結果発表
2017/09/07 10:00

CREATIVE HACK AWARD 2016

応募作品数:424点
受賞作品数:11点
主催:WIRED(コンデナスト・ジャパン)

グランプリ

鈴木よしはる
佐々木遊太(ささき製作所)
作品コメント(一部抜粋)
例えば位牌。木と塗料、刻み込まれた難しい漢字で構成されるそれ単体には、命はありません。しかし、位牌に魂が込められていることを知っている私たちは、それを無下には扱えませんし、故人の記憶とともに、ほのかに命を感じているかもしれません。
このように、日々の暮らしでよく目をこらしてみれば、「ほのかに命を感じるもの」はたくさんあります。「鈴木よしはる」は、廃棄されたポートレートに映像をモンタージュすることで、それが持つほのかな命をあらためて燃え上がらせ、メディア化し、見る人のなかに物語を生成する試みです。
アトリエ裏庭の倉庫に、無造作に放り出されたポートレートの発見。静止したグラフィックに映像をモンタージュすると、新たな意味が生まれることへの気付き。同じ建物の店子同士である、肖像のご本人の了承と、初投影による「鈴木よしはる」の芽生え。
審査コメント
審査員の一人、クラウディア(・クリストヴァン)はこの作品が大嫌いで(笑)。ここまで人の何かを逆なでする何があるという面白さがある気がします。一応受賞の条件があって、モデルの男性にもう一度選挙に出てもらい、「選挙をハック」してもらうという約束のうえでグランプリです(笑)。(若林 恵)

本当にもめたのですが、作品だけだとプロジェクションですが、選挙のハックなのだと思ったら価値があると考えました。三つお願いがあります。一つめは、なんでこれがグランプリなのかと聞かれたときに説明できるようにすること。二つめは、モントリオールでこれが何なのかを説明できるようにすること。三つめは、ヒラリー・クリントンでもつくってほしいということ(笑)。これをお願いします。(佐々木康晴)

準グランプリ

TWISTSTEP/Pa’s Lam System
ノガミカツキ、持田寛太、でんすけ28号
作品コメント
パズラムシステムはネットレーベルというインターネット上で活動するトラックメーカーだ。情報過多のインターネットから雑多にサンプリングされ詰め込まれた様は、正体不明の彼らが都市社会を侵食していくようだ。彼らは人々を狂信的に導き匿名のNPC状態にしてネオトーキョーをつくりあげていく。
審査コメント
一見とてもノイジーで、複雑な構成になっているのですが、音声と映像に落とし込むための技術の取捨選択は、デジタル・アナログ問わず非常によくできています。また、いかにコンセプトを映像化するかということを、細部にあたってまで綿密に構成されているということがわかったので素晴らしかったです。映像作家としてのプライドや真剣さをひしひしと感じました。モントリオールに行って、取捨選択の幅を広げてほしいです。(笠島久嗣)

審査員でグランプリと準グランプリについては相当もめました。この作品の魅力を一言で言うのは難しいのですが、すごい熱量を感じます。何をハックしているのかといわれると、何かとてもハックしたいものが作品の向こう側にあって、テクノロジーではない大きいものを感じました。前作も見ていたのですが、その流れのなかで、この先にもっとすごいものが来そうだぞ、という期待がありました。(水口哲也)

グラフィック部門賞

贅沢な時間
加藤正臣
贅沢な時間
作品コメント(一部抜粋)
私は日本の美しい風景や文化風俗に魅力を感じ、それらの中からモチーフを選び絵を描いている。その絵の中には主役となるモチーフと、脇役のモチーフがある。その組み合わせを考えることで、主役の魅力をより一層引き出し、絵全体の魅力や面白さが作られるのだと思う。組み合わせと言っても色々あるが、中でも「対比」の組み合わせが面白い。
応募作品「贅沢な時間」。モチーフは富士山と女子高生。富士山といえば日本の美しい伝統的風景であり、昔からどーんとそびえ立つ圧倒的な存在。女子高生といえば、現代日本の文化風俗を象徴するアイコンで、今を若々しく生きている存在。この相反する要素を持つ組み合わせは「伝統と現代」という対比である。
審査コメント
プレゼンを聞いて見方が変わるという話がありましたが、これもその一つです。「日常をハックせよ」をグラフィックで表現するのは難しいです。わたしたちは応募された1作品だけを見ていたのですが、これは実は連作で、「贅沢な時間」という名前の所以も、実は連作を見るとわかるというのは発見でした。(齋藤精一)

連作を見ていて、富士山と女子高生の関係が少し垣間見えました。概念をどう変えていくか、視点を変えていくかというところが、これから深めていけるのではないかと思います。テーマ性というのは変化していくものなので、この作品で富士山をこれからどうとらえていくのかなというのを期待していきたいです。タブレットしかり、ツールはあくまでツールなので、いろいろなものにトライしていってください。(長谷川 豊)

ムーヴィー部門賞

トムとねずみ
小川雄太郎
トムとねずみ
作品コメント(一部抜粋)
「トムとねずみ」は、2015年4月から2016年3月まで不定期(大体月に一度)にインターネットで個人的に発表した作品です。全10話+エピローグ。
東京在住、新聞社勤務の29歳のトムが30歳になるまでの1年間、不思議なねずみと暮らした日々の物語です。作品のテーマは、29歳の男性が抱える心の虚無感です。人生は不条理を受け入れていくことなのかもしれないと気付き始めた年齢で、これから先の人生に対してやるせない気持ち、心に小さな空洞がある主人公の前にねずみが現れ、2LDKの部屋で同居生活が始まります。
ねずみとの暮らしを通して、その虚無との付き合い方を模索していくという内容になります。ストーリーは、肉体的な変化(老い)や、仕事など日常にありふれたものが題材です。
審査コメント
「29歳男性が抱える心の虚無感」がテーマということなのですが、ぼくはこれを観て感動したんです。なぜか温かい気持ちになりました。その理由を考えたときに、ぼくのように40代を迎えたものが、若かった30代前半の時間がいかに大事だったのかを反芻する時間があったのではないかと思いました。そしてそれを表現するのには、イラストでもアニメーションでもなく、その中間のGIFループアニメーションというミニマルな表現が合っているのだなと思いました。(笠島)

実はぼくは29歳なのですが、29歳の悲哀というものをこの作品から感じました。ヘタウマ感の行間につまったよさ、というものがあると思うのですが、それをイラストとアニメーションの中間というところでうまく表現しています。また、ネズミのキャラクターが毎回変わっていくのが、「心のどこかにいてほしいネズミ」をうまくとらえているなと思いました。(落合陽一)

3Dオブジェクト部門賞

逆転のロボットアニメ もじげんとすうじげん
Yuichiro Katsumoto
作品コメント(一部抜粋)
80年代生まれの私は、ロボットアニメに魅了されて育った。ロボットとは主役にしてメカであり、アニメとは静止画に時間を与える表現である。そんな風に言ってしまうと、静止するものに時間を与えるメカもまた、ロボットアニメと呼んでいい気がしてきた。そこで私は「逆転のロボットアニメ」と称する制作を開始した。
手始めに、自ら転がり回る立方体を作ることにした。佐藤雅彦らのコマ撮りアニメに良く出てくる、アレだ。アレを映像の嘘ではなく、愚直なメカトロニクスで作ったらどうなるだろう、と思ってやってみた。暗中模索で試行錯誤したところ、割合簡単にできてしまった。
審査コメント
今回事前に審査をしているのですが、今日プレゼンをしてもらって印象が変わった作品がいくつかありました。その一つがこの作品です。プレゼンを聞く前は、ただ動いているだけの作品かと思ったのですが、二次元になって失われる文字の動きを取り戻すという、文字をハックするアイデアは面白いと思いました。是非すべての漢字でやってほしいですね。(佐々木)

純粋に動きが気持ちいいなと思った作品です。ぼくらは液晶ディスプレイを見慣れていて、またタイポグラフィーも手書きのものではなくなり、文字はフィジカルな存在ではなくなっています。それが動いている様は純粋にきれいだと思いました。また、デヴァイスというとプロダクトデザインのようなものが集まりがちななか、作品にきちんとした“ハック”が仕組まれていたのがいいなと思いました。(落合)

アイデア部門賞

Solar Projector
大桃耕太郎
Solar Projector
作品コメント(一部抜粋)
Solar is the most commonly-used light source in our ecosystem. We investigate a new projection systems that directly convert solar rays into the coded projection rays. Solar projector has capability to produce visible displays even in bright conditions without consuming an external electric power source. It uses a fresnel lens and components of a DLP projector.
審査コメント(一部抜粋)
アイデア賞はハックアワードの1回目からばらつきがあって、初年度は現実性があるというよりは、ぶっ飛びすぎているアイデアだったんです。審査会でも言っていたのですが、「Solar Projector」はともすると研究発表のようなものであると。(こういったアイデアには)いろいろな人が挑戦していると思いますが、プロトタイプとはいえ、いまの年齢でこういうことを研究しているというのは素晴らしいことだと考えました。アイデアから製品やプロダクトつながるよう、邁進してもらいたいと思います。(齋藤)

パブリック賞

干渉する浮遊体
水落 大
作品コメント(一部抜粋)
シャボン玉ははかなく消えるもの、というイメージをハックし、自然と人間の関係性を見直す作品です。
上空から降り注ぐシャボン玉が二酸化炭素の溜まったガラスの器の中に浮かび、それらの揺れや割れる瞬間に音や映像が呼応します。鑑賞者がシャボン玉の膜そのものの美しさ、生まれてから消えるまでの微細な変化を空間全体から感じる事ができるインスタレーション作品です。
身の回りにあって、よく知っていると思っている自然の中にも気が付いていない美しさが隠れている。
シャボン玉は皆、日常の中でその美しさも知っていると思っています。しかし、実はその美しさをよく見たことがある人は多くないと思います。
シャボン玉を浮遊させ静止させることで膜を安定させ、さらに周囲を真っ白なカーテンで覆った特殊な光環境をつくることで、シャボン膜本来の美しさを最大限引き出しました。これらはすべて科学的な原理から逆算することでデザインされています。
審査コメント
実は、ぼくや若林さんが審査員を務めていた「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」のハッカソンで、「干渉する浮遊体」が生まれる瞬間からこの作品を見ておりました。ぼくも「KENPOKU」での展示や、プロトタイプを見たりしていたのですが、シャボン玉の浮遊体をここまで見れるというのは、なかなかない体験だなと。もちろんデヴァイスで演出をしてはいるのですが、シャボン玉をハックするというのは面白いアイデアだなと思いました。(齋藤)

バイオをやっている身にとって、細胞膜というのは生命の最初のかたちなんです。その美しさというものを、わたしたちはなんとなく感じているのかもしれません。彼らは、それをエンジニアとサイエンティスとのコラボレーションによって作品へと昇華しています。見た瞬間にはっと何かを感じさせるという意味では、この作品はパブリック賞にふさわしいと思いました。(福原志保)

ヤングクリエーター賞

混沌の滝
代田みさ子
作品コメント
「にんじんが嫌い」そんな人々ににんじんの怒りや痛みを訴えかける映画の予告ムービーです。
嫌いな方にはこれを機に、にんじんを少しでも身近に感じていただけたらと思い作成しました。
私たちの中でごく日常的な食事という場面から始まる非日常を表現した映像をお楽しみください。
審査コメント
ヤングクリエイター賞ということですが、わたしはこれをクリエイター賞として考えていました。固定概念を変えたいという想いが作品に表れているという意味では、いちばん“ハック”していた作品なのではないかと思います。食べ物という存在定義と生命観もうまく組み合わさっており、また作家としてアイデアからのアウトプットもしっかりしていました。ヤングではなく、クリエイター賞をとったと思って、ぜひまた次のステップに進んでください。(福原)

ベストプレゼン賞

「ひとりぼっち」をハックする。
羽鳥惠介
作品コメント
普段僕たちが当たり前のように聞いたり奏でたりしている音楽ですが、多くの音楽は、複数の人間がそれぞれ役割分担し、演奏します。ですが、このすべての役割を一人でできたらどうでしょうか。僕は、一人でピアノ、ギター、ベース、ドラムなどを演奏し、その音源や映像を合成して「一人バンド」を作れたら楽しそうだな、と考えました。小さい頃からよく音楽に触れてきたので、ほとんど独学ですがそれらの楽器は演奏することができるので、自分の特技を活かして作品を作ってみました。
今回の作品は、撮影・編集・作曲・構成・出演・演奏をすべて自分でやりました。映像と音源は別撮りしたので、多少ずれていたりする箇所もありますが、頑張って作りましたので応募させていただきます。
審査コメント
これは間違いないなと思いました。いいプレゼントとは何か、というと、それはテクニックではないのだと思います。本当に人の心を動かすプレゼンというのは、経験や体験といった内側からくるものを伝えられ、人を感動させられることです。それが13歳でできるというのは、将来が楽しみで仕方ありません。これを、自分のベストクリエイションをプレゼンして表現することにつなげ、さらに高い賞をとってくれればと思います。(水口)

ソニー特別賞

みえない音
鈴木椋大・鈴木智子(Reel-to-Reel / りーるとぅりーる)
作品コメント
みえない音がたくさん身の回りにあることに、ある日気がついた息子の椋大。
彼は、みえない=立ち現れない音をどうやって見えるようにするのか色々実験するようになりました。
そのなかでも「高周波」が目に見えない、聴こえる人も入れば、聴こえない人もいるという事を知りました。
彼は19000Hz位まで聴こえるので、まさか聴こえない人がいるなんて思いもしなかったそうです。
その聴こえない高周波にとても興味を持ち、これを聴こえない人にも体感出来るようにするにはどうしたらいいのか実験を続け、ある日iPadで高周波をサンプリングすると音として認識されるのがわかりました。
このMovieは、目に見えない音を探る、11歳の彼だからこそわかったことや感じた事をメイキングダイジェストで表現したものです。
審査コメント
年齢関係なく、「見えない音をハックする」という方向性がしっかり理解できる作品であり、プレゼンテーションだったと思います。(長谷川)

われわれが普段行っているデジタルコミュニケーションでは、通信できないものはすべてエラーになります。しかし、アナログなラジオではそれがノイズになる。彼はそこに着目し、電波だったり赤外線だったりといった波動を、音として表現しています。そのとらえ方が面白く、いちばん“ハックっぽい”のではないかと思いました。(落合)

ワコム特別賞

ボードゲーム「恐慌論」
大坂景介
ボードゲーム「恐慌論」
作品コメント
「恐慌論」は資本主義経済がなぜ周期的に恐慌を引き起こすのかを学ぶ為のボードゲームです。
審査コメント
去年も壮大なコンセプトで難しいことを一生懸命考えて応募してくれていたのですが、それが今回アップデートされていました。今年も壮大な構えをもちつつ、それをボードゲームというアクセシビリティの高い物に落とし込んできたというのは成長したなと。なぜ恐慌が起きるのか、経済はどう動いているのかがしっかり考えられていて、それをどうボードゲームで体感させるのか・コミュニケートできるのかというのは非常に取り組みとしては面白いです。執着心がなければできないことでしょう。ここからは、さらにボードゲームのセクシーさ、ゲームの面白さをどうつくっていくのかという点を考えていってもらえればと思います。(若林)

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