結果発表
2016/11/28 10:00

第3回 暮らしの小説大賞

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受賞作品数:2点
主催:産業編集センター出版部

大賞

和田真希
受賞コメント(一部抜粋)
暮らしと小説には、面白いつながりがあります。
書けば書くほど、秋の紅葉が目のなかに映え、脱穀したばかりのお米は美味しく、薪割りをする斧を持つ手は強く、いたずらを企てるこどもの目がきょろきょろと動くのが愛らしく感じられるようになりました。全力で書くことは、全力で暮らすことと、同じだったのです。
このたびは、「暮らしの小説大賞」を授けてくださり真にありがとうございます。私のような農家のおばちゃんには身に余る栄誉と感じ、喜び半分、畏れ半分です。
私は“神奈川県最後の秘境”と謳われる丹沢の、限界集落に住んでいます。集落の標高は450メートルほどで、市街地から自宅へ通じる山道は、大風が吹けば岩が落ちてきて、大雨が降れば崩落します。その山奥で、畑の土と、土間の煤と、野山の雑草の匂いにまみれながら執筆しました。

作品概要(一部抜粋)
ごく普通の核家族で育ったものの、予期せぬうちに家族から孤立した絵梨は、高校卒業をきっかけに小田原の家を出る。東京での自由な生活は数年続いたが、社会人になってしばらくした頃、食事が喉を通らなくなっていった。徐々にあらわれてきた、人から認めてほしいという強い欲求は、絵梨を精神的にも肉体的にも追いつめていく。仕事、家族とのこと、友達付き合い……自分を取り巻くすべてのことに絶望した。東京での生活に疲れきった絵梨は、小田原に戻ることに。家庭菜園に興味を持ち、手順も分からぬままに種をまき、慣れない鍬を握った。
あるとき、地元新聞の記事に目が止まった。丹沢地方の山奥を開墾し、農耕や養鶏などを「楽しいから」という理由で行なっている若者の記事だった。農業の手ほどきを受けることを期待し、絵梨は若者を訪れる。そしてその日から、山奥での農的暮らしが始まった。
人間はおどろくほど不完全だ、だから暮らしは助け合える。

出版社特別賞

小林栗奈
受賞コメント(一部抜粋)
このたびは第3回暮らしの小説大賞「出版社特別賞」を、ありがとうございます。おまけのような、間隙を縫うような、ちょっと不思議な賞ですね。最初にお話を伺った時は、全力で喜んでいいのか迷う気持ちがありました。「また」1番になれなかったな、と。根がナマケモノなので「できる範囲で頑張ろう」をモットーにフワフワ生きている私ですが、書くことだけは一味違います(自分では良くわからないけれど、書いている時や小説の話をしている時は、目が煌いていると言われることが)。
努力ではないのです。損得や駆け引きは考えず、心を尽くす……ちょっと恋に似ています。そんな風に心を捧げた「書くこと」でも、私の定位置はいつも2番以下でした。上手い人は沢山いる、力が足りないから仕方ない。そう言い聞かせながらも、ずっと自分に何が足りないのか考えてきました。薄々、足りないのは「愛」じゃないかと気づいているのですが、それはまた別の話として。
作品概要
利き蜜師の卵、12歳のまゆが暮らす平和な村に、不穏なものが忍び寄っていた。奇病トコネムリ、そして獰猛な銀色の蜂。師匠の仙道は、かつて封じた魔物が目覚める気配を感じていた。二人は仙道の旧友カスミから利き蜜の依頼を受けた。尽きることがない不思議な蜂蜜の壷があると言うのだ。
カスミとまゆは銀蜂に襲われる。まゆの力によって時空を越えた先は、カスミの過去世だった。そこはまた仙道の過去でもあった。二人はかつて、同じ学び舎で過ごした。銀蜂と呼ばれる魔物と闘い、仙道は不死の、カスミは孤独の呪いを受けたのだ。
仙道は、蜜の世界からカスミとまゆと救い出すために、長く封印していた技を使い世界の扉を開けようとする。まゆは、尽きぬ蜂蜜がカスミの祖母が残した枯れない愛の証だと気づく。それは呪いを打ち破る力となった。
銀蜂は去り、世界にはつかの間の平和が戻った。まゆもまた、利き蜜師になる為に一歩を踏み出すのだった。
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