第5回 フェーズフリーアワード 2025
主催:一般社団法人フェーズフリー協会
受賞作品数:12点(事業部門:8点/アイデア部門:4点)(入選を除く)
※ここでは、各部門の上位3点をご紹介します
事業部門
Gold
屋内位置情報システム「B Catch Now」
ニッタン株式会社
- 作品コメント
- 建物内の人や火災、防災設備の場所を「見える化」、“より安全に” “より早く” 避難するための情報を提供し、災害時の初動対応を支援するとともに、平時に利用できる機能も多数装備することで、災害時と平時の境目をなくして、どんな時でも活躍するサービスです。
- 審査コメント
- 一般的な屋内位置情報システムと比較して、人の位置を特定するためのビーコン機器を火災感知器と一緒に設置していることが特徴である。消防設備点検と同時にシステムの点検を実施するため、信頼性を担保できることが「有効性」を高めている。また、情報の可視化がコミュニケーションの円滑化に寄与し、スマートフォンアプリやPCでどこにいても簡単に情報を取得でき、日常時も非常時もリアルタイムの状況を確認できることが「汎用性」の評価を高めている。
- 受賞コメント
- 弊社は創業以来70年以上にわたり、防災設備の開発から製造、販売、施工、維持管理に至るまでを一貫して提供してきた。B Catch Nowは「使われないことが望ましい」とされる防災設備を日常でも役立てたいという想いから、2014年頃に着想したものである。
今回の受賞は、普段から活用されることが最も確かな維持管理であり、防災訓練にもなるという想いをご評価頂いた結果と受け止めており、大変光栄である。この受賞を励みに、培ってきた防災メーカーとしてのノウハウを生かし、今後も真に実効性のある防災サービスの普及に挑み続けたい。
Silver
パーソナルブース origami+work
株式会社UACJ
- 作品コメント
- アルミ製の折りたたみ可能なパーソナルブース。軽量で、足元にキャスターがついており、平らな室内であればユーザが自分自身で設置、折りたたんで移設、収納ができます。工具や職人も不要。製品高さは小さめの210cmで、天井が低い場所にも設置できます。折りたためばエレベータにも積載、ドアも通過します。
- 審査コメント
- 一般的なワークブースと比較して、軽量でキャスター付き、折りたたんでエレベータでも運搬できる点が特徴である。さらに、工具を使わず自分で設置・収納できることが「有効性」の高い評価につながっている。また、オフィスや学校、公共施設、地域イベントなど、使用できる場面が多く、避難所での簡易的な防音環境の構築やプライバシーの確保、緊急時のさまざまな状況への対応に役立つことにより、「汎用性」の評価が高くなっている。
- 受賞コメント
- 弊社はアルミニウムの総合メーカーであり、近年は「素材+α」の価値創造が活発だ。当製品「origami+work」もアルミニウムの「軽くて丈夫」、「熱伝導率が高い」といった素材の特長を生かし、職人も工具も不要で設置、移設、収納のできるパーソナルブースを開発した。短期使用するニーズにも応えられるため、日常時にオフィスや自治体への実績があるだけではなく、非常時も避難生活を続ける市民のプライバシー確保のために避難所へ設置された。製品サイズや機能を検討し、簡易調剤室等にも活用しやすいよう、今後も更なる開発を続けたい。
Bronze
ナトリウムイオンモバイルバッテリー
エレコム株式会社
- 作品コメント
- 火災事故や電池製造時の環境破壊、労働問題を低減した世界初のナトリウムイオンモバイルバッテリーです。高い安全性と約5000回の高寿命、温度耐性も優れています。筐体に再生プラスチックを使用し、パッケージもプラスチックレスで環境負荷を低減しています。
- 審査コメント
- 一般的なモバイルバッテリーと比較して、リチウムイオンの代わりにナトリウムイオンを使用しているため、電池内の発熱があっても熱暴走や発火が発生しにくい安全性の高い電池であることから、「有効性」の評価を高めている。5000回充電可能で長寿命、安全設計に加え、低温・高温への温度耐性が高いことから、「汎用性」の評価を高めている。接続機器を自動で見分けて最適な出力で最速に充電でき、イヤホンなどの充電電流の小さい機器にも最適な電流で充電できる。
- 受賞コメント
- リチウムイオン電池を使った電子機器やモバイルバッテリーの普及により、機器の発火事故や、電池素材採取時の環境汚染・人権侵害といった社会問題が深刻化している。こうした課題に対応するため、多くのモバイルバッテリーを販売するメーカーとして、世界で初めてナトリウムイオン電池をモバイルバッテリーに採用することで、安全かつ、環境負荷の低減を実現している。また高温や低温にも強いため、日常時はもちろん非常時の外気温に関係なく機器へ充電することで情報が途絶えない安心感を与えてくれる。
アイデア部門
Gold
- 作品コメント
- 災害発生時、3日分の荷物を収納でき避難時には両手が空くことを重視しました。また、簡易ベッドのクッション性は乳幼児がSIDSを引き起こさないようやや硬めとし、日常時にも使用できる災害避難を想定したマザーズバッグを制作しました。
- 審査コメント
- 一般的なバックパックと比較して、巾着のように大きく口を広げてたくさんの荷物を収納でき、中身を取り出し床に置いて展開すると乳幼児のベッドとして使用できる。こうした子育て中の便利な機能が「有効性」の評価を高めている。背負って移動する際には、抱っこ紐との併用も可能で、付属のライトによりおむつ替えや授乳もしやすいことから、日常の外出先やアウトドア、非常時の移動や避難所生活でも活用できることから、「汎用性」の評価が高かった。
- 受賞コメント
- 「マザーズバッグ M+」は、いつもは大容量で赤ちゃんのお昼寝ベッドに、もしもは赤ちゃんとの避難所生活に便利なマザーズバッグ。予測不可能な状況において、日常使いすることでもしもの時もすぐに持ち出すことができ、親御さんや赤ちゃんが少しでも安心して過ごせるものとすることで、不安の軽減にもつながる。帝塚山大学 居住空間デザイン学科での卒業制作。
Silver
車をまとう防災拠点
野中彩花(九州大学 工学部 建築学科)
- 作品コメント
- この施設の四つの庭は、普段はキッチンカーや移動図書車が訪れ、車と室内空間が一体化した憩いの場となる。非常時は緊急車両や設備車、配給車が訪れ、避難してきた人に料理や物資を提供する避難所内の集会所となる。一般的に切り離して考えられる建物と車のつながりを求め、建物の中に車が入り込める平面形状としている。
- 審査コメント
- 一般的なコミュニティセンターと比較して、車両と建物がつながることにより、必要な機能やサービスが拡張され、食事、図書、トイレ、電源などを提供できるため、「有効性」の評価を大きく高めている。ウッドデッキのオープンなスペースは、日常時にカフェ、ブックテラス、茶室として利用者を増やして賑わいを生み出し、非常時は充電拠点、衛生拠点、医療拠点、配給拠点として活用されるため、利用者、タイミング、対応課題などの面で「汎用性」を高めている。
- 受賞コメント
- 避難所の屋外に給水車など多くの車が集結している光景から、避難所としてのコミュニティセンターの在り方を追求した。まず、厳しい屋外の気候や環境における避難者の負担を減らすために車と建物を一体化させた。そして、低費用で災害時にのみ必要な機能を付与する手法を考案した。その機能拡張の自由度の高さにおいてフェーズフリーである。本設計では、学部生活で探求してきた「車と建築の新しい関係」や、かねてより関心がある「防災」を深く探求できた。今回の受賞を励みに今後もフェーズフリーの概念に基づき、研究に取り組みたい。
Bronze
ファッション×ファニチャー Furnishion-Air
265Lab 田中聡一郎、阿部真歩、島ノ江史菜
- 作品コメント
- エコノミークラス症候群は、避難所での長時間の同じ姿勢が血流を澱ませ血栓を招き、息苦しさや突然死の原因となるものです。本提案は、空気でふくらますことで、下肢の圧迫を避け体を避難所の冷たい床から遠ざける家具に変形するウェアやバッグ、日常の機能やファッション性と非常時の快適性を合わせ持つ命を守るグッズです。
- 審査コメント
- 一般的なコートやバッグと比較して、クッションやベルトなどの身体支持機能を付加したことで、アウトドア生活や避難所生活での快適性を高めるため、「有効性」で評価された。スポーツ観戦やキャンプなどで広く活用でき、付属のベルトをバックルで調節して身長や体格に合わせることができるため、「汎用性」を高めている。普段身につけているコートやバッグに機能を加え、日常時と非常時の価値をファッションに昇華している点が高く評価できる。
- 受賞コメント
- 普段身につけるコートやバッグが家具になる「Furnishion-Air」は、スポーツ観戦やアウトドアで活用できると同時に、避難生活での快適性を高めるフェーズフリーな提案である。付属のベルトは家具化の際に用いるだけでなく、日常ではファッションの一部として機能する点も特徴である。本作の着想は、無重力での家具を再発明する過程で「安定した姿勢が安心をもたらす」と気づいたことから生まれた。今後は社会に実装し、誰もが安心して暮らせる未来の実現に貢献していきたい。