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■富山プロダクトデザインコンペティション2009最終審査会
デザインウエーブの目玉ともいえる「富山プロダクトデザインコンペティション」の最終審査会が行われたのは、10月21日午後。同コンペを特徴づけるこの審査会は公開プレゼンテーション方式で行われ、各デザイナーが審査員に向けて最後のアピールをし、審査員による公開討論を経てその場で各賞が決定するというものだ。会場には一般来場者も入場でき、緊張と刺激あふれる討論の様子をリアルに体験できるのも、一般的なコンペとは様子が異なっている。
各デザイナーの持ち時間は4分間。スライドショーを操作しながら、デザインコンセプトや用途、製造段階での工夫や商品化への実現性、必要ならば店頭でのパッケージについてまで詳しく語る。すでにこれまでの審査段階で大きなポイントは審査員にも伝わっていることもあり、最終的に自分のデザインにはどのような魅力と商品価値があるのか、という点を伝えられるかどうかが勝負の分かれ目になるともいえるだろう。4分間の最終プレゼンテーションが終了すると審査員からの質疑にその場で応答しなければならない。厳しい意見もあれば温かいアドヴァイスもあり、デザイナーには油断ならない時間だが、常に審査員たちは親身で平等な立場から意見を述べていた。10組全員がプレゼンテーションと質疑応答を終えると、入れ替わりに審査員が壇上に上がり、最終審査が始まる。今年の審査員、安積朋子氏、五十嵐久枝氏、大熊健郎氏、下川一哉氏、大矢寿雄氏による活発な意見が交わされ、結論に達するには予定時間をかなりオーバーしてしまったが無事、各賞が決定した。
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公開プレゼンテーションの様子。
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審査会後に行われた、安積朋子氏と名児耶秀美氏によるトークショーの様子。
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受賞式の様子。左から、渡辺仙一郎氏、倉本仁氏、AUN2H4の各氏。
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今年初めての試みであるビジネスマッチング。
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今年のテーマ「カラフルなグッズ」に求められた、生活のスパイスとなるような色使い、こだわりあるカラーバリエーション、素材色の組み合せによる色彩表現といった課題をふまえ、独自のデザイン表現が評価されたのは次の3組だ。
とやまデザイン賞には渡辺仙一郎氏の「ころぴたっ」が決定。人間の道具の原点を〝石〟だと考え、色の原点でもある顔料に着想を得たマグネット形の石ころオブジェは、立方体の角をランダムに切り落としてできた自然な形が愛らしい。1個でホワイトボードなどへ〝ぴたっ〟とはり付けることができ、使わないときはまとめてくっつけておくこともできる。顔料が混ざり合うように自由にまとめたり崩したりできる楽しさが、色そのもので遊んでいるような感覚を与えてくれる。ゲストの名児耶秀美氏は「ひとつの形が不思議だし、顔料という着眼点も独自性がある」と高く評価した。
準とやまデザイン賞に選ばれた倉本仁氏の「TEA SET」は、挽物にカラフルな着色を施した湯呑みや茶托。民芸的な手法を細部までリサーチし、色彩表現の少なかった挽物にあえて色で魅力を付加することで、「何か新しいイメージをもたらせるのではないか」と考えたという。ティーセットとして重ねる収納でも色が際立ち、新鮮なユニークさを実現していた。
黒木靖夫特別賞の「イロトリドリ」はAUN2H4の作品。「形に色を与えるのではなく色に形を与え、生活そのものを彩りたい」という、鳥の姿をした壁面フックはさまざまな場面で使われるシーンを想像するだけで、ほほえましい気持ちになるオブジェだ。
入賞作品に限らず最終審査に残ったデザインは今後、製造方法やコストの算出、流通経路の確保などをふまえて商品化が検討される。過去にも多くの作品が世に出ていることも、デザイナーのモチベーションにつながっているに違いない。
コンペの審査会後には、今年初めて審査員を務めた安積朋子氏と、審査員から退いた名児耶秀美氏によるトークショーが行われた。テーマは「そのデザイン、売れますか?」デザイナーと経営者が一緒になってデザインビジネスの在り方を真剣に考える必要性が求められる現在、実際の現場での話をたっぷりと語ったお二方。必然的に経済不況下でのデザインについての話題も多かったが、プレゼンテーションを終えたデザイナーから「ヨーロッパのメーカーとはどのように契約しているか?」「日本と海外でディレクター職ではギャランティの違いはあるか?」「プロトタイプ制作に対する価値をどのように考えているか?」といった積極的な質問が飛び出した。
また今回初めての試みとなった「デザインマッチング」でも、デザイナーの意欲的な姿勢が印象に残った。最終審査に残った10組と招待デザイナー2組が自身の作品を富山県内から参加した企業13社にアピールし、商品化の可能性について意見を交換する好機となったようだ。終了後にはデザイナー側から「工場見学ツアーをしてみたい」「工場内など実際の現場を見たい」という感想が出ると、企業側からも「見本市や展示会への出展時のデザインも相談したい」「技術や可能性をもっと紹介したい」といった発展的な意見が聞かれた。
毎年行われてきたこのデザインウエーブのなかで、ワークショップやコンペがきっかけとなり、企業がデザイナーとものづくりをしようという動きが強まってきた。富山県総合デザインセンターのディレクター桐山登士樹氏(TRUNK代表)の「17年前にスタートし、やっとなめらかに動き始めたこの流れをより強調しながら、新しいデザインチャンネルをつくっていくことが大切。県内での認識はまだ低いと感じるので、今後はデザインを扱う場所もふやしていければ」と語った。富山の特性をいかしつつ、グローバルな視野で新たな可能性を探るデザインの力にこれからも注目していきたい。
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