結果発表
2017/10/12 10:00

第10回 タムロン鉄道風景コンテスト

応募作品数:5809点
受賞作品数:23点(一般の部:10点/小・中・高校生の部:10点/全応募作品より選出:3点)(入選および佳作を除く)
主催:株式会社タムロン
※ここでは、大賞・準大賞をご紹介します
一般の部

大賞

時の流れに
竹端 榮
時の流れに
作品コメント
しぶんぎ座流星、星の日周運動、川の流れ、家路を急ぐ通勤電車、見えない時の流れを感じて。
審査コメント(一部抜粋)
デジタル写真のメリットとして星の写真が撮りやすくなったおかげで、星と何かをプラスしたテーマの作品が増えていますが、その中でこの作品は「星+鉄道」という素材を見事に昇華させています。画面構成、色の仕上げ、いずれも素晴らしい。21mmという超広角レンズで星と鉄橋を別撮りし、高度なテクニックで作品化されたと思われます。その詳しい撮影技法は表彰式の時に作者から直接お聞きするのを楽しみにしています。
鉄道写真は「構図」より「構成力」が重要。この写真は単にフレーミングのうまさなどというレベルの問題ではなく、撮影前の構想力や現場での構成力が実にしっかりしていたからこそ、これだけ完成度の高い作品に仕上がったものだと思います。星も見事に描写されていますが、通勤電車の明るい窓が繊細に描写されていて、仕事を終え家路につく人々の姿さえ浮かんでくるところも作品の大きな魅力のひとつとなっています。

準大賞

麦わら帽子
植原 誠
麦わら帽子
作品コメント
去りゆく電車の窓に浮かび上がる麦わら帽子に物語を感じた。
審査コメント(一部抜粋)
麦わら帽子がテーマと分かる、まさにロマンチックな青春写真です。望遠系のレンズで、その描写特性をとてもうまく活かして撮られた作品です。強羅へ向かう箱根登山鉄道の旧形車を、おそらくコンテニュアスAFを使って駅のホームから狙われたものでしょう。窓に麦わら帽子を発見し、シャッターを切った瞬間は、やったぞ!という気持ちだったに違いありません。帽子を中心にして車両を一部カットした判断も的確でしたし、帽子を際立たせ不要な部分を省略したアンダー目の露出も効果を上げています。
左画面に黒い影の部分を持ってきて帽子の白とシンプルに対比させた構成も、とても上手です。この構成によって、見る人がこの帽子の持ち主である少女に思いを馳せることができるようになっています。周囲がアジサイやら何やら賑やかだったらこうはいかなかったでしょう。
ただ今 横断中
大柳一夫
ただ今 横断中
作品コメント
江ノ電 江の島~腰越
審査コメント
実にヒューマニティー溢れる作品ですね。同時にカメラを操るテクニックも素晴らしい技量をお持ちの作者です。ミラーレスカメラをお使いですが、どうしてもこの種のカメラはシャッタータイムラグがあってチャンスをつかみにくいというデメリットがあります。それを、主役の少女が旗を持って駆け出す瞬間や、必死にそのあとを追う少女の仕草などもドンピシャで捉えています。顔の向きと表情、手足の動きなど、これらが少しでもズレると、まったく別の写真になってしまうのですが、そうした難点をクリアして通学の雰囲気をとてもよく描出しています。
子どもの元気な溌剌とした姿はもちろんのこと、通り過ぎた電車を背景に、停まって横断を見守るバイクの姿や遠くに見える日傘の女性など、周囲の街の情景を的確に撮り入れた作者の力量に感心します。人間に対して温かい視線を向けるヒューマニティーが、写真にはいかに大事かということを教えてくれる写真です。
帰郷
おどみ岐諷
帰郷
作品コメント
鳴門市の池谷駅付近の踏切で列車通過後撮影。珍しく雪が降り、故郷へ帰る人をイメージ。
審査コメント(一部抜粋)
審査の時は津軽鉄道で撮られたものかと思いましたが、あとで作者のコメントを読むと鳴門市の池谷駅付近の踏切で撮られたものだとか。四国の冬は瀬戸内海がまるで日本海のようになり、上昇した気流に冷たい風が当たって雪になることが少なくないのですが、その吹雪の感じが本当によく出ています。この作品は踏切で撮られています。列車が通り過ぎたあと「おっ、いいな!」と思って瞬間的に撮ったのでしょう。臨場感もよく出ています。そうした撮影状況にもかかわらず、カモメが飛んでいたり、吹雪にかすむ車両や線路の情景が実に高い完成度で捉えられているところに感心します。カラー写真なのに渋いモノトーンで描写されたことも、帰郷というテーマにふさわしいと思います。
作者は68歳とのことですが、この吹雪の中をカメラを提げて出かけ、よくこのような傑作をものにされたものだと感心しました。
小・中・高校生の部

大賞

勝沼の桜
岡 優成
勝沼の桜
作品コメント
桜につつまれる駅。廃線の駅もまるで復活したようでした。
審査コメント
眺めているとしみじみ綺麗だなあ、と感じさせられる作品です。まるで舞台のように周囲の光量を落として、桜のボリュームの多い部分だけ明るく浮き立たせ、見る人の視線を誘う表現方法が、この題材にとてもよく合っていると思います。まさに構図だけでなく全体的な構成力の優れた作品といえるでしょう。桜のピンク色も草の緑もやわらかく落ち着いていて、非常にシックでいいですね。そうした上品な感性に支えられて、春の廃線の駅の静かな佇まいが優しく詩的に描写され、大変好ましい作品に仕上がっていると思いました。
昭和ノスタルジーのような、なつかしさも感じます。作者がこの場所を選ばれた理由も、おそらく桜の咲く春の一瞬だけ往時の賑わいを彷彿させるようなこのプラットホームの旅情を、ほかの人にも伝えたかったからなのかもしれませんね。作者の廃線に向けるロマンチックな思いや鉄道愛が十分伝わってくる素晴らしい作品に出合えてとても嬉しいです。

準大賞

お召し列車、進行!
木村滉斗
お召し列車、進行!
作品コメント
羽越線で走ったお召列車です。運転士が指差喚呼している所と、たなびく日章旗がポイントです。
審査コメント(一部抜粋)
第一印象からとても強いインパクトを感じました。真正面からドーンと狙った撮影意図が非常に明確で、一年に一回走るかどうかという珍しいお召し列車を、こうして大胆に切り撮って表現する潔さと度胸に感心してしまいます。
一見して顔のように見える面白さもさることながら、細かいところをよく見ていくと、運転士さんの手が「出発進行!」を示していて、国旗が風にはためいているところなどもうまく捉えています。迫力があるだけでなく品もあって、ディテールが正確に写し止められているという点は、やはり鉄道写真のツボを押さえていると感じました。こうした瞬間をきちんと押さえられるということは、作者自らの力量はもちろん、鉄道の神様に愛されているに違いありません(笑)。
三姉妹
青山毬恵
三姉妹
作品コメント
仲良い部員がまるで姉妹のように見えたので撮りました。
審査コメント(一部抜粋)
部活動で撮影に出かけ、お互いにモデルになって撮ったり撮られたり、といった中での一枚でしょう。幸せな気持ちが伝わってくる、楽しい写真です。タイトルにもあるように、本当の姉妹にも見えそうな仲の良い三人を、うんと近付いてドーンとストレートに切り撮ったところが成功していると思います。全員が笑っているのではなく、表情や雰囲気が三人三様で、それぞれの自然な表情と仕草だけに狙いを絞ったことがかえって面白く、10代の女の子の群像ポートレートとして快活で爽やかな印象を与えてくれます。
光線状態の捉え方もうまく、右の二人はやや逆光気味のトップライトになっているため、髪が輝いて若いキラキラ感が強調されました。また、明るい木漏れ日と緑に包まれた周囲の環境を背景としてうまく生かしています。小湊鉄道での撮影会なのでしょう。
のんびりいこうか
鈴木棟登
のんびりいこうか
作品コメント
線路にすわっている猫を撮りました。
審査コメント(一部抜粋)
撮影場所は現役の線路ですが、超望遠レンズの引き寄せ効果を活かし、線路の外から安全に撮られたことが確認できたので準大賞に選ばせていただきました。鉄道と動物の作品は、動物であればどんな動物でもいいということではなく、やはり写真映えのする良い瞬間の出会いがなければ作品になりません。この猫は、ふっくらとした存在感が愛らしく、表情や仕草に風格と面白味を感じます。良い出会いがあったのだと思いました。背景の線路の緩やかなSカーブも見る人の心をゆったりと落ち着かせる効果がありますね。
望遠レンズならではの柔らかい背景ボケが大きな魅力でもあります。撮影されたのは秋でしょうか、猫の上のほうに見える紅葉の色がとても綺麗です。ややサイド気味の逆光が、猫の毛をラインライトで美しく飾ってくれています。こうした可愛いフォトジェニックな被写体と会えるというのも、写真の神様に愛されているということ。
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