結果発表
2018/09/10 13:30

飛騨の家具®アワード 家具デザインコンテスト 2018

応募作品数:248点
受賞作品数:6点
主催:協同組合飛騨木工連合会

最優秀賞

By
廣瀬 雪(東北芸術工科大学)
By
コンセプト「ふたりが自然と寄り添うかたち」
親しいふたりが腰に手をまわすように、相手を受け入れるPC チェア。一緒に笑ったり、感動したり、驚いたり、ふたりのあたたかい時間に寄り添う椅子。
仕上げには、手がかかるけど、愛着が増す、お手入れをしながら長く使うことで、ふたりの関係のように味わい深くなっていく亜麻仁油を使用した。

優秀賞

THE JAPAN CHAIR
熊谷有太郎
THE JAPAN CHAIR
コンセプト
森に生かされ、森を活かしてきた木匠。
その精神は森への感謝を厭わず、人々の生活に寄り添ったものづくりへの探究心に満ち、古くから脈々と日本人に受け継がれてきたものであります。日本建築における寺社仏閣からも感じられる神聖な感覚はまさにその精神に通づるものがあると革新しています。
「THE JAPAN CHAIR」はその精神を体現することを試みた、日本の椅子です。現代のライフスタイルに沿った、和室・洋室双方で存在感を示します。
Tuo Bench
廣瀬 雪(東北芸術工科大学)
Tuo Bench
シーンイメージ
スッキリとしたフレーム構造で、どんなインテリアにも馴染みやすい。座面の上をフレームが通り、人を囲う形状により「自分だけの空間」を強調する。
普段は何気なくこなしてしまっている、お風呂上がりの動作をTuo Bench に座って行うことで、自分を見つめ、リフレッシュする時間を過ごすことが出来る。
AURORA アウロラ
下里修平
AURORA アウロラ
コンセプト
緩やかに流れるフレームが特徴のハイバックチェアです。側面に伸びたフレームにも体を倒すことができるので、姿勢を変えて座ることができます。側面のスポークの角度は背に比べ開いているので、座り心地が変わります。またシンプルな形状ではありますが、スポーク部材のねじれ、座面部の三次曲面など職人の技が光る椅子でもあります。
左右対象に並べて二人掛けのラウンジチェアとして、レストランでは間を仕切る効果もある椅子として、様々なシーン展開が可能です。

奨励賞

RAMIFY
熊谷有太郎
RAMIFY
コンセプト
RAMIFY(ラミファイ)は分岐の意で、曲げ加工を施したデスクライトです。
加工プロセスを意識し、飛騨の加工技術の高さをディティールで魅せる事を狙いました。
クランプベースの円柱に曲げ木部分を差し込むだけで自立する構造で、180度回転が可能です。
サイドテーブルやワーキングスペース等での使用を想定しています。

特別奨励賞

V-01 Stacking chair
金木喜之
V-01 Stacking chair
コンセプト
3本脚のスタッキングチェアです。全体に脚を細くして軽快にするため、脚部には左右に貫が入ります。また、左右の貫の高さをずらして、前脚との接合部で貫が重なり強度を下げないように、左右非対称のデザインを行いました。
一見、貫が積み重ねの邪魔をしそうですが、積み重ね時に位置がずれるので問題はありません。
脚部等の主材はブナの無垢材、座はコード編みで背はブナの成型材が基本になります。
主催者より

総評

飛騨木工連合会
3回目となる今回は国内外から248点のご応募をいただきました。その内訳は国内から212点、海外16カ国から36点です。前回と比較すると総数は半減しています。原因は今回から設定した応募費用にあるのだろうと考えています。

できるだけ多くの方に飛騨の家具について知って参加いただきたいという思いで、前回までは応募費を設定していませんでした。一方、安易と考えざるを得ない提案も相当数あり、主催者としては数よりも質を高める方向に舵を切ることとし、応募者の皆様にご負担をお願いする判断といたしました。結果、期待通りの作品が集まったというのが審査員、外部アドバイザー全員一致した認識です。

学生を含む若い世代の皆様の参加が多かったことは変わりません。応募条件が変わりましたので前回までとの数字の比較はできませんが、新たなスタート地点として今回の応募には満足しています。

結果、今回の審査はこれまで以上に激戦となりました。前述したように作品全体のレベルが上がったことに加え、回を重ねたことで審査員の本コンテストへの認識も深まり、審査の議論に厚みがでてきたことも一因でしょう。

前回出すことができなかった最優秀賞を出せたことは本当に喜ばしいことです。しかも学生の方からの提案であり文字通り新たな世代との出会いを果たすことができました。また結果としてダブル受賞が2名生まれました。審査は応募者の個人情報を排除して行いますので、まさに実力の賜物でしょう。

最優秀賞とした「By」は、現代的なライフスタイルを反映した着眼点、それを受けた新しい家具のあり方の提案、そしてネーミングやプレゼンテーションのまとめ方を含めた総合力を高く評価しました。構造や強度というハードルはあるものの、製品化に向けたチャレンジ意欲を掻き立てる作品でした。

優秀賞の「THE JAPAN CHAIR」は、数々の名作椅子とは異なる独自の日本的な美しさを放ち、一次審査段階から注目されており最優秀を争いました。「AURORA」は背もたれに変化を付けることで2種類の身体の受け止め方を提供する安楽椅子で、複数を組み合わせることもできる可能性が評価されました。「Tuo Bench」は洗面スペースに求められる機能を盛り込んだ複合的な家具の提案で、審査後に応募者が「By」と同じと分かり驚きの声があがりました。

奨励賞として選出した「RAMIFY」は曲木を活用したシンプルな照明の姿が評価されました。こちらは優秀賞「THE JAPAN CHAIR」と同じ応募者によるものです。3本脚の意欲的な形状の椅子「V-01 Stacking chair」は作者の年齢から奨励賞ではなく特別賞として授賞させていただくこととしました。

石の上にも3年と申しますが、3回目にして本コンテストの個性、あり方が見えてきたようにも思います。応募作品にこめられた皆様の思いを受けとめ、入賞した各作品についての製品化を検討し、世の中に送り出していく努力を続けてまいります。今後も改善を積み重ねて、このコンテストがいつか国内外のクリエイターの登竜門となり、飛騨が家具づくりの一大聖地になることを目指して、努力してまいりたいと考えております。

最後になりましたが、ご応募いただいた皆さま、外部アドバイザーの皆様、取材いただいた報道の皆様、関わっていただいた皆様へ御礼申し上げます。ありがとうございました。
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