結果発表
2016/12/05 10:02

SICF17 出展者募集《展示参加》

応募作品数:100組(出展数)
主催:株式会社ワコールアートセンター

グランプリ

お花畑
江頭 誠
お花畑
作品について
日本の文化とは、他国の文化を受容し、融合に融合を重ね淘汰され、独自に進化したものであると考える。
どこの家でも見かけた家庭臭漂う花柄の毛布を使って、洋式便所を制作する。日本独自のこの花柄毛布は、なぜか西洋のロココ調の花柄のデザインのものがほとんどだ。ここにも他国との融合を見ることができる。そして日本の洋式便所も他国からの文化なのだが、今や日本の洋式便所は、オリジナルの洋式便所のかたちを残しつつ、機能的にも衛生的にも独自に進化を重ね世界を代表する随一のものとなっている。今回、他国の文化が融合されたその毛布と洋式便所がさらに融合することによって、そこにまた新しい独自のかたちが生まれ、見たことのない空間を目撃することとなる。改めて日本の文化のかたちとは何なのかと問いかけると同時に、私は、受動的にもみえるその行為に日本の文化の強さを感じる。
受賞コメント
今回は、SICFに初めて出展し本当に沢山の方々に作品を見ていただき、様々な意見を頂き貴重な経験をさせていただきました。これからもっとこの様な場を作れる様、日々制作に励んでいきたいと思います。
審査コメント
毛布をテキスタイルとして捉え直すことで、これまで全く意識下に無かった興味深い事柄や、自己の記憶、ひいては日本の戦後の家庭風景や価値観までもが一気に蘇ってくる。毛布という日用品が“メディア”となり、見る人それぞれに物語が紡がれる、まさに人間賛歌とも言える作品である。(岡本美津子)

SICFのブースサイズ(狭さ)を最大限に活かして公の場所に私的空間であるトイレの個性を出現させるというアイデアと、戦後の日本で急速に一般化した毛布の柄(ロココ調の意図などが多く引用されたところに、戦後日本の西洋に対するコンプレックスなどを読み取ることができよう)に着目し、ソフトスカラプチャー(レリーフ)にするという手法が見事に合致した作品。(木村絵理子)

準グランプリ・オーディエンス賞

toki - BALLET # 1
後藤映則
toki - BALLET # 1
作品について
普段から当たり前に感じている時間。しかし、時間そのものを見ることはできないし、触ることもできません。よくよく考えてみると、かなり不思議で謎めいています。そうやって時間について考えていくと「変化」と強い関係で結ばれていることに気がつきました。それでは逆に変化の方を追っていけば時間の本質的な部分が見えてくるのではないか?といった疑問から本作品のシリーズは生まれています。今回出展した作品では、その時間の中にも存在するであろう美しさを炙り出すことに挑戦しています。変化(動き)が美しいのではなく、むしろそれを生み出す時間が美しいのではないかと。
受賞コメント
今やwebに作品をアップロードすれば世界中の人に見てもらえますが、やはり実空間で感想を直接いただくのは大切なことだと、改めて思いました。見てくださった方々、本当にありがとうございました。
審査コメント
まず美しく、完成度が高かったです。昔からあるゾーアトロープ的仕組と3Dプリンティングというテクニック。パッと見の既視感はあるのですが、次から次へと取り出してくれた他のカタチのパターンがあることに更なる面白みや可能性を感じました。こんなにいろいろ作れるんだ、思いつくんだと。フットワークの軽さがもっと伝わるといいと思いました。(金森 香)

とてもシンプルだけれど、いつまでも見ていられる気持ちの良い作品。3Dプリンタの骨組みに何か手仕事の要素が入ったり、スケールの大きな作品になったり、そうしたものも見てみたいなと思いました。(栗栖良依)

準グランプリ

私の山 あなたの山
高木あすか
私の山 あなたの山
作品について
山をイメージして作り、山の中に入って木洩れ日を感じてもらえる作品になっています。漆と糸を使用しているのですが、私の繋がりのある土地(島根、大阪、京都、愛知、東京、金沢)の綿糸を集め、編み込み、1つの私の山の形にしています。それを塗布物を強くし、耐久性のある漆で包む事で、その関係性や、人との繋がり、記憶などを長く大切にしていきたいという思いが込められています。私の中にあなたがいて、あなたの中に私がいます。この山は沢山の来場者を影で包み、迎えることが出来ました。皆様の心に触れる事が出来ていると幸いです。
受賞コメント
アートの力を信じて頑張ります。
審査コメント
美しいゆえに、技術の成熟度と作品の完成度が高く、空間への拡張を無限に感じられる作品でした。(張 熹)

漆を空間に展開するという点では新規性が高いと言える。綿糸を漆で包むことで、強靭さと美しさ、同時に漆芸には無い軽やかさを獲得している。大空間での展開と空間性と素材の醸す効果と必然性について探求していただきたい。(岡田 勉)

岡本美津子賞

REQUiEM
FUKUPOLY
REQUiEM
作品について
「枯れた盆栽を鎮魂・昇天させる」ことが作品のテーマです。
(1)枯れた盆栽を3Dスキャニング
(2)データ化した盆栽モデルに流体シミュレーションをかける
(3)シミュレーションにより自動的に流出した流体データをCGオブジェクト化
(4)3Dプリントにより実体化させる
(5)実物の枯れ盆栽とドッキング
以上が制作プロセスです。
流体プログラムによる形状と、生命の間の神秘性。制作者の意図を超えた自動造形から、何か感じ取っていただけたら幸いです。
受賞コメント
賞を頂きありがとうございます。VFX(映像特殊効果)の視点からアートを考えていこうと思っています。
審査コメント
自由な3DCGの映像世界にあえて“盆栽”という異次元なルールを持ち込むことで、制作者の想定外の映像を作り出すことに成功した。更にそれを3Dプリンターで固定化することで盆栽の持つエネルギーがまさに結晶化された作品に仕上がった。(岡本)

金森香賞

0 ( +   )
江藤友理子
0 ( +   )
作品について
とあるゴミ捨て場のファッションショーをテーマに制作しました。子どもの頃、新聞紙をバットとボールに野球をしてみたり、梱包のプチプチをひたすらつぶしてみたり、かわいいお菓子の包み紙を大切にしまっておいたり…そんな価値が0円のものが楽しく見える気持ちを思い出して0円(+  )を作りました。豊かな日本、雑踏に流される東京で、ものの価値がなくなるのは容易いことですが、価値をつけるということがいかに難しいかを感じ、何もない0のところに価値を見出す人びとの服を考えました。どんなものでも見方次第で180°考えが変わることがあったり、小さなことでも新しい発見をした時は喜びがあります。ほんの少しのアイデアと愛で毎日はもっと楽しく素晴らしいものになるのだと思います。デザインとアートの垣根を超えたみんながわくわくするような楽しいクリエイションをしていきたいです。
受賞コメント
作品を公募に出すのは初めてでしたが、とても楽しく制作することができました。これまで学んできたこと考えてきたことが少しずつ表現できるようになり、今回評価していただけたことをとても嬉しく思います。応援してくれた方や協力してくれた方に本当に感謝したいです。
審査コメント
身の周りにある0円のものを(編んで)服にするというシンプルなコンセプトがきちんとブレずにカタチになっていること。またキュートであったこと。テキスタイルのデティールから立ちのぼるフェミニンな可愛さがあり、かつ友達かもしれませんが、これまた身の周りにいたんだろう日本人の男女という風情なんだか、街の風景になじみつつ対立しているそのファッションぽさが良かった。こんなに着れなさそうなのに、(素材はかなりゴミなのに)ファッションぽいということが切なくもありました。アートとしてはコンセプトの強度が足りない気もするので、評価されにくいと思うけど、ファッションかと言われると、それ洗えるの?って…。なので賞という形に!(金森)

木村絵理子賞

Nighty Night
橋本美和子
Nighty Night
作品について
一日のうちで一番プライベートな時間は、布団に入って眠る時間だと思う。人前で振る舞いを気にすることや、効率的な時間の使い方。眠る時間だけはそんな意識から切り離されて、ただ動物のように一人で、休息をとることが出来る。女友達の起き抜けのベッドを見て、素顔を見たような気持ちになったことから、眠りの時間を扱いたいと考えました。本作では友人達の眠っていた布団を絵に描き、また、眠りについてのインタビューを行い、その文章も1つのポートレイトとして展示しました。表向きのポートレイトと違った、夜の時間を感じてもらえたらと思います。
受賞コメント
SICFへの応募を決めたのは、様々なジャンルのクリエイターの作品が出展される中、来場者の方々に自分の作品はどのように写るのか、実践したいと思った為でした。出展中は沢山の方との会話から、多くの気づきを得られました。そして展示でくたくたになった後の受賞の発表は、これから活動を続けて行くことに、大きな励ましを与えてくれました。ありがとうございました。
審査コメント
現代の人間にとって最もパーソナルな空間である寝床に着目しつつ、そこに取材対象とのコミュニケーションを通じて入り込んでいくというプロセスに面白さを感じます。一見、艶かしさを感じさせる絵画の表層的なイメージと女性同士の会話がベースとなっているという実際の制作プロセスとのギャップにイメージが持つ本質的な危うさが表れているように感じます。(木村)

栗栖良依賞

BORDER
MIWAKAKUTA
BORDER
作品について
「ルールのないジュエリー。」カテゴライズされ、進む毎日。人が生み出し続ける溢れ行くモノ達。山積みにならないように整理・分類していくと、見ることはできない「枠」や「縁(ふち)」という箱に自然と収まっていく。サイズのある「枠」とサイズのない「ふち」。生活の間に存在する「ふち」を増やしてみたい、何かを繋げる希望をもって。そのために、まずはそこにある自分のボーダー(境界)を壊して歩みよる。ルールのない二次元の物体に存在するボーダーと絡み合うことで身体と溶け合い、それぞれ異なる三次元の形に変化していくジュエリー。
受賞コメント
あらためて、自身がどう向き合いどう歩むかを問う貴重な時間となりました。普段ダイレクトに聞くことのできない、生のお声や反応、そして審査員の方々からの言葉は私自身とても新鮮な感覚で、とても嬉しいものでした。これを糧に国内外問わず制作活動を続けていきたいと思っております。ありがとうございました。
審査コメント
コンテンポラリージュエリーという新たな世界を見せてくれました。MIWAKAKUTAさんの作品を通じて、身体と向き合ってみたい。ものすごくミニマルな演劇やスペクタル感あふれるサーカスなど、創造力が刺激される…。無限の可能性を感じました。これを機に日本でもどんどん活動の場をひろげていってほしいアーティストです。(栗栖)

張熹賞

植松京子
作品について(一部抜粋)
"生きていれば、“幸せ”と対極にあるものは必ず存在してしまう。しかし、自身の底から湧き上がるものが、プラスの要素を引っぱり出し、生きていくためのエネルギーをつくり、前へ、将来へ、進んでいけるはずだ。
「本来いきものが持つ、純粋な生命力を描きたい」
わたしの絵は、抽象と具象の間で、“独自の生命体”が存在している。なにか動物のようなときもあれば、幼い少女のようなときもある。彼らは、全力で、ありのままの想いを涙として外に思いきり流し出し、パワーを放ち、命を存分に全うしている。ひとつの命の可能性は果てしなく大きい。わたしは理想でなく、現実を描いている。日本は平和と言われるが、昨今の日本が抱えるメンタル問題は実に深刻である。あちこちで勃発している悲惨なニュースを掘っていくと、たどり着くのは人間の精神の闇だ。わたしの絵を観て、明日からがんばれると言って涙を流して帰っていった女性がいた。
…"
受賞コメント
美大を出ずに独学で芸術の世界を歩んでいく挑戦の日々の中、支えてくださった方々に、受賞の報告ができたことが一番の喜びです。これからも変わらず、植松京子だからこそ描けるものを大切にしていきます。
審査コメント
まだ未熟さが伝わってきますが、その素人っぽさが逆に大胆さをもたらしているように感じ取れます。ストレートに心を動かせる力があります。今後は日本だけではなく、中国さらに世界にでも大きく成長できると期待しています。(張)

スパイラル奨励賞

instinctively
山内沙也果
instinctively
作品について
日頃、セルフィに馴れている人は「自分の得意な角度」を持っている。可愛く見せれる角度、コンプレックスを隠せる角度。そんな角度よりも本能的に・直感的に魅せる不意打ちの角度の方が人間的で最高に面白い。
受賞コメント
初めてのチャレンジで想定外の失敗がありましたが、とても楽しい2日間で良い経験が出来ました。これからの作品制作の励みとして、楽しい制作を続けていきます。
審査コメント
今や世界はすみずみまで監視カメラで網羅されている。本作品はこうした社会の状況を反映した表現となっている。一方、ローテクなマシンによって構成され、動きに伴い生じるノイズ、ぎくしゃくした動きから、むしろ、温かみやおかしみを感じさせ、人間そのものへのシニカルな眼差しも感じられる。しかしながら会期中に故障するなど、技術的に課題も多く今後に期待したい。(岡田)
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