受賞者インタビュー
2020/02/26 10:00

多様性の開花 ー 公募美術展『FACE2020』の受賞者たち [PR]

多様性の開花 ー 公募美術展『FACE2020』の受賞者たち左から小俣花名さん、松浦清晴さん、大槻和浩さん、齋藤詩織さん
新進画家の登竜門として定着しつつある、公募形式の美術賞『FACE』。2020年2月15から日3月1日まで、8回目となる『FACE2020』の受賞入選展が行われている。また、第9回『FACE2021』の作品募集も始まった。

『FACE2020』では875点の作家から応募があり、受賞・入選作品71点が決定した。今回はグランプリ該当なしとなり、作風の異なる4点の優秀賞作品が選出。各作家の年齢や経歴も多様で、「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を求めるという同展のコンセプトが強く現れた結果となった。

今回、登竜門では4名の受賞者に受賞作品の見どころや作家としての展望、そして『FACE2021』の応募を検討している方へのメッセージを伺った。

大槻和浩さん「本当に描きたいものだけを描く姿勢が大切」

大槻和浩さんと作品《明日を見つめて》

大槻和浩《明日を見つめて》(2019年、アクリル・キャンバス、162×194cm)

―― 受賞作品のコンセプトや、見どころを教えてください

閉塞感のある時代に、明日に向かって強く生きる人をテーマにした作品を描き続けています。描く人は、日常の何気ない表情の中に強い思いが感じられるものにしたいと思って制作しています。今回もそういった表情が現れるまで何度も、描いては塗りつぶし、また描く、を繰り返しました。作品をご覧になる方には、作品の前で対話し、共感し、感動してもらえれば嬉しいです。

大槻和浩さん(FACE2020優秀賞)

大槻和浩(おおつき かずひろ)1962年兵庫県生まれ、1986年大阪教育大学専攻科を修了。これまでの主な受賞に2007年「第2回丹波市展」市展賞(最高賞)、2010年「第9回小磯良平大賞展」大賞など。

―― 受賞をふまえて、今後の作家活動はどのようにお考えですか?

特別支援学校に長年勤務してきたこともあり、障害のある人の作品に触れる機会が多いのですが、『本当に描きたいものだけを描く』という姿勢の大切さ、表現の本質を学び続けています。

いつもその純粋さに感動しており、これからも今までと何も変わらず、彼らから学びながら、描きたいと思えたものを描き続けていきます。

―― 『FACE2021』へ応募を検討されている方へ、メッセージをお願いします!

私もいつもできているわけではありませんが、展覧会のために描くのではなく、描きたいものを描くことが大切だと思っています。

齋藤詩織さん「これからは外へ意識を向けて勉強していきたい」

FACE2020優秀賞・齋藤詩織さんと作品《女狩人のごちそう》

齋藤詩織《女狩人のごちそう》(2019年、油彩・キャンバス、162×194cm)

―― 受賞作品のコンセプトや、見どころを教えてください

私は現在、埼玉の実家で暮らしているのですが、もうすぐこの家から一人で離れる予定です。この絵は、実家の小さな畑があった空間をモデルに描いています。私にはあまりに身近な風景でとりとめもなく過ごしていましたが、もうすぐこの家を離れるということを強く感じ始めた時に、この場所に改めて目を向けることが多くなり、自然とここから絵を作り始めていました。

齋藤詩織さん(FACE2020優秀賞)

齋藤詩織(さいとう しおり)1992年富山県生まれ、埼玉県出身、2020年春に東京藝術大学美術研究科油画技法・材料第2研究室修士課程を修了予定。主な受賞に2019年「シェル美術賞2019」松井えり菜審査員賞。

―― 『FACE』に応募した決め手は何でしたか?

賞金が高額なのに、応募のハードルが低かったことです。作品一点のみで出品料も安く、手続きもとてもシンプルで応募しやすくて。また、入選すればこの美術館で一カ月も展示していただけるということにも、とても魅力を感じました。

―― 今後の、作家活動の展望をお聞かせください

これまで私は自分の中ばかりに目を向けて制作を続けてきましたが、今後はもう少し外へ意識を向けて、勉強していきたいと思います。

―― 『FACE2021』へ応募を検討されている方へ、メッセージをお願いします!

今回、自分が賞をいただけたことはとてもありがたいのですが、グランプリ該当作品なしとのことで悔しさが残る結果となりました。来年はぜひ、グランプリ作品が見られたら嬉しいです。

松浦清晴さん「身体の形態を通じて表現する」

FACE2020優秀賞・松浦清晴さんと作品《身体記》

松浦清晴《身体記》(2019年 アクリル・キャンバス 162×130.3cm)

―― 受賞作品のコンセプトや、見どころを教えてください

今作は人の身体の形態をできる限り崩しながら、刷毛の跡を活かして画面を作り上げていくことを心掛けました。自分自身が、さまざまな作品の何に惹かれるのかを考えたとき、“人の痕跡”なのだと思いいたったんです。だから人の形態を通じた表現は、ストレートに私の思いを形にできるのではないかと思っています。

松浦清晴さん(FACE2020優秀賞)

松浦清晴(まつうら きよはる)1974年宮崎県生まれ、2000年に愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了。主な受賞に2015年「シェル美術賞展 2015」入選、2018年「FACE展 2018」入選など。

―― 『FACE』のどんなところに魅力を感じましたか?

無名でも公明正大に評価していただける審査スタイルに惹かれました。普段、自分の制作状況を客観的に見ることが難しいので、こうして他者から評価していただけると、今の自分の力量がわかりやすく見えてくるように思えます。

―― 今後の作家活動のご予定をお教えください。

まずは、2022年のFACE受賞作家展「絵画のゆくえ」に向けて、制作していこうと思います。今後も制作し続けていける環境を作り上げたいと思いますし、もちろん、何か挑戦できる機会があれば可能な限り挑戦していきます。

―― 『FACE2021』へ応募を検討されている方へ、メッセージをお願いします!

いろいろなことに目移りして、作品のスタイルを変えてみたくなる欲求もあるかと思いますが、自分のスタイルがあればそれを継続して作品を作り続けることが大切だと思います。

小俣花名さん「受賞を機に、今後の活動に目を向けた」

FACE2020優秀賞・小俣花名さんと作品《朝ご飯》

小俣花名《朝ご飯》(2019年、墨・胡粉・水彩色鉛筆・和紙、175.5×150.5cm)

―― 受賞作品のコンセプトや、見どころを教えてください

モチーフは実家の朝の室内風景です。部屋の奥の窓から差す光が綺麗で、描きたいと思ったことが制作のきっかけです。今作は初めて墨だけで描きました。これまでずっと岩絵具で制作しており、モチーフが決まっても絵具のアプローチに悩むことが多かったのですが、墨だけの方がスムーズに制作でき、それが新しい発見でした。細かいところまでこだわって描いたので、観る人が絵の中でいろいろ発見して楽しんでくれたら嬉しいです。

FACE2020優秀賞・小俣花名さん

小俣花名(こまた かな)1997年東京都生まれ、武蔵野美術大学大学院修士課程造形研究科美術専攻日本画コース 第1学年在学中、2021年春に修了予定。主な受賞歴に2016年「中札内美術村企画公募展『はたちのりんかく』」最優秀賞、2018年「第41回三菱商事アート・ゲート・プログラム」入選、2020年「第46回三菱商事アート・ゲート・プログラム」入選。

―― 『FACE』に応募したきっかけは?

チラシや受賞者のお知らせなどを目にする機会が多く、私も挑戦しようと応募を決意しました。FACE展は現代的な作品が多いイメージです。毎回違った特色の受賞作品があるところが魅力だと思います。

―― 今後の展望をお聞かせください

自分の表現が定まっていないので、これからも制作しながらどんどん発見をしていきたいです。また受賞がきっかけで、大学卒業後の活動についても考えるようになりました。

―― 『FACE2021』へ応募を検討されている方へ、メッセージをお願いします!

他人の評価を恐れず、最後は絵の中で全部言い切って挑戦する事が大切だと思います。

撮影:木澤淳一郎 編集・聞き手:猪瀬香織(JDN)

FACE展2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展 概要

●会期
2020年2月15日(土)~3月1日(土)10:00~18:00
※入館は閉館30分前まで、月曜休館(ただし2月24日、翌25日は開館)

●会場
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
(東京都新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階)

●観覧料
600円/大学生以下無料
※2月29日(土)、3月1日(日)はどなたも無料

公式ホームページ
https://www.sjnk-museum.org/program/current/6138.html

FACE2021 概要

●締切
2020年10月18日(日)

●賞
グランプリ(1点) 賞金300万円
優秀賞(3点) 賞金50万円
他賞あり、SOMPO美術館にて入選展

●募集内容
未発表の平面作品

募集要項(登竜門)
https://compe.japandesign.ne.jp/face-2021/

※新型コロナウイルスの影響を鑑み、FACE展2020の会期が変更となりました(2020/2/28 登竜門編集部)

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