プロダクト部門
結果発表
大賞
「It's time for…」
三澤 直也
川上典李子 氏 コメント
時の経過を示すプロダクトの提案とは私たちの生活そのものを掘り下げて考えることであり、生活の今後に向けたメッセージであるのだということを改めて実感する審査となりました。そのなかで、多様な使い方が可能で、時計と人との新たな関係を示す作品を大賞に選出することができました。ベゼルに触れるクロックという楽しさに加え、時間を軸とするコミュニケーションの様子も想像できます。提案者の想いがメモリをはじめ細部のデザインに貫かれていることにも評価が集まりました。これまでになかったクロックが誕生することを、楽しみにしています。
小泉 誠 氏 コメント
もともと「時」というものは、みんなが共有して同じ時間を過ごしている。そして、時計というプロダクトも強制的に同じ時を刻んでいる。そんな時計に、自分の時間や意識を加えたのがこの「It’s time for...」。キッチンタイマーのように目的の時間までの印ではなく、時間を区切り、生活を区切ることで起こるスウィッチのような感覚かもしれない。シンプルな考えと形状ながらも、ディテールを美しくまとめ上げているところにも好感が持てた。
鈴野浩一 氏 コメント
外形から飛び出した小さな突起があり、それがつまみでもあり時間の目印にもなるというアイデアの時計。この時計が生まれることで、長い針がここまでくるまで休もう、短い針がここまでくるまで、今から勉強に集中しようとか、使われ方とコミュニュケーケションがすぐに想像できました。このようなシンプルな仕掛けで、人と時計との新しい関係が生まれていることに感動しました。おめでとうございます。
入選
審査員総評
川上典李子 氏 コメント
思っていた以上に幅広い種類の作品を見ることができたことが驚きでもあり、おもしろいところでした。いま時間を知る方法はスマホや家電の時計機能など時計以外にもたくさんありますが、「時計」や「時間」というものとどう付き合うかということに対して、応募者のみなさんが普段から考えているんだなというのが見えてきたし、同時に「こうあってほしい!」というような願いもデザインに込められていて、このアワードは思った以上に可能性が広く、深いテーマなんだなというのを実感しました。
また、二次審査の際に、実際に動く模型を持参してのプレゼンテーションも複数あって、機構の細部まで考え、着想から着想を裏付ける技術面まで、それぞれが自分ができる範囲内で最大の準備をしてくれたことがよくわかりました。今後は商品化を目指してリズム時計さんとのやり取りが始まりますが、メーカーに頼りきりではなく、イメージする動きも各自がきちんと持っていることが見えてよかったです。提案内容の背景を大切に、リズム時計さんとの対話を続けてほしいと思います。
既存の製品にとらわれない柔軟な発想ではっとさせられることが多いのも、まさにアワードの醍醐味ですよね。今回残念ながら上位3賞に入らなかった作品もそれぞれに特色のある提案で、商品化を目指したアワードという意味で厳しい目をもって審査をしなくてはいけなかったけれど、時計のあり方の可能性は、ファイナリスト6作品をはじめ、多くの応募作品に見ることができたということも、お伝えしたいです。
小泉 誠 氏 コメント
応募作品それぞれの「時との関わり方」がおもしろくて、作品に触りたくなるものもあれば、じっと見つめていたくなるものなど、時計に関わる距離感みたいなものをみなさんが各々の生活を通してじっくり考えた跡が見えてきました。そしてプロダクトをデザインするのではなく、関係も一緒にデザインされているようで良かったですね。また、審査中に機能や性能というものに相反して、「情緒的」という言葉が出てきて、時計のような合理的な考えの世界からそういうキーワードが出てきたのはいいことだなと思うし、今回のアワードから広がっていけばいいなと思いました。
作品への手のかけ方や考えの密度の濃さでの違いはありましたね。上位3つの作品は、たとえば断面ひとつにしてもこの断面にした理由が見えるんですよ。大賞作品も「アイデアもの」に見えますが、彫り込んだ目盛りのディテールひとつとっても、そのディテールに対する「何でこの深さなのか?」など細かい一個一個の疑問にこだわり続けたところが見えてくるというか。質が高いというと簡単な言葉になってしまいますが、時間をかけて考え抜けたかどうかが結果に出たのかなと思います。
評価軸はたくさんありますが、あくまでもこのアワードは“プロダクトの製品開発である”ということを念頭においてほしいなと。製品化が難しいだろうっていう作品もあったんですが、それで無理だろうとアート寄りに振るのではなく、プロダクトを実現できるメーカーがいるというのは安心だし強いですよね。もちろんいくつかはどう商品化できるかリズム時計さんの頭を悩ませるわけですが、そんな作品を見た審査員として参加したリズム時計のお二人が楽しそうだったのが印象的でした(笑)。デザイナーだけのアワードではなく、メーカーの開発者たちの意識が変化したり、目が生き生きしているのがすごく良かったですね。
鈴野浩一 氏 コメント
たくさん応募がある中で、僕は建築家なので、単一のプロダクトとしては考えず、空間の中に置かれたときにどいういうシチュエーションやテイストに合うか?ということを意識して見ていました。今回の応募作品は、時計として時が読めるものか、時は読めなくても大きい時間の流れを感じられるものかのどちらかに大きく分かれていたかなと思います。そういう中で上位に残ったものは「売れる」かどうかという見方だけではなく、考え方を更新してくれそうな時計が選ばれたのかなと。
最終的に決定した上位3つは二次審査までに完成度を高めてこれたものが残ったのだと思います。完成度を高めやすいというのは、自分がやりたいことが明確だということでもあるので、それに向かって進めることができたんじゃないでしょうか。ほかのものは「もう少しこうしたらいいんじゃないか?もっとよくなるんじゃないか?」という項目が多く、上位3つはその項目が少なかったんだと思います。
入賞作品はすべて商品化される可能性があるということなので、リズム時計さんから「何をやりたいのか?」と聞かれたときに、自分の芯をしっかり持ちながらもより良くなる可能性をつぶさないようにフレキシブルに対応してほしいと思います。リズム時計さんが持つ経験値とノウハウや、いろんな人からの意見を取り入れながらも、自分のやりたい軸を失わないようにしてもらえたらと思いますし、そういう考えを持てばすべてに商品化の可能性があると思います。
主催者 コメント
このたびリズム時計としては初めてのデザインアワード開催にもかかわらず、多くの皆様に関心を持っていただき、予想を超える多数の作品応募をいただいたこと大変うれしく、また「時計」というものにまだまだ興味を持っていただけているということが大きな励みとなりました。
プロダクト部門は「あしたのRHYTHM(リズム)」をテーマに、人との関係性、場との関係性を紡ぐ、時計というプロダクトの意味・価値を向上させる、または再定義するようなクロックを多数提案いただきました。今まで私共が考えていた以上の“関わり”を目にし、単に「時刻を知るための機器」としての役割を超えた“クロックの立ち位置”を考える良い機会となりました。入選された作品については、今後商品化を検討し「あしたのRHYTHM」の具現化に努めてまいります。