デビュー作が優秀賞を受賞! 高橋良輔監督のSSFF & ASIA 2026「Cinematic Tokyo」部門への挑戦 [PR]

アジア発の新しい映像文化の発信・新進若手映像作家の育成を目的とする「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(以下 、SSFF & ASIA)」。米国アカデミー賞公認の映画祭として、2026年に28回目を迎えた。
世界114の国と地域から4,921作品が集まり、開催期間中は約250点を上映。さらに、2026年11月5日から8日に東京都写真美術館で開催される「秋の国際短編映画祭」でも優秀賞受賞作品を視聴することができる(オンライン会場は11月22日まで)。
また、SSFF & ASIAは東京都とともに、東京の魅力を発信することを目的として、東京を題材にしたショートフィルムを募るCinematic Tokyo部門を展開している。2026年度の優秀賞受賞作は、高橋良輔監督の『トーキョーサブマリン』。鬱屈とした日々を送る42歳の男が、ある出会いをきっかけに少しずつ変わってゆく姿を通して、東京のミクロな日常を描き出した。

『トーキョーサブマリン』場面写真
今作がデビュー作であるという高橋監督。本記事では、高橋監督に応募までの経緯や制作にかけた思い、今後の展望などについて語っていただいた。
俳優活動の延長でたどり着いた映画監督
――高橋良輔監督は俳優、声優、舞台演出など多方面に活躍されていますが、まずはこれまでの経歴と映画を撮り始めた経緯を教えてください。
映画監督としては今回の『トーキョーサブマリン』がデビュー作だったのですが、これまでの活動がすべて活かされていると感じています。もともと学生時代から映画が好きで、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公、マーティ・マクフライのダサカッコいいキャラクターに憧れて俳優を目指したんです。高校生の頃から俳優の養成所に通い始めて、最初に受けたオーディションが『WATER BOYS2』。このドラマで2004年に俳優デビューしました。

高橋良輔監督。俳優、声優、演出家、映画監督として幅広く活躍する。出演作に『WATER BOYS2』『超星艦隊セイザーX』『SSSS.GRIDMAN』など多数
その当時から監督の横で「割本」と呼ばれる撮影用台本を読みながらモニターを見るのが好きで。芝居ももちろん楽しかったですが、撮る側にも興味があったんです。2018年に懇意にしていたプロデューサーさんから「舞台の演出をやってみない?」と言われて。それまで経験はなかったのですが、一度やってみようと思いお受けしました。
また、コロナ禍で舞台の仕事がなくなってしまった時に、前々から興味があったカメラを買って役者の友人のスチールを撮ったり、動画を撮り始めたりしたんですね。そうしていたら、2023年に声優として出演した『スナックバス江』というアニメで、「エンディングのMVを撮ってみませんか?」と誘われて。カメラをやってるならできるんじゃない?という無茶振りでしたが、何でもノーと言わずに挑戦してみたいタイプだったので、それもお受けしたんです。
それから本格的に映像を撮り始め、短編映画を撮ってみようと思って動き出したのが『トーキョーサブマリン』です。舞台演出やカメラマンとして活動の幅を広げていたら、映画監督につながったという形ですね。
地元である「東京」を、自分の目線で撮りたかった
――SSFF & ASIAのCinematic Tokyo部門へは、どういう理由で応募されたのでしょうか。
短編映画を作るならコンペに出したいという思いがありました。SSFF & ASIAは一番大きい短編映画のコンペだと知っていたのでハードルが高かったですが、記念受験でもいいから出してみようと。ちょうど「登竜門」を見て、応募締切の日程を確認したのを覚えています。この締切に間に合うように作ろうと、制作を進める上での目標になってくれました。
僕の地元が東京ということもあり、短編映画を撮るなら身の丈に合った、自分に身近な題材を扱った方がクオリティを担保できると思っていたんですね。だから「東京」をテーマに映画を撮りたいと考え、それが「Cinematic Tokyo部門」というこの賞にも合致していました。

『トーキョーサブマリン』場面写真
SSFF & ASIAは僕のまわりの監督もよく応募していたのを知っていて、そのうちの一人である洞内広樹監督は2018年に『東京彗星』という映画で同部門の優秀賞を取っていたんです。(洞内監督のインタビュー記事はこちら)洞内監督にはZoomで作品の方向性について相談させてもらったりしましたね。
その時に思ったのは、「自分が撮りたいものを撮る」ことが大事だということ。コンペにはテーマや題材もありますが、あまりそこに縛られずに自分が納得できる作品を作ることを意識しました。作品があれば、コンペに応募するチケットは得られる。撮りたいものを撮るための、きっかけをコンペが作ってくれたと思います。
新たに映画の道が開けたことの喜び
――そして今回、ご自身も優秀賞を取られましたが、受賞を知った時はどんな心境でしたか?
初めての映画だったので、正直ノミネートされるだけでも最高だろうという気持ちだったんです。メールで「入賞しました」と書いてあったのを見た時に、「入賞ってどういうこと?」とよく分からずに戸惑ったんですが、優秀賞のことだと知って、びっくりしました(笑)。役者や監督仲間も自分のことのように喜んでくれて、嬉しかったです。
映画を撮ることは、僕の中でこれまでの活動と地続きのイメージがあるんですよね。30歳の時に、自分の目標を聞かれて「肩書きをなくすことです」と言ったことがあって。俳優と言うと俳優でしかないけど、僕はもっと広くエンタメに関わる人になりたいという思いがあった。
俳優も声優も舞台演出も映画監督も、その各場面で新たに勉強をする必要がありますが、そうやって一生勉強しているのも楽しい。それぞれの経験がそれぞれの活動を支えている部分があり、今回の受賞によって新たに映画という道が広がったように感じて嬉しかったです。
――『トーキョーサブマリン』は、42歳の男・深海潜が日々の鬱屈した停滞感の中で、謎の男・羽多野盛と出会ったことで日常が変わり始める物語です。どのような映画を撮りたいという思いがあったのでしょうか。
まずは東京を題材にするということで、いわゆる「東京」のイメージではなく、地元である僕だからこそ撮れる景色を作ろうと思いました。ど真ん中に東京の観光地を見せるとかではなく、海外の方がまだ知らない、日常的な東京を撮りたいなと。

『トーキョーサブマリン』場面写真
また、僕は映画監督としてはビギナーなので、これまで俳優として大事にしてきた感覚を活かしたいとも思っていました。具体的には、芝居をする中で培ってきた人と人の距離感や、人物のストーリーを想像すること、人の深層心理を考えることなどですね。それで、人間関係についての映画を撮りたいと思いました。
一見きらびやかなイメージのある東京にも、ミクロな視点で見るとすごく普通の人たちの生活がある。その一つひとつの人生に深く潜っていくような感覚から、『トーキョーサブマリン』というタイトルが思い浮かびました。
「言語化」を自分の武器にして
――おじさん二人が東京の街で1週間同居するという筋書きがとてもユニークでしたが、これはどのように導かれたのでしょうか。
子どもの頃からダサカッコいいキャラクターが好きだったことも関係しているのか、おじさんを撮りたいという気持ちがあったんです。それで主演の茨城ヲデルさんにまず声をかけて、どんな人を演じたいですか?と聞いてみたところ、「報われない男を演じたい」という答えが返ってきました。
それを受けて、キラキラ輝く東京の街で、鬱屈として生きている人の人生が少し明るくなるような話を書こうと決めました。

最終的に、妻と離婚して娘とも離れ離れに暮らしている男を描こうと思ったんですが、その生活の中で希望となる存在にもおじさんを配置したいと思って、岩永洋昭さんにお願いしたんですよね。
ひとつのフレームにおじさん二人をみっちり捉えたらかわいいんじゃないかと(笑)。この二人の存在もあり、おしゃれなインスタ映えするスポットだけじゃない、赤提灯の居酒屋や東京の街並みを描くことができました。
――映画撮影は初めてとのことでしたが、苦労する場面はありましたか?
映像を撮る際、どのようにショット(短い映像)をつなげてシーンを構成するかを考える「カット割り」という作業がありますが、これには前々から興味があったので、飲み込みにはあまり苦労しませんでした。それに、あくまでもカット割りは土台であって、現場でカメラマンさんのアイデアを聞いたり演者さんの芝居を見たりしながら柔軟に変えていこうという気持ちがありました。ここで俳優をしていたことが活きたと思って。
自分で言うのもなんですが、僕は決断が早かったり、言語化するのが得意だったりするんです。それは俳優として、日々芝居の意図について監督とコミュニケーションをとったり、役の気持ちを言葉にしてきたからだと思います。

『トーキョーサブマリン』場面写真
あとは、予算があまりなく、テストしながら本番の撮影も行わなければいけなくて。短い時間で多くのカットを撮り切らないといけないスケジュールだったので、大変な部分もありましたが、カメラマンや演者と話し合いながらスムーズに進めていけたのはよかったですね。
短編映画がもっと流行るように
――今回、ノミネート作品の中にはAI技術を使った作品も多く見られましたが、他の作品を観た印象はどうでしたか?
AIを活用した映画も観ましたが、すごく面白かったです。これまでAIを使った映像を観たときに「なんだか見たことがある画だな」と思うことは多かったんですが、最近はプロンプトを詳細に打つと、表情豊かでリアルな映像が上がってくるようになった。
これは先ほどの「言語化」が得意な俳優やディレクターにとってはチャンスだと思うんですよ。感情や表現の機微をうまく言葉にできたら、どんどんクオリティを上げられる。その可能性を感じましたね。

Cinematic Tokyo 部門ノミネート作品のひとつである、山口ヒロキ監督の『観測者過多都市』場面写真。同作は全て生成AIで制作された
――今後、映画監督としての展望はありますか。
今回の賞を受賞したのは大事な縁だと思うので、これからもまず1年に1本は短編映画を撮って、経験値を増やしていきたいと思っています。
声優として海外ドラマの吹き替えをすることもあるんですが、今は1話が3、40分のものもあって、「短編」というものの需要が高まっているんじゃないかと思うんです。短い映像を観るのに慣れている現代人に、新しいエンタメの形として短編映画をもう少し浸透させたい。30分の中に満足のいくストーリーと起承転結があり、クオリティが担保されている作品を僕も作っていきたいです。
――最後に、2026年度のSSFF & ASIA & ASIAへ応募を考えている方へメッセージをお願いします。
まずは、僕みたいに映画を初めて撮る方にもチャンスがあるということを伝えたいですね。映画を撮るには熱量と踏み込む勇気がいると思いますが、やってみないと始まらない。そこに素人かプロかの肩書きや、年齢の壁はないと思います。もしコンペに通らなくてもその経験は絶対に価値があります。映画を撮りたいという気持ちがあるなら、ぜひ撮って、コンペに応募してみてほしいです。

https://www.shortshorts.org/2026autumn/
会期:2026年11月5日(木)~11月8日(日)
また、2027年の映画祭に向け、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア「Cinematic Tokyo」部門の作品を募集中です。
https://compe.japandesign.ne.jp/shortshort-cinematic-tokyo-2027/
締切:2027年01月31日 (日)
撮影協力:LIFORK H/Q
取材・文:原航平 撮影:石垣星児 編集:萩原あとり(JDN)



