特集
2026/05/28 12:00

作品の背景や思いの丈を、自信をもって見せてほしい―グッドデザイン・ニューホープ賞審査委員長対談2 / 2 [PR]

作品の背景や思いの丈を、自信をもって見せてほしい―グッドデザイン・ニューホープ賞審査委員長対談

アイデアに至った過程や背景まで見せてほしい

――ニューホープ賞をきっかけに、応募者が何か次のアクションにつなげていけるといいですよね。

原田:そうですよね。それで言うと、応募作品を幅広く公平に評価するために、審査側がなるべく並列な状態でいたほうがいいなと思っていて。一般的な審査委員長と審査副委員長がいる構造ではなくて、今回は僕と川上さんが並びで審査委員長を担う形にしたんです。さらに、他の審査委員も私たちに近い、対等な立場で審査してもらおうと思っています。そのほうが特定の視点に偏らず、応募者にとって審査のあり方がフラットになるし、私たちも作品について話しやすくなるのかなと思っています。

川上:私たち以外にも、それぞれ第一線で積極的、自発的に活動を展開している方々が審査委員を引き受けてくださいました。デザインを学んでいるみなさんにも、このメンバーに提案を見てもらえる貴重な機会として活用してほしいなと思います。

審査委員がテーブルを囲み議論する様子

グッドデザイン・ニューホープ賞の審査の様子

――審査をするうえで、重視する点はありますか?

原田:一つのものを作る過程には、いろんな背景や営みがあるじゃないですか。そうした、作品を取り巻く周辺の物語みたいなものも含めて提案してくれると、今回の審査委員には響きやすく、審査が盛り上がりそうだなと思っています。応募作品のタイトルやコンセプトはPDFファイル1点にまとめて提出してもらいますが、その他に補足資料を送ることができるので、そうしたところに背景やプロトタイピングしてきたプロセスが見えたらいいですね。

川上:自分が興味を持っていたり、伝えたいと思っているその思いの丈を、自信を持って出してほしいなと思いますね。例えば、学生時代に一度発表したものをベースにバージョンアップしたものを提出してくださる方もいると思います。その場合は、最初に発表したものに対してどうアプローチしてどう変化させたのか、そうした背景までもし書けるならば教えてくれるとうれしいですね。そうすることで継続性が見えてくることも大切だと思っています。

紙粘土のような質感のおもちゃ「MYMORI」イメージ

2023年度グッドデザイン・ニューホープ賞の最優秀賞「代替を超えるバイオ素材ー生えるおもちゃMYMORI」。作者の項雅文さんは同作を卒業制作展に出展した後、「ブラッシュアップの余地がある」と考え、モノづくりのプロセスが伝わるようプレゼンを工夫し、同賞に応募している

原田:完成したプロダクトやプロジェクトだけに現れない魅力があると伝えたいですね。ものすごくスタイルの確立したデザインであっても、そこに至るまでの背景に決定的なものが必ずあると思う。「これは伝えなくていいや」と思っているものにこそ、実は審査委員たちが見たいと思う芯を喰った情報があるかもしれないので、自信を持って出してほしいです。

応援隊の一人として、次の可能性を共に見出したい

――改めて、お二人の審査への意気込みや、応募者に期待することを教えてください。

川上:新しい世代のみなさんが何を見て何に向かっているのか、そこをしっかり汲み取り、世の中に伝える後押しができればいいなと思っています。グッドデザイン賞もそうですが、このアワードの特色は「よりよい取り組みを私たちは応援したい」というところにあると思っていて。

みなさんの取り組みに対して、これは本当に素晴らしいなと思った場合に「応援隊の一人になりたい」という気持ちがあるんです。応募者の視点や思い、作っているものを受け止めて、私たち審査委員が専門的な立ち位置から球を打ち返す。そうしたコミュニケーションの中から、まだ見えていないものに私たち自身も出会えるのではないかという期待もしていますし、一緒に次の可能性を見つけていけるとうれしいですね。

原田:ニューホープ賞における「優れたデザイン」は、グッドデザイン賞と共通の理念(人間・本質・創造・魅力・倫理)が指標になっています。ただ「倫理」だけは、社会背景によって目まぐるしくアップデートしていくものだから、僕ら審査委員の世代が知らない倫理観を彼ら彼女らが携えている可能性があると思っていて。その中で生み出されたデザインを見てみたい。

原田:例えば、10年後の世界はどうなっているかを想像して、その時代の倫理観を設定してデザインすることもできるでしょう。審査委員側の経験だけで「この倫理観はありえない」といった線の引き方は絶対にしないと思うし、なぜそう考えるに至ったのかという応募者の背景も含めて審査する場だと思うので、そこは自信を持って応募してくれたらうれしいです。

アワードの場を自分なりに活用してほしい

――最後に、応募者へのメッセージやアドバイスがあれば伺いたいです。

原田:アワードに応募するのは、考えを深めるきっかけづくりの一つだと思うんです。応募することで考えをまとめ、自分が作ったものに言葉を付与するじゃないですか。その整理する時間が一番貴重な気がするんですよね。受賞できなかったとしても、何がうまくいかなかったのかを分析して、伝えるポイントをもう一度考え直すきっかけになる。その時間を持つためにも、応募することは大事なことなんじゃないかなと思っています。

川上:私も同じことを考えていて、自分の考えを見直したり、客観性を持って作品制作に取り組んだりするのは、自分と深く向き合う時間じゃないですか。その体験はすごく貴重ですし、みなさんの活動においてもとても重要な力になっていくと思っています。だから、チャンスだと思って、アワードをいい意味で活用してもらいたいですね。

あとはやはり、応募した後や受賞した後に、普段は簡単には得られない交流の機会があることを強調したいですね。横のつながりができたり、専門的な知識を持った人と会えたりするというのは、私もその世代だったらチャレンジしたいと思うくらいの環境です。アワードは参加するもしないも本人次第ですからね。関わらなければそれで過ぎていくけれど、関わることで得られた時間のすべてが学びになると思います。

JDNに掲載のレポート記事「”あそびをデザインする現場”に学ぶ―グッドデザイン・ニューホープ賞 受賞後プログラムレポート」のスクリーンショット

受賞者向けのプログラムには、デザイナーが活躍する現場に足を運んで話を聞くことができる「デザインの現場見学会」も。同プログラムのレポート記事はこちら

原田:自分の作品が4つのカテゴリーのどこに当てはまるかわからなくて悩む方もいるようですが、悩んで時間が経ってしまうくらいなら、「どこでもいいから出して!」と言いたいです。

川上:グッドデザイン賞の場合は応募後の審査委員同士のやりとりの中で、「この作品はこのカテゴリーの方がよりふさわしい」とカテゴリー間での移動を検討することがありますが、ニューホープ賞はそうしたことはないんでしたっけ?

原田:ニューホープ賞は、基本的に応募してくれたカテゴリーを尊重していますね。ただ審査の場はとてもフラットで全審査委員が同じ会場で話し合いをしているので、「これは場のデザインっぽいな」と思ったらその審査委員を呼んできて、話し合うこともあると思います。ニューホープ賞でもそこはフレキシブルにいきたいなと。

川上:2025年度の最優秀賞「天体音測会」も、「情報のデザイン」としての意欲的な試みも含みながら、「仕組みのデザイン」としての幅広い展開を期待させてくれる、領域横断的でチャレンジ精神に満ちた提案でしたね。さまざまな要素を内包している作品もあると思うので、自分がこれだと思ったものを信じてくれていいですし、悩むならばまずは参加してくださいとお伝えしたいですね。みなさんの応募を楽しみにお待ちしています。

文:原航平 撮影:加藤麻希 取材・編集:萩原あとり(JDN)

■「グッドデザイン・ニューホープ賞」公式サイト
https://newhope.g-mark.org/

応募期間:2026年3月25日(水)~8月17日(月)まで
募集内容:応募者が在学中に独自に創作した作品で、2026年10月30日の受賞発表日に公表できるもの。各種権利の侵害がなく、関係教育機関や企業などとの間で応募に関して支障がないことを確認できたもの

初出:デザイン情報サイト「JDN」
https://www.japandesign.ne.jp/interview/newhope-talk-2026-1/

関連記事