結果発表
2016/09/01 10:00

第11回 ダイワハウスコンペティション 設計アイデアコンペ

応募作品数:192点
主催者:大和ハウス工業株式会社
※ここでは入選作品のうち、準グランプリまでご紹介いたします

最優秀賞

大地の息づかい ─ さあ、ニュータウンへ帰ろう ─
酒谷粋将、藤原真名美
大地の息づかい ─ さあ、ニュータウンへ帰ろう ─
作品詳細(プレゼンテーションより抜粋)
高度経済成長期に都市郊外の各地で大地が切り開かれ、もとは森や林だった場所が大量の住宅で埋め尽くされた。同時に地面は住居とアスファルトによって蓋をされ、人と大地の交わりも断たれてしまった。また敷地境界で自然の流れと人の繋がりを断ち切る敷地主義の郊外住宅地は、現代の多様なライフスタイルに対応する冗長性をもち合わせていない。その住宅ストックは受容に見合わず過剰になっている。居住者の高齢化も進み、空き家も現れ始めた窒息寸前の郊外住宅地を、人びとの住まい方から大きく転換する必要がある。そこで、過剰に余った住宅を解体する。居住に必要な最小限の機能を残し、地面に接する一階部分は壁を取り除くことで、外部空間として大地に解放する。また、居住人口に合わせて必要のない住宅は撤去する。その後、居住者には区切られた敷地ではなく、床面積を基準とした居住スペースが確保される。大地の上を人びとが行き交う、そんな生きた大地の風景をつくるのが私たちの提案である。
講評
リアリスティックな現代の住宅地からこのような風景をつくっていくのは共感できる。絵のテイストが建築的ではなく、情感に訴えるものがあり物語性がよい。(小嶋一浩)

先日行ってきたカンボジアの風景にとても似ているが、この提案はシュールでシニカルな側面をもっているところが違う。時間を逆戻しして緑溢れる牧歌的な風景をつくっているように見えるが、建て売り住宅の2階をそのまま使うなど、郊外住宅のあり方の行く末を先送りしているようにも見えるのが面白い。(堀部安嗣)

共感を覚える。これからの建築的思考へ対して示唆的な案。具体的な形というよりは時間の経過を意識しながら徐々に変わっていく仕組みが面白い。土との関係において非常に生き生きとした空間ができるシステムを提案していて新鮮である。(平田晃久)

ジオラマのような模型と絵本のようなプレゼンテーションボードが印象的。過去から未来までの時系列を含めた考え方が評価できる。現実的な可能性をもった提案。(西村達志)

優秀賞

chimney Condo
原 正彦(東洋大学 ライフデザイン学部 人間環境デザイン学科 技術員)
chimney Condo
作品詳細(プレゼンテーションより抜粋)
技術の発達によって、ゴミ処理場が不要となる時代が来るであろう。その際、不必要になった煙突をコンバージョンし、再度命を吹き込み、煙突の形状を利用した住まいを提案する。その煙突を見上げる人にとっては、環境を意識させるランドマークとして輝き、またその煙突は、呼吸をするように周囲に動きをもたらす。それは風の力を利用して発電し、都市に電力を供給する。さらに、快適な周辺環境をつくるために風力を生み出す壁をもち、クリーンな風の力を借りて建物内外の環境を整えることで、CO2削減の手助けもする。生物が呼吸をするように、都市と人に快適な環境と街へのエネルギー供給システムをもった煙突型集合住宅の提案。
講評
アイデアコンペらしい思い切りのある提案。プレゼンテーションのパフォーマンスがよかった。(小嶋)

大胆な提案だと思うが、この家で本当に人間が「呼吸できる」のか疑問に感じた。(堀部)

「煙突」という最大の他者を取り込みながら、新しい建築をつくろうとしている。非常にポジティブな提案。ただ空間としては新しさを感じなかった。(平田)

サイロをコンバージョンするものもあるからそこまで荒唐無稽とは思わない。インパクトが非常に強く面白い。(西村)

優秀賞

浮かぶイエ、繋がるマチ
中川寛之(神戸大学大学院)
浮かぶイエ、繋がるマチ
作品詳細(プレゼンテーションより抜粋)
現代の人の生活や建物は内に閉じており、他の場所との関係性が稀薄である。また、一般的な住宅平均寿命は約30年と短く、長く残る住宅は少数であり、変化、もしくは変化していないことを認知するのは難しいように感じる。つまり現代は、建築の時が止まっている、呼吸していない状態といえるのではないか。そこで、生活雑貨から建築、街区までの「生活の更新速度の在り方」に変化を与えることで、変化を許容し現代の価値観を受け入れる場所を提案する。大地から建築を浮かし高さ方向の変化によって周辺環境との距離感を調節し、また、壁面を建具化することで、住宅を住人の手で扱える能動的なものとする。そこで、それぞれの更新速度の範囲をかみ合わせることで1対1ではない多元的な関係性をつくり出す。
講評
弱々しい提案ではなく、力強い提案で好感をもてた。ただ、最後が図式的すぎるのではないか。図式を超えた空間を見たかった。(小嶋)

6つのインフラを納めたコアに支えられて、家が浮かび上がっているのは面白い。(堀部)

空間として面白い要素を孕んでいる。斜めの視線の抜けや外部の使い方、内部と外部の関係などをもっと立体的につくれたら、より面白くなると思う。(平田)

非常につくり込まれている案。転写すること以外にもつくり方の提案があるとよかった。土地を開放するという意味では可能性がある。(西村)
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