受賞者インタビュー
2026/09/30 16:30

ガラスの会議室に広がる、移ろう空模様:CSデザイン賞受賞者インタビュー [PR]

ガラスの会議室に広がる、移ろう空模様:CSデザイン賞受賞者インタビュー

切って、貼り、はがすというシンプルな工程で、空間に多彩な表情を与える装飾用シート「カッティングシート®︎」。その創造的な活用事例を発信・共有する「CSデザイン賞」の第24回一般部門で、三菱総研DCS株式会社の本社オフィス来客エリア「Grow to SKY」がグランプリを受賞しました。

オフィス移転に伴う内装設計を手がけたのは株式会社イトーキです。「Grow UP!」を全体コンセプトに、6階の「GROUND」、7階の「MOUNTAIN」、8階の「SKY」へと、個人とチーム、企業がともに成長していく物語を空間に展開。最上階の来客・会議エリアでは、時間とともに移ろう空の情景を、ガラス面のグラフィックで表現しています。

クライアントである三菱総研DCS株式会社の平野慎一さん、株式会社イトーキの西田幸さん、富樫弓恵さんに、オフィスづくりの背景から3つの「空」が生まれるまでの過程、カッティングシートの可能性などをお聞きしました。

オフィス移転を、さらなる成長のきっかけに

――本社移転にあたり、イトーキが内装設計を担当することになった経緯を教えてください。

平野慎一さん(以下、平野):オフィス全体の設計についてコンペを実施したのが始まりです。そのなかでイトーキさんからご提案いただいたのが、「Grow UP!」というコンセプトでした。移転を機に、会社をさらに成長させていくという考えが一つの決め手になりましたね。

平野慎一

平野慎一 三菱総研DCS株式会社 総務部 副部長

――「Grow UP!」には、どのような考えが込められていたのでしょうか?

西田幸さん(以下、西田):三菱総研DCSさんは、目まぐるしく変化する事業環境に対応し続けなければならないIT企業です。その変化に応えていくには、一人ひとりが成長し、その力がチームとしてまとまり、企業の成長につながっていくことが大切なのではないかと考えました。そこで、個人とチーム、企業がともに成長するオフィスをつくりませんか、と提案させていただきました。

また、IT企業だからこそ、オフィスには自然素材や自然の要素を取り入れ、人が気持ちよく働ける場所にしたいという思いもありました。

西田幸

西田幸 株式会社イトーキ ワークスタイルデザイン統括部 第2デザインセンター3ルーム 室長

グラデーションの初期デザイン案

――その中で今回受賞したのが、8階の「Grow to SKY」だったのですね。ここはどんなスペースですか?

平野:おもに来客用会議スペースで、外部の方々と打ち合わせなどを行っています。すべてガラス張りで、エントランス・中央・奥と3つのスペースでデザインが変わります。エントランスと中央は来客用、奥は役員が使用するエリアになっています。

ひとつを選ぶはずが、3つの「空」をすべて採用

――そもそも、8階の「SKY」というコンセプトをどのようにグラフィックへ展開していったのでしょうか?

富樫弓恵さん(以下、富樫):私が参加した時点で、オフィス全体のコンセプトと、8階を「SKY」にすることは決まっていました。そこから、空をテーマにした3案と、空とは関係のないシンプルな1案を提案しました。私自身は、エントランス側と会議室側でそれぞれ1案ずつ採用され、最終的に2案へ絞り込まれるのではないかと予想していました。しかし結果として、空をテーマにした3案すべてをご採用いただくことになりました。

別案として出したつもりでしたが、どれも「SKY」をもとに考えていたため、違う表現でも全体的にまとまりをつくることができました。

富樫弓恵

富樫弓恵 株式会社イトーキ ワークスタイルデザイン統括部 ワークスタイルデザインラボ ブランドデザインチーム グラフィックデザイナー

平野:どれか一つには決めきれず、「この場所にはこれ、こちらにはこれ」と、少し欲張ってしまいました(笑)。社内でもさまざまな意見があり、色合いや濃さについても何度もつくり直していただきましたね。

――3つのエリアでは、それぞれどのような空を表現していますか?

西田:空の模様を、時間を追って表現できたらおもしろいと考えていました。エントランス側は、天井にも色を入れているため、霧や揺らぎを感じる濃い色に。中央には朝焼けを思わせる色合いを取り入れるなど、時間の移り変わりを感じられる構成です。

エントランス側の会議室

富樫:エントランス側の揺らぎや霧は、水彩で表現しています。中央のエリアは、時間の経過とともに変わる空の色をイメージしたグラデーションに。一番奥の役員が使用するエリアは、雲を線で描き、白インクで印刷しました。

役員エリアは画面や人の顔が見えすぎないことも求められたため、ほかの2つよりも輪郭のはっきりした表現にし、線の太さや間隔、高さを調整しています。ここは白インクのみのデザインのため、白インクに適したほかとは異なるガラスフィルムを使用しています。

――水彩のグラフィックは、富樫さんが実際に描いたものだそうですね。

富樫:はい。アプリを使って何枚も描き、色相を少しずつ変えながら、インクがたまった濃い部分、薄くぼけた部分、伸びていく部分などを意識してつくりました。大きなガラス面に水彩表現を施す試みは、これまであまり見られませんでした。しかし、この場所だからこそ生まれる独特の揺らぎを表現できるのではないかと考えたんです。

富樫さんが制作した、現案の元になった水彩表現の一部

――中央のグラデーションにはどんな工夫があるのでしょうか?

富樫:自然がモチーフなので、均一にならず、機械的に見えないことを大切にしています。全体を波のようにうねらせながら、その中でも色の幅や高さを少しずつ変えています。ガラス面を一周するグラフィックは、隣り合う会議室同士が連続してつながるようにもしました。

グラデーションは最初Illustratorで制作していましたが、自然につなげるには限界があると感じ、最終的には画像データでつくりました。印刷サンプルを何度も出し、つながりを細かく調整しています。

デザイン画だけではわからない、見え方を探る

――制作のなかで、特に難しかったことを教えてください。

富樫:透明なガラスフィルムにグラフィックを印刷した時、実際にどのように見えるのか判断するのが難しかったですね。紙に印刷したサンプルだけでは色の濃さや透け方がわかりません。今回は見え方を調整するために印刷方法も2種類試しました。中央部分では、透明でありながら向こう側がぼけて見えるよう、ぼかしを入れる位置や高さまで、みなさんと相談しながら細かく検討しました。

平野:資料を見て「これでいこう!」と決めても、いざガラスフィルムのサンプルをガラスに貼ってみると「何か違うね」となるんです。イトーキのショールームや旧オフィスのガラス間仕切りを使い、幅を細くしたサンプルを使って高さを何度も確認しました。水彩と雲の案は比較的早く決まりましたが、中央のグラデーションは最後まで悩みましたね。

――中央エリアのデザインで、特にこだわった点はどんなところでしょうか。

富樫:グラデーションの位置は何度も調整を重ねた部分です。当初はガラスの中央からグラデーションが広がる案で、ぼかしの位置も現在より少し高めでした。実際にサンプルを貼ってみると、中心の一番濃い部分が私たちの頭より上あたりにあり、目線があまり隠れないことがわかりました。それから少しずつ位置を調整し、最終的に現在のようなグラデーションに決定しました。

――会議室では開放感とプライバシーの両方が求められますが、そのバランスはどのように考えましたか?

西田:最近のオフィスでは、透明なガラスの会議室を設けることが多くあります。会議には集中したいけれど、外からは使っているかどうかわかるようにしたい。そうした時にガラスフィルムを使うことは多く、今回も見える部分と見えない部分の間をどのようにデザインするかがポイントでした。

富樫:大きい面にグラフィックを入れると、空間に与える影響も大きくなります。三菱総研DCSさんが思い切って受け入れてくださったからこそ、これだけ広い面を生かした色や揺らぎをつくれたのだと思います。

機能と表現を両立した空間が、グランプリに

――完成したオフィスには、どのような反響が寄せられていますか?

平野:8階はもともと来客用としてつくったエリアで、お客さまからは好評です。今年の新入社員を含め、若い社員からの評判も良いと聞いています。オフィス全体として、採用にも良い影響があったのではないでしょうか。他事業所の社員からは、「本社と同じようにしてほしい」という要望も届いています。

――今回CSデザイン賞へ応募したきっかけを教えてください。

西田:CSデザイン賞はもちろん知っていましたが、応募は今回が初めてです。当初は、中川ケミカルさんの製品を使った作品が対象なのかなと思っていました。しかし、中川ケミカルさんの製品でなくても応募できることを知り、機能面・デザイン面ともに優れた空間に仕上がったのでぜひ応募してみたいと思いました。

富樫:私も西田と同様、募集要項をあらためて読むと、装飾用シート全般が対象だとわかった時は驚きました。これほど広い範囲にシートのグラフィックを統一して展開した事例は、私たちの仕事でもなかなかありません。応募できるなら、この機会に出してみたいと思いました。

――グランプリ受賞を知った時は、どのように感じましたか?

西田:中川ケミカルの担当者の方から「応募ありがとうございます。少しお伺いしたいことがあります」と連絡をいただいたので、応募者全員にフィードバックをしているのだと思ったんです。だから、グランプリだと言われた時にすぐには理解できず、「グランプリは何作品選ばれるんですか?」と聞き返してしまいました(笑)。

実感してからは驚きと喜びで、早くチームのみんなに伝えたかったです。応募にあたり、作品の魅力を写真で表現してくださったフォトグラファーさんにも、本当に感謝しています。

富樫:中川ケミカルさんの製品を使用した作品ではなかったのに、グランプリに選んでいただけたことにも驚きました。本当に公平に審査していただいたのだと感じ、とても嬉しかったです。

平野:私も受賞を知らせるメールを見て、最初は賞の位置づけがよくわからなかったんです。過去の受賞作などを調べて、「これは一番を取ったということなのか!」と驚きました。もし勘違いだったら困るので、まずは上長と広報にだけ報告しました(笑)。

――今回のプロジェクトを通して、改めてカッティングシートや装飾用シートのどのような可能性を感じましたか?

西田:色の種類が豊富ですし、透明感のあるフィルムは重ねることで色の見え方も変わります。最近は偏光フィルムのように、見る角度によって表情が変わるものも登場しています。外の光や室内の照明、影とフィルムを組み合わせることで、いろいろな可能性が出てくるのではないでしょうか。どこで、どう活用しようかと考えるとワクワクします。

富樫:普段はサインをデザインすることも多く、カッティングシートはとても身近な素材です。色が豊富で鮮明に出せることに加え、必要に応じてはがせることも魅力です。私たちにとっては、使うこと自体が特別というより、自然に選択肢へ入ってくる素材。だからこそ、それをどうおもしろく使うか考えることが、デザイナーとして楽しいところだと思います。

■CSデザイン賞 公式サイト
https://www.cs-designaward.jp

■第24回CSデザイン賞関連企画「廣村正彰+色部義昭 トークイベント」
登壇者:廣村正彰、色部義昭
日時:2026年10月17日(土)14:30〜16:00
場所:中川ケミカル本社5F(〒103-0004 東京都中央区東日本橋2-1-6 岩田屋ビル)
入場料:無料/予約制(申し込み多数の場合は抽選)
https://www.cs-designaward.jp/news/specialtalk_20261017.html

文:高野瞳 撮影:高木亜麗 取材・編集:石田織座(JDN)

初出:デザイン情報サイト「JDN」
https://www.japandesign.ne.jp/interview/cs-designaward-24th-general/

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