結果発表
2021/10/08 10:00

第16回 富士山百景写真コンテスト

応募作品数:1126点
受賞作品数:63点
主催:静岡県富士市
共催:一般社団法人 冨士山観光交流ビューロー
※ここでは、上位8点をご紹介します

グランプリ

未明、雲流るる
影山 浩
未明、雲流るる
審査コメント
富士山が写っていなければ、まるでヨーロッパの風景かと見紛うほどの広大なスケール感です。凍てついた大地は冬の厳しさを物語っているようにも見え、それが今の世情の厳しさと被って見えます。このような寒々しい風景の中にあって、暖かみのある小さな灯から人の暮らしのぬくもりを感じます。雲から頭一つ抜け出した富士山が明け始めた空に浮かび上がり、その神性がやがてくる希望のようにも見えます。コロナ禍の今だからこそ、グランプリにふさわしい作品だと感じました。

金賞

映える枝垂れ桜
市川 宏
映える枝垂れ桜
審査コメント
富士山を枝垂桜で包み込むような構図と、春の光を感じるトーン描写。どれをとっても秀麗で文句なしです。カラーでも見応えのある風景写真になったと思いますが、あえて色を取り除いたことで造形的な美しさが際立っています。空のグラデーションも見事に描かれ、さらに笠雲の存在もいいアクセントとなって、とても効果的です。ただ奇をてらってモノクロにしたのではなく、すべて計算された上での表現だということがよくわかります。
夕暮れに未知との遭遇
加藤利忠
夕暮れに未知との遭遇
審査コメント
電柱やパラボラアンテナなど、生活の片鱗があることは見えるものの、人の気配が感じられないことが不気味です。溶岩のトーンを立ち上げたことで風化具合がよくわかり、近未来的建造物との不思議なアンバランス感が出ています。これによって塀の向こう側まで溶岩に埋め尽くされ、人類が死に絶えたのではないかという恐ろしい想像が働きました。実際には絶対に起こってほしくありませんが、今はそんなことも考えてしまうご時世ですね。

銀賞

荒天の予兆
山下政明
荒天の予兆
審査コメント
富士山上空には様々な雲が出現しますが、まるでぽっかりとワームホールが開いたように見え、雲の造形美だけでも面白いですね。さらに背後の青空とのアンバランスさも、急な天候の変化を暗示させていて効果的です。コントラストを切り詰めつつも、富士山の雪の描写や雲のトーンなどもしっかり出ていて、印象的な作品に仕上がっています。
いまだ現役(富士川鉄橋)
平野岩夫
いまだ現役(富士川鉄橋)
審査コメント
ベストな位置に犬と散歩する人物が写っていることで、普遍的な富士市の日常が伝わってきます。幾度の災害を乗り越え、日常を取り戻してきた威風堂々たる富士川橋梁も、負けるな人類とエールを送ってくれているように感じられます。さらにトラス構造の隙間にしっかりと電車の顔を収めた手腕は、鉄道写真としても完成度の高い作品であることがうかがえます。

銅賞

1/6400秒の世界
佐野 直
1/6400秒の世界
審査コメント
もはや新幹線と富士山のコラボレーションは定番です。それを大胆な視点で切り取った独特な表現に引き込まれました。プリントもここまで黒くすると作為が目立ち始めるのですが、コックピットのキャッチライトや流線型の美しいラインが浮かび上がり、新幹線の存在感が増しています。
富士に舞う
井谷勝利
富士に舞う
審査コメント
雄大な富士山の裾野を舞うサギの優美な姿をとらえていますが、どことなく寂しげな印象に惹かれました。灰色の空というところからも、その感が一層強まっています。サギに人の心と同じ動きがあるとは思いませんが、寒々しい風景の中にたった一羽で舞うサギの心情を表しているようです。
秋の収穫
小川勝己
秋の収穫
審査コメント
茄子があるかなと探しましたが、よく見るとコンバインを操るお父さんの作業着が茄子紺です。これで一富士・二鷹・三茄子がそろいました。正直なところ、いささか牽強付会だとは思いますが、このご時世に吉兆をもたらし、早く日常を取り戻したいとの願いが込められているようにも感じました。
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