ニュース
2017/06/08 10:16

【レポート】アートオリンピア2017 最終審査会・結果発表

アートオリンピア2017 審査風景

6月7日(水)、アートの国際公募展「アートオリンピア 2017」の最終審査会が、東京都・池袋にある豊島区庁舎にて行われた。

「アートオリンピア 2017」は隔年開催のビエンナーレ形式で、アーティストの発掘と支援を目的としている。募集規模が“世界中”と大きいことに加え、賞金総額が破格の約50万USドル(日本円にして、およそ5000万円)であるため、注目度が高い新たなアート公募展だ。

アートオリンピア2017 募集要項
https://compe.japandesign.ne.jp/artolympia-2017/

2回目の今年は、前回を上回る82か国から3828点の作品応募があった。最終審査会に集められたのは、一次審査により絞り込まれた180作品。国内外から招かれた美術関係者で構成される審査員10名が、真剣に作品と向き合った。

特色ある審査方法

このコンペの特色は、透明性・公平性の高い審査手法だ。応募作品全てが点数により順位づけられ、入賞作品は点数と順位が公表される。最終審査会は公開で、YouTubeでのライブ配信も行われた。

アートオリンピア 2017 最終審査会(YouTube)
http://youtu.be/UmTK2eTBLQk

具体的な審査方法はこうだ。まず数点ずつ会場に運び込まれた作品を、画家の千住博氏はじめ10名の審査員がじっくり見る。審査員は作品を見た後、1作品ごと手元のタブレット端末に点数(100点満点)を入力する。すると会場正面の大モニタに合計点が表示される。純粋に採点の合計点で、作品の順位と受賞が決まるのだ。

アートオリンピア2017最終審査会

審査員が点数を入力すると、大モニタに表示された合計点が増えていく

審査がクローズドなことが多いアート公募展において、この審査手法は異彩を放っている。フィギュアスケートや新体操など芸術スポーツの採点を思わせる手法だ。

この新たな手法で、3時間にわたる審査が進められた。

結果発表 12万ドルを手にしたのは

全応募者部門にて栄えある1位となったのは、686点を獲得したフランス・Alpha MASON氏の作品「Neglect Inc.」。表彰金12万USドル (約1200万円)が贈られる。

学生部門の1位は、662点のアメリカ・Devan Kallas氏の作品「Neglected sanctuary」となった。表彰金は2万ドル(約200万円)。

ほか台湾、ドイツ、アメリカ、日本の作品が入賞し、国際公募展らしい結果となった。

写真内、左が全応募部門での1位、最も右側の作品が学生部門で1位となった作品

写真左が全応募部門での1位の作品、最も右側の作品が学生部門で1位となった作品

各部門上位6作品は表面的な完成度だけではなく、背景に深い意図を持つものも多い。学生部門1位のDevan Kallas氏は、電話インタビューで制作意図と今後の展望についてこう話す。

――― 近隣に莫大な費用をかけたスタジアムが建設された。その資金がどうしてアートへの支援に回らないのだろうか? という複雑な気持ちを込めた。これからも目的や意味のあるアートを作り続けたい ―――

全応募者部門3位の「炸裂」を制作した中村宏太氏は、鑑賞者が写り込む金メッキの板に銃痕のような穴をあけた作品を制作した。電話インタビューで「鑑賞者が視覚的に被弾する効果を意図した。ニューヨークで9.11を経験し、銃や死に近い経験を経て発想。危機感を込めて作った」と述べている。

入賞作品の結果発表(* 6/14掲載につき追記)
https://compe.japandesign.ne.jp/result/artolympia-2017/

審査員講評

審査員講評では、国内外から複数の審査員が作品の多様性・多文化性を高く評価した。第一回から参加している曲德益氏(台湾・国立台北芸術大学関渡美術館)は、参加国が増えたこともあって多様性が増し、審査していて楽しかったと述べた。千住博氏は「個性的な素晴らしい作品も、評価が分かれてしまい賞に結びつかない場合もあるが、一喜一憂せず互いの多様性を認める機会としてほしい」とコメントしている。

保科豊巳氏(東京藝術大学副学長)は、自身の審査視点を「作品の裏側にある、作家の背景が深いものに注目した」と話した。またブレッド・リットマン氏(アメリカ・NYのドローイングセンター館長)は、透明性の高い審査方法を評価した。

アフリカおよび非西洋現代美術専門誌の立ち上げや「アフリカ・リミックス展」を手がけた、キュレーターのシモン・ンジャミ氏は「アートオリンピアは皆が出品し賞を取りたいと思う、魅力的なアート公募展に成長してきている」と今後への期待を込めた。

長く緊張の1日を終え、和やかな表情の主催者・審査員、司会の片岡鶴太郎氏

長く緊張の1日を終え、和やかな表情の主催者・審査員、司会の片岡鶴太郎氏

今回入選した180作品は、6月17日(土)から25日(日)まで豊島区庁舎1階「としまセンタースクエア」にて展示される。入場は無料。世界のアーティストの登竜門となりつつある、本公募展。情熱のこもった作品を直に見るまたとない機会だ。

【展示会概要】
●日時:2017年6月17日(土)~6月25日(日)
●場所:豊島区庁舎 1階「としまセンタースクエア」
●料金:無料

展示会についての詳細
https://www.artolympia.jp/exhibition.html

アートオリンピア公式ホームページ
https://www.artolympia.jp/

取材・構成・文:猪瀬香織(JDN)

関連記事