本作は、プログラミング言語を使用した、コンセプチュアルであると同時に視覚的な作品で、額装した6枚のシートで構成される。作者は、過去30年間に学んださまざまなプログラミングの言語やソフトウェアを用いて、50段階の灰色のグラデーションでできたまったく同じ画像を制作した。タイトルはオンライン小説として発表され、後にベストセラーとなった『Fifty Shades of Grey』という大衆小説を参照している。かつて広く普及していた数々のソフトウェア・ツールは、現在ではそのほとんどが使用されなくなっている。コンピュータ産業においてもデジタルアートにおいても、前時代的になることへの恐れはつねにつきまとう。作者は、それらのプログラミング言語の一つひとつと旧友のように接し、それを最新の機械のなかに取り込み、新しい外貌やエネルギーをもたせて再活性化した。これまでに開発された異なるテクノロジーが盛衰してきたさまを可視化する作品である。
一軒の家で、ある日を境に戻らなくなった主人(Master)の帰宅を待つ犬のPopiと猿のHuhuuを描いた短編アニメーション。Huhuuは最初、檻に入れられていたが、そこから出ることに成功すると2匹の共同生活が始まる。Popiは、実際はHuhuu以上に賢く強いのだが、従順かつ恭順な性格の持ち主であることから、Huhuuの気まぐれの前に屈服してしまう。そのHuhuuは愚かなまでに自由奔放な性格で、部屋の中を好き放題に散らかしてしまう。本作の原作は、エストニアの作家フリーデベルト・トゥクラスの短編小説『Popi and Huhuu』(1914)である。コマ撮りによるリアルなパペット・アニメーションである本作によって、作者は権力の恐ろしさと愚かさを問いかけ、権力とは何かを究明しようと試みている。われわれの主人とはどのような者か。もしその主人の性質や行動がHuhuuと似ているとしたら、その結果はどのようになるだろうか。動物らしい「動き」が巧みに表現されているだけでなく、強いコンセプトが描かれた作品。