【アッシュコンセプト デザインコンペティション】審査員鼎談 -名児耶秀美、山崎泰、下川一哉1 / 3
今回、主催者であるアッシュコンセプト代表 名児耶秀美氏、審査員のひとりである山崎泰氏(JDNブランドディレクター)、審査会進行役を務める下川一哉氏(意と匠研究所代表)による鼎談が実現。募集テーマの解釈、審査のポイント、期待する提案について、率直に語られた三者の言葉は応募の参考になるはずだ。
ものづくりと発信力が融合する審査員
-今回、なぜアッシュコンセプトはデザインコンペティションを開催することになったのでしょうか。また、普段デザインを批評するメディアの編集長たちが審査を行う点も気になります。
名児耶秀美氏(以下、名児耶):今回、コンペ形式でデザインを募ることにしたのは、もっと多くのデザイナーのみなさんに、自分の名前で商品を発売する機会を活用してほしいと考えたからです。実はこれまで、武蔵野美術大学で特別授業の一環として、商品化を前提にコンペを5年間継続して行なってきました。それを、アッシュコンセプト創立15周年をきっかけに、すでにプロで活躍しているデザイナーなど、多くの方に、参加してもらえる場に変えたのです。
アッシュコンセプトのブランド「+d」は、デザイナーが伝えたいメッセージを形にして届けるブランドです。たとえばその中の「アニマルラバーバンド」や「スプラッシュ」、「カオマル」、「カップメン」は、つくり手の想像をはるかに超えて、多くの人々の感性を刺激し人気を得てきました。このような、予想を良い意味で裏切る感動を改めて感じてみたい、という気持ちもあります。今回のコンペの審査員は、普段の生活から生まれるモノの大切さをご存じの、各メディアを代表する方にお願いしました。編集長という立場で全体を俯瞰して未知の領域を見出していただけるのではないか、と期待しています。そして審査を統括する役割を下川さんにお願いしました。
下川一哉氏(以下、下川):審査員は相当緊張していますよ、きっと。デザインの分野を代表する各編集長が横並びになることはありませんし、ご自身の発言が雑誌を代表することになりますから。そういう意味での緊張感があるコンペはまずありません。一般的には、デザインコンペの審査員にメディア関係者はひとりだけです。それが今回はメディアが中心。だからこそ、類まれな審査になるでしょうし、これだけの皆さんに審査される応募者にとっては貴重な経験になるでしょう。
山崎泰氏(以下、山崎):その通りですね。通常のデザインコンペの審査は、デザイナーが数名、デザインプロデューサー、流通の専門家がいて、その次の枠にメディア関係者といった並びが一般的かと思います。メディア関係者はデザインの当事者というより、一歩引いた立場で見ることが求められているからですよね。それが今回の審査では100%メディア目線。通常は商品企画や生産、マーケティングなど、ものづくりに関わるプロがデザインの妥当性を担保する審査をしますが、今回はそうではありません。なぜかと考えると、アッシュコンセプトが通常の審査員に求められる機能をすべて包括しているから。商品化の実績が非常に多いアッシュコンセプトに、不足している機能はメディアだけかもしれません。それを請け負うのが審査員の役割だろうと解釈しています。これだけの審査員が見るということは、受賞作がメディアに乗るチャンスは確実に広がるはずです。
下川:今回は、普遍的な課題を取り上げるコンペですから、すでにプロとして実力を積んだデザイナーからの応募も期待できるんじゃないでしょうか。直接、名児耶さんにプレゼンできる立場のデザイナーにも、あえて参加してほしいですね。そうなると、厳しいコンペになりますよ。
名児耶:輪ゴムの概念を変えるほどの影響力を持つまでになった「アニマルラバーバンド」や、量産品で細密な表情を出すのに苦心した「カオマル」の時のように、私たちと一緒に熱い気持ちで商品化に突き進めるアイデアに出会いたいんです。15年間で積み重ねてきた成果を、ある意味では打ち壊すほどのチャレンジも必要だと考えています。そのためのデザインコンペですから。