〜最終審査後半
ここからは、審査員の言葉を中心に審査の流れを追っていきます。審査員が作品に対して意見を述べていきます。
最終選考に残った作品は、以下の4点です。
LANVIN BOUTIQUE GINZA
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ビーンズダイニング“ソヤ”
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コインランドリー
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Natural Laundry Boutique
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【 橋爪 】
最近の傾向で古い建物をリニューアルしながら増築するものが増えていますね。
午前中は 「これぞ大賞」 という作品がないように思えましたが、疲れたせいもありますが、大賞らしい作品が残ってきたかな。
【 飯島 】
美容室の作品 『Taiwan Foundation for Democracy』 は、こういう大きい空間にブースを設置することだけに専念していて、そのブースの造形もすこぶる巧みです。美容室の必要な部分、鏡のあてこみ方も工夫していますね。
台湾の作品のようなデザインは日本では見かけません。見かけたとすると、何年か前にJCDデザイン賞を取られた建築家の作品くらいでしょうか。
『LANVIN』 は・・・あまり言えませんが、私はこれにそっくりな仕事を以前完成させていて、「空間の浸透」というコンセプトも、びっくりするほど似ています。外側と内側が反転して穴をあけることで空間を浸透させる。ちょっとした見かけの違いというものを、自分で再現したいところがありました。
【 原 】
興味深く、どの作品を選ぶか迷っているのですが、「これぞ大賞」 という強い衝撃が得られませんでした。
ものの見方や感じ方は無数にあって、ごく身近なものを一から考えてみると、世界は違ってみえる。それらを日常のものやコミュニケーションに意図的に振り分けていくことがデザインです。正直なところ、そういった仕事を私は賞にしたいと思っています。『コインランドリー』 は、僕がとりました。自分としては好ましいかなと。
【 青木 】
『LANVIN』 の穴はアイディアがおもしろいのではなくて、こんなことができたらいいな、と思うのですが、これを外壁でやることが難しいんです。この作品ではすごい賢い方法を使っていて、マイナス何十度にも凍らせたアクリルを鉄板に開けた穴に埋め込み、それを常温に戻し完全な密封にするという大変な手間をかけているんです。
鉄板とアクリル、2つの素材の組み合わせは難しく、シールもせずに外壁でこういうものを作ったというのは、立派な作業だと思います。その努力と新しい方法で作ったと言う意味では、大賞だと思います。
しかし、デザインそのものは、もっと洗練されていてもいいんじゃないかな。穴の間隔やエッジが気になります・・・。
台湾の作品 『Natural Laundry Boutique』 は、社会的状況とかがあるのですがこういう作品を見ると 「うーん、これは日本ではないな、日本でどうしてこれができなかったのだろうか」 と思います。そういうことを考える意味でよいと思います。
【 橋爪 】
新しいものを指し示すような作品を選んできています。流行の中に、ここに至るまでのデザイン・可能性を秘めている気がします。
『コインランドリー』 はデザインの力というもの、デザインを施す場所という点で、的確なことをしていて非常にいい作品。デザインだけ取り出すと・・・
(パネルの) 写真を見ていると扱い方が微妙な感じですね。
本音は、台湾の作品 『Natural Laundry Boutique』 が力強いと思います。
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『LANVIN』 は、造形上、ある種の魅力を持っている、インテリアデザインは日常的な動きと密接なところが魅力のひとつですから、この方法を読むかというところが賞のつけ方なのでは・・・・といった意見も聞かれました。
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【 飯島 】
昨年と状況が似ています。昨年2点で争ったコウチ・マーケットと名古屋のバーも、今年のように日本のデザインと海外のデザインの違い、どうつながるかという視点で理論したかったです。
【 近藤 】
『コインランドリー』 は昨年のコウチ・マーケットと似ていて、アイデア一発という感じ。最後はファサードに頼り切っているかなと。
台湾の作品はいい仕事です。日本のデザインは苦戦を強いられていますね。ある種模索している? そのなかで 『コインランドリー』 が頑張っていると思います。
【 杉本 】
日本はあまり考えていません (会場笑い)。日本は気迫が弱いですが、技術や豪華さは強い。能が持っている動きや服は魅力的だと思います。たとえば無印良品は形は能的で、素材は強い。
● 大賞は、該当作品なしの結果に
【 青木 】
『ソヤ』 についての意見
ファサードが気にいらないな・・斜めからの写真を見ると、美しくない。大賞となると、違う気がする。リノべーションというのは、隠す事ではありません。そこまでやるなら、もっときれいに隠して欲しいですね。コインランドリーは見えるものは見えている。『ソヤ』 は大賞じゃない。『LANVIN』 は、アクリルをはめる方法は評価していますが・・・。納得がいかないな〜。大賞に該当する作品がないかも。
議論を進めるうちに、大賞に該当する作品がない、と言う声が審査員からちらちら出始めました。長時間の議論の末、今年度の大賞はなしということに決まり、審査評を二分していた 『LANVIN』 と 『ソヤ』 が準大賞に決定しました。また、原 研哉賞には、原 研哉氏の強い推薦があり 『コインランドリー』 に決定しました。
飯島氏が審査会終了の言葉を述べると会場から拍手が沸き、JCDデザイン賞公開審査会は終了しました。