らかにするプロジェクトである。宣戦布告なき戦争や暗殺計画では無人航空機(UAVSやdrone)が実際に使われているが、最近までこの事実が注目されることはなかった。その理由は、21世紀の今日になっても、戦場が私たちの目に触れないからだけではなく、技術的、政治的な背景のためでもある。この『Dronestagram』では調査報道記者からのデータを活用して一般公開されているデジタル衛星地図上に攻撃された場所を見出し、更にこれらの風景画像を「Instagram」「Tumblr」「Twitter」等のソーシャルメディアに投稿する。そうすることで、監視、暴力、戦争とネットワーク技術との関係と不調和を示すものである。


Situation Rooms

©Jörg Baumann / ruhrtriennale

「Situation Rooms」

Rimini Protokoll(ドイツ/スイス)
©Rimini Protokoll, Helgard Haug, Stefan Kaegi, Daniel Wetzel, Dominic Huber, Chris Kondek

インタラクティブアート

作品概要

本作は、観客がiPadを持ち、映画撮影用セットを巡り、画面に映し出されるインタビュー映像を見ながら体験するインスタレーションである。ここでは、「武器」によって人生が左右された、さまざまな出生を持つ20人が登場する。グローバル化した世界を再構成するかのようなセット内では、ピストルと携行式ロケット弾、ライフル銃と無人機、支配者と難民といった予期せぬ関係や隣人に出会ったり、すれ違ったりする。観客はセットの中で、iPadで表示される“住人”を追い、それぞれの道を進み、“住人”の身の上に起こった体験談を、見て、聞いて、体験することによって、自らもまた住人となっていく。観客はさまざまな出来事に巻き込まれながら、他の参加者とともに、登場人物の視点を追うようにして進んでいく。映画のセットという迷宮に迷い込むことで、観客は複雑で緻密な複眼的な視点から、“目撃者”を再現する役割を担うのである。


The Big Atlas of LA Pools
「The Big Atlas of LA Pools」

Benedikt GROSS(ドイツ)
©Benedikt GROSS, Joseph K. LEE

データアート

作品概要

本作は、現代における多種多量のデータ(ビッグデータ)、公開されたオープンデータ、クラウドソーシングやシチズンサイエンス(一般市民が参加する科学研究活動)、マッピングとその制作過程をグラフィックとして再構成した作品である。作者は、43,000個以上ものプールや人工水域を探して、その輪郭をなぞった。しかし、コンピューター上では正確に線を引くことができない。作者は、研究エリアであるロサンゼルス郡の航空写真を作成するために、クラウドソーシングを活用した。また、作成されたデータセットは、インドにあるクリッピング会社やアマゾンメカニカルタークなど、商業的な第三者のオンラインサービスでこのデータの正確性を立証した。文脈に沿った情報のレイヤーを重ねたことで、意外な、面白い、あるいは不穏な、ロサンゼルスの社会と、物理的な地形の空間関係が浮かび上がる。

エンターテインメント部門/大賞

Sound of Honda / Ayrton Senna 1989

©©Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates.

「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」

菅野 薫/保持 壮太郎/大来 優/キリーロバ ナージャ/米澤 香子/関根 光才/澤井 妙治/真鍋 大度(日本/ロシア)
©Honda Motor Co., Ltd. and its subsidiaries and affiliates.

映像、ウェブサイト、メディアインスタレーション、サウンド

作品概要

走行データを用いてドライブをデザインする本田技研工業のカーナビゲーションシステム「インターナビ」。その独自の技術と歴史をひもとくため、1989年のF1日本グランプリ予選でアイルトン・セナが樹立した、世界最速ラップの走行データを用い、彼の走りを音と光でよみがえらせた。エンジンやアクセルの動きを解析し、実際のMP4/5マシンから録音したさまざまな回転数の音色と組み合わせることで、当時のエンジン音を再現。全長5,807mの鈴鹿サーキット上に無数のスピーカーとLEDを設置し、再現した音を走行データに合わせて鳴らすことで、24年前の走りを表現した。特設サイトではWebGL(ウェブページ上で3Dグラフィックスを表示する標準規格)により当時のラップタイム“1分38秒041”を3DCGで再現し、セナの走りを体感できるコンテンツを公開。加えて、当時のエンジン音を自分のクルマで楽しむことができるスマートフォン用のアプリも開発・配布された。

エンターテインメント部門/優秀賞

スポーツタイムマシン
「スポーツタイムマシン」

犬飼 博士/安藤 僚子(日本)
©2013 Sports Time Machine

メディアインスタレーション

作品概要

本作は、壁に投影される昔の記録と実際に「かけっこ」できる装置で、「山口情報芸術センター[YCAM]10周年記念祭」をきっかけに誕生した世界で最初の“スポーツのタイムマシン”である。過去の自分や、家族、友達、動物の走った記録に挑戦でき、自身の走った記録は3Dデータで同時に保存される。「走る」という行為が思い出だけでなく、メディアとして存在し続けることの面白さに着目した本作は、スポーツを通じて、過去、現在、未来を横断した身体コミュニケーションを提供する。山口市の多くの市民の協力のもと、商店街の中に設置され、展示期間中は「大メディア運動会」と称した祭りやワークショップを開催。多くの笑顔を生みだした。また、市民が自ら長期的に活用する方法を考える会議を開き、ウェブサイトなどの機能拡張も続けられている。2020年の東京オリンピック開催を見据え、継続的に活動を展開している。


プラモデルによる空想具現化

Photo:萩原楽太郎

「プラモデルによる空想具現化」

池内 啓人(日本)
©2013 IKEUCHI Hiroto

ジオラマ、ガジェット

作品概要

本作は「プラモデルによる空想具現化」をテーマに、パソコンを始めその周辺機器をプラモデルを用いて改造し、ジオラマを作ることで、誰もが一度は空想するであろう世界を創りだしたものだ。個人の記憶を保存する建物としてのパソコンは、その記憶を守るための要塞基地として、縦横無尽に動きまわるマウスは防衛用の戦車として、本来の形状や使われ方に着想を得た具現化を施され、そのものが持つ特色や可能性が浮き彫りにされている。改造されたパソコンや周辺機器は、世界観を演出する建造物や風景として造形し直されているものの、機器を構成する電子回路や配線、機構などは破損されずに保たれており、そのまま使用することが可能である。


燃える仏像人間

©2013 燃える仏像人間製作委員会

「燃える仏像人間」

宇治茶(日本)
©2013 moerubutuzouningen-seisakuiinkai

劇メーション

作品概要

本作は原始的なアニメーション手法ではあるものの、単純ゆえに自由な表現が可能な“劇メーション”と呼ばれる映像表現で構成され、劇中でさまざまなエフェクトが試されている。物語は京都で相次ぐ謎の仏像盗難事件が舞台。女子高生「紅子」は実家である寺の仏像を盗まれ、その上に両親までも惨殺され、天涯孤独の身となる。身寄りの無い彼女は両親の旧友である僧侶「円汁」の寺に引き取られる。そこで彼女は両親と仏像が融合したかのような醜い仏像人間と遭遇する……。ストーリーの中で、映画の冒頭と終盤には実写シーンも挿入され、主人公「紅子」を演じる井口裕香が怪しい劇メーションの世界へと誘う。作品のテーマは“融合”。仏像と人間が融合する奇想天外なストーリーを通じて、「紅子」の成長と淡い恋を描きだす。怪奇性が強い作品であるが、芸人の「桜稲垣早希」が歌う主題歌は「紅子」の気持ちを明るく歌い上げる。


トラヴィス「ムーヴィング」
「トラヴィス「ムーヴィング」」

Tom WRIGGLESWORTH/Matt ROBINSON(イギリス)
©2013 Red Telephone Box

ミュージックビデオ

作品概要

イギリスのバンド「トラヴィス」のシングル「ムーヴィング」のミュージックビデオ。息が白く見える低い気温の中で、バンドメンバーが歌う息に、プロジェクターでアニメーションを投影し、撮影されている。彼らの初期作品「Love is in the Air」で試みた技術を応用した、特殊技術を使わないカメラの撮影というアナログな手法で、ヴィジュアル・エフェクトのような効果を生み出すことに成功している。アニメーションは、それぞれのバージョンで息をしては微調整を繰り返し、最も鮮明な映像を求めて何百ものバリエーションを試作しながら数週間かけてじっくりと作成された。本作の撮影は、人工的に氷点下にまで冷やされたスタジオの中で複数のプロジェクターを用いて行い、そこにはバンドメンバーを暖めるためにたっぷりの熱いお茶も用意された。

アニメーション部門/大賞

はちみつ色のユン

©Mosaïque Films - Artémis Productions - Panda Média - Nadasdy Film - France 3 Cinéma – 2012

「はちみつ色のユン」

ユン/ローラン・ボアロー(ベルギー/フランス)
©Mosaïque Films - Artémis Productions - Panda Média - Nadasdy Film - France 3 Cinéma – 2012

ドキュメンタリー・アニメーション

作品概要

朝鮮戦争後の韓国では、多くの子どもが養子として祖国を後にした。その中の一人「ユン」は、ベルギーのある一家 に“家族”として迎えられた。肌の色が異なる両親と4人の兄妹とともに生活を送る中で、フランス語を覚え、韓国語や孤児院での生活を忘れることができた「ユン」。そんな時にもう一人、韓国からの養女がやってきて“家族”に加わった。彼女を見て、「ユン」は自分が何者なのかを意識し始める――。韓国系ベルギー人のユン監督が自身の半生を描いたマンガをもとに、ドキュメンタリー映画監督ローラン・ボアローと共同監督したアニメーション。現代のソウル、そして1970年当時のユン監督が写された8ミリフィルムや記録映像による実写と、手描きやCGによる3Dアニメーションといった多彩な手法でシーンを描き分け、アニメーション表現の可能性を切り拓く。肌の色が違っても、血のつながりがなくても、愛に満ちている“家族”のあり方を本作は物語っている。

アニメーション部門/優秀賞

有頂天家族

©見登美彦・幻冬舎/「有頂天家族」製作委員会

「有頂天家族」

吉原 正行(日本)
©Tomihiko Morimi, GENTOSHA / Uchoten-Kazoku committee

テレビアニメーション

作品概要

京都・下鴨神社、糺の森に暮らす狸の下鴨家。狸界の頭領だった父「総一郎」が狸鍋となってこの世を去った後、息子たち「下鴨四兄弟」が残された。偉大な父の「阿呆の血」を色濃く継いだ三男「矢三郎」は、生真面目だが土壇場に弱い長兄「矢一郎」、蛙の姿で井戸にこもる次兄「矢二郎」、臆病ですぐに尻尾を出す末弟「矢四郎」たちと、“面白きことは良きことなり”を信条に、タカラヅカに心酔する母を守りつつそれなりに楽しく暮らしている。落ちぶれた師匠の大天狗「赤玉先生」の世話を焼き、神通力で空をかける人間の美女「弁天」に振り回され、はたまた五山の送り火の夜空で宿敵・夷川家と空中合戦を繰り広げる日々の果てに、突如下鴨家を襲う絶体絶命の危機。父が鍋になった真相が明らかになる中、固い絆で結ばれた下鴨家の命運を描く。原作・森見登美彦×キャラクター原案・久米田康治×アニメーション制作・P.A.WORKSでつづる波乱万丈、家族愛あふれる物語。


ゴールデンタイム

©ROBOT

「ゴールデンタイム」

稲葉 卓也(日本)
©ROBOT

短編アニメーション

作品概要

舞台は、好景気に湧いた1980年代の日本。ある日、長年使われてきた60年代製の家具調テレビが廃品置き場に捨てられてしまう。テレビは捨てられたことを受け入れられず廃品置き場から脱出を試みるのだが……。テレビがたどった数奇な運命を人生に重ねて描く悲喜劇を通して、「生きることの肯定」というテーマを描く。脚本・演出・キャラクター造形に至るまでスタンダードな手法にこだわり、台詞を排除することで、アニメーションと、効果音、音楽の調和だけによる純粋な映像表現に挑戦。古典的な語り口とアナログなアニメーションによる新たなエンターテインメントを目指した作品である。


サカサマのパテマ

©Yasuhiro YOSHIURA / Sakasama Film Committee 2013

「サカサマのパテマ」

吉浦 康裕(日本)
©Yasuhiro YOSHIURA /Sakasama Film Committee 2013

劇場アニメーション

作品概要

「かつて、多くの罪びとが空に落ちた」と“空”を忌み嫌う世界・アイガに住む少年「エイジ」。彼が、夜明け直前の“空”を見上げていると、そこに突然、“サカサマの少女”が現れる。地底世界から降ってきた彼女の名前は「パテマ」。必死にフェンスにしがみつき、今にも“空”に落ちそうな彼女を助けようと「エイジ」はその手を握る。すると、二人は空へ飛び出してしまう。恐怖におののく「パテマ」と、想像を超える体験に驚愕する「エイジ」……。ちょうどその頃、“サカサマ人”が現れたという報告を受けたアイガの君主「イザムラ」は、治安警察のジャクに捜索を命じるのだった──。天地が逆さまの世界に住んでいた二人の出会いを出発点として、驚きに満ちあふれたストーリー展開のもとに“真逆の世界”の謎を解く “サカサマ・トリップ・スペクタクル”。


ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

©カラー

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」

庵野 秀明(日本)
©khara

劇場アニメーション

作品概要

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』および『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、全4部の長編アニメーション映画。その第1部『:序』(2007年)、第2部『:破』(09年)に続く第3部が本作『:Q』である。そして次の第4部『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で、シリーズ完結を予定している。この第3部では誰もが予想できなかった斬新な展開を提示しながら、未知なる領域へと突入。同時に「主人公・碇シンジの物語」として、すべての要素を収斂している。映像も過去のテレビシリーズや劇場版の画素材を使用せず、スコープサイズ(1:2.35)を採用した完全新作となり、この4部作が1990年代の『新世紀エヴァンゲリオン』の単なるリメイクとはまったく異なる地平を目指していることが明らかとなった。ついに真の姿を見せ始めた「新たな物語」が、完結編に向けて動き始める。

マンガ部門/大賞

ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険Part 8―

©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/SHUEISHA

「ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険Part 8―」

荒木 飛呂彦(日本)
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/SHUEISHA

作品概要

M県S市杜王町。震災で隆起してできた土地である通称「壁の目」で、一人の青年が発見された。記憶を失っていた彼は「東方定助」と名づけられ、さまざまな手がかりを元に自らの素性を探る。東方家の秘密と思惑、杜王町で起きた過去の事件、定助の素性をたどる重要な手がかりとなる「吉良吉影」なる人物……さまざまな謎に定助は巻き込まれる。緻密なストーリー構成、超能力を目に見える形で表現することでマンガ表現に革命をもたらした概念“スタンド”によるバトルに加え、サスペンスにも更なる磨きをかけ、多くの読者を惹きつけた。連載28年目を迎えた「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの第8部。

『ウルトラジャンプ』
連載開始:2011年6月号~連載中

マンガ部門/優秀賞

昭和元禄落語心中
「昭和元禄落語心中」

雲田 はるこ(日本)
©Haruko Kumota/Kodansha

作品概要

昭和を舞台に、噺家のいとおしき素顔を、絡み合う人間模様とともに鮮やかに描き出した作品。物語は、孤高の大名人「有楽亭八雲」と、そこへ押しかけ弟子入りした刑務所帰りのやんちゃ坊主「与太郎」、そして今は亡き「八雲」の盟友で“稀代の名人”と謳われた「助六」の忘れ形見であり、親を失ってからは八雲に育てられてきた「小夏」の、3人による奇妙でおかしな同居生活から幕を開ける。弟子など一切取らなかったはずの「八雲」が突然「与太郎」を受け入れた理由や、「小夏」が「八雲」に募らせる激しい憎悪の背景といった深まる謎、若かりし「八雲」と盟友「助六」が落語に没頭してゆくさまを描く回想シーンも見どころである。圧巻の人間描写と、首筋がじっとり汗ばんでくるかのような臨場感溢れる落語シーンも魅力のひとつとなっている。

『ITAN』
連載開始:2010年3月25日発売号~連載中


それでも町は廻っている

©石黒正数/少年画報社

「それでも町は廻っている」

石黒 正数(日本)
©Shonen-gahosha Co., Ltd.

作品概要

東京の下町・丸子商店街を舞台として、女子高生「嵐山歩鳥」を主人公に、一見平凡だが、一風変わった日常を描く。メイドカフェならぬメイド“喫茶”「シーサイド」のメイドさん、探偵志望の女子高生、商店街の看板娘、少し頼りない姉……と多くの顔を持つ「歩鳥」。「歩鳥」がメイド喫茶でのアルバイト中に難事件を解決するドタバタ活劇をはじめ、「歩鳥」の先輩かつ親友「紺センパイ」が語る不思議な話や、「歩鳥」の弟で小学生の「タケル」とその彼女「エビちゃん」のエピソードなどが読みきり連作形式でつづられる。商店街、学校、家族の仲間が織りなすコメディー仕立ての連載は100回を超え、コミックは11巻が刊行されている。SFチックな話から涙を誘う人情ものの浪花節まで、幅広い作風が楽しめる作品。

『月刊アワーズ』
連載開始:2005年5月号~連載中


ちいさこべえ

©望月ミネタロウ・山本周五郎/小学館

「ちいさこべえ」

望月 ミネタロウ/原作:山本 周五郎(日本)
©Minetaro Mochizuki /Shugoro Yamamoto 2013

作品概要

『ドラゴンヘッド』『東京怪童』などで高い評価を受け、作品ごとに新たな挑戦を続けてきた望月ミネタロウが、原作付きに挑んだ意欲作。山本周五郎の時代小説『ちいさこべ』を、舞台を現代に移し新解釈を加えて描く。火事で実家の工務店「大留」が焼け、両親を亡くした若棟梁「茂次」。「どんなに時代が変わっても人に大切なものは、人情と意地だぜ」という父「留造」の言葉を胸に、「茂次」は大留の再建を誓う。そこに、身寄りのないお手伝いの「りつ」、そして行き場を失った福祉施設の子どもたちが転がり込んでくる──。髭もじゃの若棟梁が家業を継ぐことから始まるヒューマンドラマ。

『小学館ビッグコミックスピリッツ』
連載開始:2012年40号~連載中


ひきだしにテラリウム

©九井諒子/イースト・プレス

「ひきだしにテラリウム」

九井 諒子(日本)
©Eastpress

作品概要

ウェブ文芸誌での連載を経て、著者の3冊目の単行本となった本作は、最短で2ページ、最長でも11ページという、コンパクトなページ数で完結する作品を集めたショートショート・コミック。年に一度の“龍猟”を習わしとしている里山で龍料理を食す『龍の逆鱗』、長い冬が続く村の一人の青年が春を探して森を歩く『湖底の春』、「まる」「さんかく」「しかく」を料理して食べる過程を描く『記号を食べる』、人間誰もが物語の主人公として生まれ暮らす世界の『ショートショートの主人公』、架空国家についての中学生たちの話し合いが展開していく『遠き理想郷』、とある生物の進化の過程を描いた『生き残るため』など、全33篇を収録。コメディ、昔話、寓話、ファンタジー、SFなどさまざまな発想を、少女マンガ風や劇画調のタッチも織り交ぜての多彩な絵柄で描きあげる、千変万化の掌編集。

『WEB文芸誌マトグロッソ』
連載開始:2011年8月~連載終了:2012年12月

アート部門/新人賞

作品名 作者名
Learn to be a Machine ︱ DistantObject #1 LAU Hochi(香港)
Maquila Region 4 Amor MUNOZ(メキシコ)
The SKOR Codex La Societe Anonyme(フランス)

エンターテインメント部門/新人賞

作品名 作者名
ゼゼヒヒ 津田 大介(日本)
やけのはら「RELAXIN’」 最後の手段(有坂 亜由夢/おいた まい/コハタ レン)(日本)
TorqueL prototype 2013.03 @ E3 なんも(柳原 隆幸)(日本)

アニメーション部門/新人賞

作品名 作者名
ようこそぼくです選 姫田 真武(日本)
Airy Me 久野 遥子(日本)
WHILE THE CROW WEEPS―カラスの涙― 鋤柄 真希子/松村 康平(日本)

マンガ部門/新人賞

作品名 作者名
アリスと蔵六 今井 哲也(日本)
塩素の味 バスティアン・ヴィヴェス/訳:原 正人(フランス/日本)
夏休みの町 町田 洋(日本)

功労賞

阿部 修也 エンジニア/アーティスト
柏原 満 音響効果
中村 公彦 コミティア実行委員会代表
松本 俊夫 映画監督/映像作家/映画理論家