受賞者インタビュー
2022/12/05 10:00

生活の中で意図せずに生まれる「線」や「面」を描きたい Idemitsu Art Award 2022グランプリ 竹下麻衣2 / 2 [PR]

Idemitsu Art Award 2022 グランプリ 竹下麻衣さん

日本画の画材の良さ、表現の可能性

――美術大学に進学した動機や、日本画を選んだきっかけを教えていただけますか?

子どもの頃から絵を描くのが好きで、美術大学に行けたらいいなと思っていた頃、地元・島根県の美術館で現代作家の日本画を見る機会があったんです。画材が油絵とはまた違っていて面白いな、日本画というジャンルがあるんだと知って調べていくうちに日本画を専攻しようと決めました。嵯峨美術短期大学から4年制の嵯峨美術大学芸術学部造形学科に編入し、いろいろな先生に学ぶことができました。

――卒業後も画家として日本画を描こうと思ったのはなぜですか?

日本画を専攻して勉強していく中で、素材の良さや、自分が挑戦したいさまざまな表現の幅が日本画の画材にはあると感じました。入学してから生活が絵に全部使える日常になったので、いろいろなものを新鮮に感じて吸収した4年間でしたね。また、大学時代から京都に住み、外でもさまざまな作家の展覧会を見る機会が増えました。京都の街に出るといろいろな人や造形物に出会えて創作の刺激を受けることができます。

――受賞作の他には、どのような作品を描いているのですか?

最近では、花が枯れて形を変えていく様子を描いた作品もあります。シャキッと立っていた花が萎んで形が崩れていく様子と、元の形が残っている様子と、同じモチーフで形を変えて描いています。洗濯物のモチーフもまた別の形を描きたいと思っています。

Idemitsu Art Award 2022 グランプリ 竹下麻衣さん

――普段から生活の中で絵の題材を探しているのでしょうか?

この2、3年、コロナ禍でモチーフを探しに外に出ることができず、家にずっといる分、些細なところに目が行くようになったと思います。洗濯物や枯れていく花、ほかには寝たあとのシーツのシワとか。自分が手を加えていないところで生まれたり変化したものの面白さを描く、というコンセプトの基盤ができたと思います。

――生活の中で発見した題材を描くことで、絵画を描くことに留まらず、竹下さん自身の生活も豊かになるかもしれませんね。

そうですね。面白いものを見つけたときに楽しくなるので良いモチーフ選びの方法だったなと思っています。

――「現代に日本画を描くこと」について考えていることはありますか?

現代では抽象的に描く日本画の作家もいらっしゃいますし、いろいろなスタイルが派生していく絵画の歴史と同様に、日本画も変化していくと思っています。たまたま日本画に出会って良いなと思って描き始めたのですが、日本画の画材による表現にはまだいろいろな可能性があると思っています。

Idemitsu Art Award 2022 グランプリ 竹下麻衣さん

迷うことがあっても。完成まで描き上げることが大切

――首都圏以外にお住まいだと、美術展への応募に送料がかかる、東京の展覧会場をあらかじめご覧になれないなどハードルがあるのではと思います。一方で、今回25歳以下は応募料が無料になりました。京都にお住まいで23歳の竹下さんにとっていかがでしたか?

搬入場所が東京になることが多いので、送料を負担に思うことは実際にありますね。集荷を見越した制作スケジュールとお金の、両方を管理する必要があります。ただ、京都は東京へのアクセスが良いのでそこまで大変ではないかな。もっと遠い県や交通や物流の便が良くない地域で活動することを想像すると、もっと出費がかさむんじゃないでしょうか。そういう環境の中で今回、「Idemitsu Art Award」となり25歳以下は出品料無料になったのはありがたく思っていました。今回はできませんでしたが、その分もう1点制作することも可能になるので、2点同時に制作して、どちらにするか悩んだら両方出したりすることも可能になり、選択肢が広がって良いですね。

――今後、どのように作家活動をしていきたいでしょうか?

まだ個展を開いた経験がないので、来年中に個展を開くことを目標に、精力的に制作を続けていきたいです。自分は何を描きたいのかを掘り下げていきながら、作品の強度を高めていきたい。いろいろな方に作品を見ていただきたいと思っています。

――次回応募しようと思っている方々にメッセージをお願いします。

描くのを途中で諦めないでほしいです。答えがないので、描いていると途中で不安になり、また別の絵を新しく描こうという気持ちになってしまうことがあるかもしれないのですが、描きあげることが大事だということをお伝えしたいです。私自身、何か一つ完成させることが次の一歩になり、成長することができると思っています。

文:白坂由里 写真:出光興産 提供 編集:猪瀬香織(JDN)

「Idemitsu Art Award展 2022」概要

  • 展示内容
    Idemitsu Art Award 2022 受賞・入選作品(計54点)
    Idemitsu Art Award アーティスト・セレクション(過去受賞者の新作・近作を展示)
  • 会期
    2022年12月14日(水)~12月26日(月)10:00~18:00(入場は17:30まで)
    ※12月20日(火)休館
    ※12月16日(金)・23日(金)は20:00まで(入場は19:30まで)
    ※12月26日(月)は16:00まで(入場は15:30まで)
  • 会場
    国立新美術館 1階展示室1B(東京都港区六本木7-22-2)
  • 入場料
    一般400円
    ※学生、70歳以上の方、障がい者手帳をお持ちの方および付添者1名まで無料
    ※会場にて、Idemitsu Art Award公式ホームページトップページのスマホ画像または印刷物の提示で入場料が100円割引
Idemitsu Art Awardロゴ

シェル美術賞から「Idemitsu Art Award」となり、ロゴも刷新。キャンバスを満たしていくエネルギーがモチーフとなったデザインで、「キャンバスから、人へ、未来へ。若き才能が放つエネルギーを、社会のエネルギーへ」と、シェル美術賞から継続して若手に期待し、若手を支援する出光興産の思いが込められている。

公式ホームページ
https://www.idemitsu.com/jp/enjoy/culture_art/art/

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