シェル美術賞 2020
応募作品数:846点
受賞作品数:9点(入選を除く)
主催:出光興産株式会社(トレードネーム:出光昭和シェル)
グランプリ
Story - Where are we going?
今西真也
グランプリ「Story - Where are we going?」今西真也
- 作品コメント
- 視点と距離、素材とイメージとの関係性、「見えるものと見えないもの」を探りながら、私たちが共通認識している事柄の不確かさを絵画で提示できないかと制作を行ってきた。
新型コロナが社会に蔓延し、人が消えた街角を私は眺めていた。すると、今まで気に掛けなかった宙高く飛び行く鳥たちが目に留まり、その羽搏く姿が私たちの行き先を知っているかのように見え、ふと古事記に登場する一羽の烏を思い出した。
木村絵理子 審査員賞
- 作品コメント
- 私のいるところに他人はいられないとすれば、私が今、見ているものは他人には見えない、言い換えれば今、他人が見えているものは私には見えないということ。
ならば、隣にいる人と見つめているものが一緒だとどうしたら言えるのだろう。
そんなことが無限に続いている。
私たちは何でお互いのことや、目の前に起きることを保証しているのだろう。
もしすべてが完璧に記録されていて、再現されることがあったとして、理解できるのだろうか。
角 奈緒子 審査員賞
- 作品コメント
- 「シンプル・スマート・エフェクティブ」をキーワードにいつも制作を行っています。ビルなどのたてものをモチーフに選ぶことが多いですが、これは無機質で直線的にも関わらず、どこか情緒的なところが自分の作品に適していると感じるからです。
今回の作品は、たてものと光から生まれる形や色を表現したくて制作しました。同時に目の前にある物質的な存在感や現実感を表現できるよう無駄を省き、質感にこだわりました。
中井康之 審査員賞
- 作品コメント
- 死とは、生きるとは、人間とは。冷たくなった父は私に問いかけた。
生きた細胞、崩壊する細胞。化学反応。細菌の増殖、自己融解。死後数分はまだ声も聞こえるという。
全く足りない。全くわからなかった。
父はつい数時間前まで何かを考え感じていたではないか。私達と同じだったではないか。
身体は、心は、父はいったい何処へ行ってしまったのか?
みんなの声は届いているのだろうか?
“世界はいったい何で出来ているか”
その先に父は居る。
鷲田めるろ 審査員賞
- 作品コメント
- 私は自分自身がここにあるということの実感を得るために絵画を制作しています。
モチーフは自分の顔を描いていますが、顔を描くときの表情はそこにただあることの実感を私自身が強く確認できるように描いています。
また、ここは私の一つの逃げ場でもあります。私は自身の逃げ場に籠りますが、そうすることでより一層生きること、存在することの実感を得られることができるのです。
大庭大介 審査員賞
- 作品コメント
- 土地には特有の神話があり、その神話は現地の住民の風景に関する表象として現れます。
このような表象はある特定の土地から生まれたにもかかわらず、様々な文化圏に共通する要素を含みます。
人類に共通の普遍的な要素からなる風景とはどのようなものなのかを考えることで、我々の存在の理由および、他者との相互理解の可能性を提示できるのではないかと期待しています。
学生特別賞
- 作品コメント
- 三年前に日本に来たばかりで、とても楽しかった、2020年に東京オリンピックが開催されるから。北京オリンピックの時はテレビでしか見たことがない。これをきっかけに、スポーツを題材にした作品を描いてみたい。純色の表現方式に対して、色彩の三原色だけで一枚の作品を表現したいと考え方がある。この考えは長い間私の頭の中で考えた。今、やっと作品の中で実現した。また、オリンピックが無事に行われるように。
- 作品コメント
- 「親密さ」ということが自分の作品のテーマにあると思っています。その言葉に含まれるような美しい関係や穏やかな生活をモチーフに選んでいます。ただ私自身がそのような環境を実際に目にしているわけではなく、むしろ生きていて不和を感じるときのほうが多いです。穏やかなものを疑う気持ちもあります。本当に二人は良好な関係なのか。反した感情が画面に共在するように描いています。
オーディエンス賞
- 受賞コメント
- この度はシェル美術賞展において、私の作品をたくさんの方に観ていただくことができとても嬉しく思っています。
さらにオーディエンス賞も賜り大変光栄です。本作品も構想から完成まで多くの時間を費やしました。
停滞していた間でさえも制作においては大切なプロセスであったと考えています。
今回の受賞を励みとし、今後とも私なりの表現を追求していきたいと思います。
- 作品コメント
- 普段見ている何気ないものや光景の中にもそれぞれ形や色、組み合わせがあり、それらの集まりは複雑で面白いものを形成しています。
それらを切り取り画面に置いていくことは、単純化された線や図形の組み合わせやそれらの配置を考えることと同じ作業であり、結果出来上がった絵は具象的であるとしても、その区別を超えた新たな見え方を期待しています。
それぞれのパーツや集まりを、無段階の奥行きではなくレイヤーごとに分け、図形や線を重ねるように配置していく感覚で画面を構成することで、抽象表現へのアプローチを狙っています。