【レポート】カワイイ!着けやすいバッジが最優秀賞「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」
電車などでの痴漢犯罪を未然に防ぐツール「痴漢抑止バッジ」のデザインを募った学生向けコンテスト「第5回痴漢抑止バッジデザインコンテスト」の授賞式が、12月7日に東京都内で開催された。会場には最優秀賞をはじめ受賞した学生と、審査委員長でデザイナーのハヤカワ五味さん、本コンテストのアドバイザーで12年間で2000人以上の性犯罪加害者の治療に関わってきた、精神保健福祉士の斉藤章佳さんらが参加した。
“カワイイ”作品が最優秀賞に選出
今年、581作品の応募の中から最優秀賞を受賞したのは、宮崎県立佐土原高校2年生のショタさんによる、『カワいくても許されません』。カワウソが痴漢をして捕まるデザインで、可愛らしいイラストが目を引く。学生による1次審査、2次審査、一般人気投票と審査員による最終審査を経て選ばれた。
イラストレーターを目指すショタさんは、「登竜門」や地元の公募ポスターなどでコンペを見つけては応募しているという。このコンテストでは、友人が痴漢にあったことから痴漢被害がこれ以上増えないよう、誰でも着けやすいバッジをデザインしたそうだ。
ハヤカワさんは、「学生が着けやすいと思いました。学生のバッグはネイビー系が多いので、暖色系のデザインははっきり目立つ」と評価。インターネット投票では、可愛いすぎるのではという声もあったことに対しては、「普段使う文房具も色々なバリエーションがあるように、バリエーションがあっていい」とした。
このほか4点の優秀作品が発表された。受賞者はいずれも、インターネットなどを使って痴漢犯罪や被害者の気持ちをよく調べ、デザインにあたったとのことだ。
ハヤカワさんは受賞したデザイナーの卵たちに向け、「表面だけではなく、社会の動きをデザインしているということに誇りをもってほしい」とエールを送った。
可読性が大事 審査員が考える痴漢抑止バッジのデザインポイント
授賞式のあとにはハヤカワさんと斎藤さん、主催の一般社団法人痴漢抑止活動センター代表理事・松永弥生さんによるトークイベントが開催された。
ハヤカワさんは痴漢抑止バッジのデザインポイントについて「『泣き寝入りしません』『痴漢は犯罪』というメッセージを、人によって解釈が分かれるグラフィックよりもテキストではっきり伝えることが有用。いかにテキストの可読性を上げるかが一つの鍵だと思っています」と語る。審査委員長賞に選んだ作品『監視カメラの警察官は見逃さない』は、テキストの可読性が高くて遠目にもわかるため推したという。
一方、斉藤さんは特に抑止効果があると思う作品を『声高に叫べ!』だとした。理由は「痴漢加害者は、制服を“従順”の象徴と認知していて、制服を着た子はターゲットにしやすいと見ている。制服の学生が強く主張する絵柄は、加害者の認知の歪みを崩す秀逸なデザイン」とのことだ。
学生を対象にして、審査も学生が関わる同コンテストは今回で5回を迎えた。のべ応募数は3160件。松永さんは「自分は関係ないと思っている方を減らしたい。学生時代にジェンダーへの意識を持ってくださった方がデザイナーとなって社会で活躍し、世の中に出るデザイン・メッセージが変化することを楽しみにしている」とコメントしている。
これまでの受賞20作品は、1つ550円でコクミンドラッグ、OsakaMetro駅ローソン、南海電鉄駅コンビニ、オンライショップ、などで販売中だ。2019年の受賞作も2020年春に商品化される。
痴漢抑止バッジデザインコンテスト2019公式ホームページ
http://scb.jpn.org/contest/2019/
取材・文:猪瀬香織(JDN)
2019年の「登竜門」更新は、本日12月27日でおしまいです。
SDGsの広がりもあり、同コンテストをはじめとする『社会課題への取り組みをテーマにしたコンテスト』が年々増えています。SDGsが2030年を目標としていることを考えると、このトレンドは2020年以降も続くでしょう。社会の動きにあと少しだけ目を向けてみると、コンテスト入賞の可能性が高まるのかもしれません。
2019年、「登竜門」をご愛読いただき、どうもありがとうございました。2020年もたくさんのコンペをご紹介していきます。ぜひ、いろいろなコンペに挑戦してみていただけたら嬉しいです。
皆様、どうぞよいお年をお迎えください。
2019年12月27日 「登竜門」編集部