受賞者インタビュー
2018/11/29 10:00

受賞者が語る「学生限定・立体アートコンペ『AAC2018』」の魅力 [PR]

学生限定・立体アートコンペAAC2018 受賞記念写真前列は審査員(左から服部信治社長、ヤノベケンジさん、馬渕明子さん、内田真由美さん)
2列目は受賞者、後列は入選者6組8名
「アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション(以下AAC)」は、不動産業のアーバネットコーポレーション主催の学生限定の立体アートコンペ。同社が開発したマンションのエントランスに置く立体作品を募集し、今年で18回を数える。若手芸術家の育成支援に重きをおいた仕組みが特徴だ。

2018年10月23日、東京都墨田区のマンションでAAC2018の最終審査会が行われた。最優秀賞に輝いたのは、東京藝大で彫刻を専攻する雷康寧さん。優秀賞には、同じく東京藝大で漆芸を研究する佐野圭亮さんと、鋳金を研究する堀田光彦さんが受賞。堀田さんは2度目の受賞となった。

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都内ホテルで行われた表彰式・懇親会には、最終審査を終えた3名に加え、一次審査で入選した6組8名も参加。ほか不動産・美術業界の関係者、協賛企業などが勢揃いした。登竜門は会場で受賞者3名にお話を伺った。

雷康寧さん「学生時代は挑戦に最高の時期」

雷 康寧(らい こうれい)/Josephine H.N. Lui:香港浸會大學視覺藝術院を卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻 博士前期課程2年

── 最優秀賞、おめでとうございます!

ありがとうございます!彫刻を続けるか迷うこともありましたが、受賞で改めて作家活動を続ける勇気が持てました。

── 雷さんは2回目の応募ですね。このコンペのどこに魅力を感じているのでしょうか?

作品がマンション内に恒久展示される点です。作品が毎日住民の目にふれ、生活に溶け込めるというのは素晴らしいです。昨年入選したので、次はどこまでいけるか実力を試してみたいと思い、今年も応募しました。

雷さんの作品「Be water my friend」。人生を水に例えたブルース・リーの言葉を蛸で表現。蛸や水を介して、生活の中で制約に囚われがちな人々に、自由さや柔軟さ、創造力という人間の本質を思い出させ、元気を与える存在にしたいという意図が込められている。作家性と空間調和の絶妙なバランスが評価された

── 受賞作は柔らかな雰囲気が印象的でした。マンションに展示ということで、制作時に注意したことや苦労されたことはありますか?

これまでの私の作品はグロテスクなモチーフが多いのですが、今回は住民の方に親しみを持ってもらえる造形になるよう注意しました。制作は「輪積み」という、中を空洞にする技法で、脚の造形に苦労しました。さらに大変だったのは、60kg以上ある作品の展示作業です。用意された展示版を事前に確認する時間が取れず心配でしたが、幸い作品とマッチしてくれました。

── これから応募を考えている学生たちへ、メッセージをお願いします。

学生時代は失敗や間違いをしても良い、挑戦に最高の時期だと思います。勇気を持って、一緒に挑戦を続けましょう。

佐野圭亮さん「工芸の社会的評価を問える機会」

佐野圭亮(さの けいすけ):1994年生まれ、東京藝術大学美術学部工芸科を卒業後、同大学大学院美術研究科工芸専攻(漆芸研究分野)博士前期課程2年

── 佐野さんはAAC初挑戦ですね。応募の決め手は何だったのでしょうか?

AACには数え切れない魅力があります。まずプラン提出のみで応募でき、完全なブラインド審査により多数の受賞・入選作品を選出していただけます。制作費や賞金などの金銭的メリットも大きく、恒久設置、著名審査員や不動産関連の関係者との懇親会など。さらに、工芸家にとっては、工芸の世界を出て別の視点で審査していただける機会です。

自分自身にとって貴重な機会である上、工芸の社会的評価を問うこともできると考えて応募しました。

佐野さんの「現の秤」は螺鈿、蒔絵、赤珊瑚と精緻な加飾がなされた工芸作品で、息をのむ美しさ。工芸品だから触ってほしいという作家の想いに対し、審査員は「触ることを意識した形だとなおよかったのでは」と評した

── マンションエントランスへの設置というテーマは、いつもの工芸作品の制作とは大きく異なる点だと思いますが、挑戦してみていかがでしたか?

マンションエントランス、つまり公共空間への設置は工芸作品にとってさまざまなリスクがある一方、作品を引き立てる一種の舞台になる側面もあります。今回は素材の限界を知り、リスクの克服と舞台を活かすことの両立の難しさと重要性を実感しました。今後も工芸作品にとって達成すべき目標と捉えていきたいです。

── 応募を考えている学生工芸家の皆さんへ、メッセージをお願いします。

AACは学生“向け”を超え、学生の“ため”のコンペであるように思います。作家としての評価を積み上げたい学生において、社会と自身、自身の表現(作品)を結びつける格好の機会です。ぜひ挑戦してみてください。また、AACが盛り上がることで、社会において美術表現の価値が再認識されることも願っています。

堀田光彦さん「何度も選んでいただけたことが自信に」

堀田光彦(ほったみつひこ):1991年生まれ、武蔵野美術大学造形学部彫刻科を卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻(鋳金研究分野)博士前期課程を修了、研究生として在籍

── 堀田さんは何度もAACに応募されていますが、このコンペの魅力はどこにありますか?

ずばり制作費を頂けて実際に作れるところ。また、最優秀賞作品はマンションに恒久設置されるところだと思います。

── 今回の作品制作では、どのようなところに注力されましたか?また、どんな苦労がありましたか?

まず最初に、指定されたマンションのエントランス空間と調和をとることを大切にプランニングしました。また、多数の入居者の方々が毎日目にするものなので、誰が見ても不快な思いをすることのないデザインを心がけました。苦労したことは、限られた期間での制作で睡眠時間が減っていったことですね(苦笑)

堀田さんの作品「精神の美」は、墨田区のマンションに設置するため区花の桜をモチーフにし、落ち着いた配色を選択。場所や住民に対する強い配慮が伺われる

── AACへの挑戦を、今後どのように活かしていきたいですか?

私はこれまで一度入選、2回最終審査に進みました。最優秀賞を逃して悔しいですが、何度も選んでいただけたことは自信になっています。3度も背中を押されたので、もう進むしかないですね。これからも作家活動を続けていきます。

また、AACを契機に今も作家を続けている人がたくさんいます。2020年にAACが20回を迎えるので、歴代受賞者たちのグループ展などができたら良いなと思っています!

── 今後応募される後輩アーティストたちへ、メッセージをお願いします。

学生限定のコンペティション。細かいことは気にせず、まずは応募してみましょう!


審査員と懇談する受賞者たち。ポートフォリオを持参し、アート界の第一線で活躍する審査員からアドバイスを受けていた。この懇親会から作家としての新たな展望が生まれることもあるのがAACの魅力のひとつだ

若い世代のアーティストに一つでも多くのステージを提供し、それが彼らの勲章となって羽ばたく第一歩になりたい――そんな想いで始まったAAC。初開催から18年を経た今、受賞者たちはしきりに「AACは立体系の学生の間ではとても有名」「受賞で作家を続ける勇気が持てた」と話す。AACがしっかりと若き立体作家の登竜門に、そして前へ進む原動力になっていることが伺えた。

今回からは高校生も応募可能になり、学生作家に門戸を拡げたAAC。アーバネットコーポレーションの服部信治社長は、2020年に控えた第20回に向けて「記念となることを企画していきたい」と語る。拡張を続けるAACの展開が楽しみだ。

公式ホームページ
https://aac.urbanet.jp/

画像提供:アーバネットコーポレーション
取材・文:猪瀬 香織(JDN)

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