受賞者インタビュー
2022/08/29 12:15

自然と街のつながりをテーマに、「葉脈」の橋をかける:CSデザイン賞受賞者インタビュー [PR]

自然と街のつながりをテーマに、「葉脈」の橋をかける:CSデザイン賞受賞者インタビュー

店舗看板やショーウインドウの装飾など、あらゆる用途に使われている装飾用シート「カッティングシート®︎(以下、カッティングシート)」。単色やメタリック、透明など全273色の豊富なバリエーションを持ち、近年ではDIYを楽しまれる個人の方々が、家具のデコレーションやウォールステッカーとして使用することも増えてきました。

そんなカッティングシートを使用した、適切で創造性に優れたデザインを発信・共有するアワード「CSデザイン賞」が22回目を迎えました。第22回「CSデザイン賞」の学生部門で金賞を受賞したのは、武蔵野美術大学1年(作品応募当時)の丸山咲さんによる「veins」。応募テーマ「自然と街のつながり」を表現する舞台となったのは、流山おおたかの森S・Cの本館とANNEX1をつなぐ連絡ブリッジです。全長38mにもおよぶガラスウォールを飾る白一色のシートでできた作品は、爽やかさの中にも確かな迫力があります。

本記事では、大学で日本画を専攻しながらデザイン分野にも挑戦している丸山さんに、作品のコンセプトやデザインの面白さ、カッティングシートの素材の魅力などをお話しいただきました。

ひとつのジャンルにとどまらず、幅広いクリエイティブに触れたい

――大学では日本画を専攻しているということですが、普段はどのようなことを学んでいるのでしょうか?

必修科目として日本画ならではの表現技法や基礎的な道具の使い方を学んでいます。日本画と言うと墨や岩絵具を使う伝統的なイメージが強いと思うのですが、日本画表現に沿っていれば画材は自由です。私自身も、岩絵具はもちろんアクリルや色鉛筆を使いながら課題に取り組んでいます。最近ではデザインにも興味が出てきたので、広告デザインの授業を履修しました。日本画だけに自分の視野をとどめず、ジャンルを越えてさまざまな表現について勉強しています。

丸山咲 武蔵野美術大学造形学部日本画学科2年生

――丸山さんは、表現をする上で大切にしていることはありますか?

絵やデザインの展示会はもちろん、映画を見たり好きなアーティストのライブに行ったり、インプットの機会をたくさんつくるようにしています。さまざまなクリエイティブに触れる中で意識しているのは、自分の中の「好き」や「嫌い」を言語化することです。例えば、昔は映画を見たらすぐにレビューを検索して、自分と似た感想の投稿に共感して終わりでした。でも、ある時「それってもったいないな」と思ったんです。

せっかくその映画を見て心が動いた瞬間があったはずなのに、他人の感想を見てそれ以上考えることをやめてしまう。似たような感想に見えても、微妙に違う部分ってきっとあるはず。そう思ってから、自分が感じたことをノートに書き留めるようになりました。自分がどういうものに惹かれ、どういうものに嫌悪を感じるのか。それが明確になっていくにつれて、創作活動の中で自分が表現したいものも少しずつ見えてくるようになりました。

丸山さんが日本画学科の動物課題で描いたという作品「pain」

――自分の感覚を丁寧に掘り下げながら、表現することに向き合っているんですね。

そうですね。特に絵を描く時はオリジナリティを強く求められるので、自分の中の考えや感情は「なんとなく」のままにしたくないなと思っています。だからこそ、たくさんの作品に触れて、たくさん自分自身と向き合う中で、オリジナリティを見つけていきたいですね。

デザインの奥深さに惹かれ、コンテストに挑戦

――丸山さんは日本画を専攻しながら、デザインの授業も履修しているということですが、デザインに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

きっかけは、アートディレクター・大貫卓也さんの「としまえん」の広告ポスターです。最初に見た時は純粋に「カッコいい!」と思い、それからそのポスターのことが気になり、大貫さんのインタビューも読みました。その記事で企業の課題を解決するためにはどういうデザインが最適なのか、緻密に計算されていることなどを知り、とても驚いたんです。ただ自分のセンスを表現するのではなく、誰かのためにベストなものをつくり出す。そんなデザインの奥深さに一気に興味が湧きました。

――デザインの魅力に気付いた丸山さんが、実際に「CSデザイン賞」に応募したのはなぜでしょうか?

長い冬休みに何か挑戦してみたいなと思ったのがきっかけです。それからコンテスト情報サイトの「登竜門」で自分が応募できそうなデザインコンテストを探し、目に留まったのが「CSデザイン賞」でした。まず過去の受賞作品をかたっぱしから見てみたのですが、一般部門も学生部門もどれもクオリティが高くて感動したことを覚えています。また、審査員の方々の講評も一つひとつ的確で、とても勉強になったんです。たとえ入賞しなくても、こんなに素晴らしい審査員の方々に自分の作品を見てもらえるなら、応募してみる価値はあると思いました。

――こういったデザイン賞への応募経験はあったんでしょうか?

ほとんどなかったですね。最初に「CSデザイン賞」を知った時は空間デザインの専門知識やツールが必要なのかと思いましたが、平面のデザインなら私でもチャレンジできそうだと思い、応募してみたんです。

丸山さんが提出したプレゼンシート

――そして応募の結果、金賞を受賞されました。受賞連絡があった時、どんなお気持ちでしたか?

とにかくびっくりしました……。正直なことを言うと、電話がかかってきた時は「提出に不備があったのかな?」と恐る恐る電話に出たんです(笑)。そうしたら、金賞受賞の連絡だったので嬉しさと安堵で胸いっぱいでした。

――そうだったんですね。作品に対する自信はあったんでしょうか?

たくさんこだわり抜いた末に完成した作品だったので満足感はありましたが、「絶対入賞したい!」という思いよりも、これだけ頑張った作品を審査員の方に見てもらえることに対するワクワク感の方が強かったですね。だからこそ、金賞受賞の連絡がきた時の喜びは本当に大きかったです。

流山おおたかの森の歴史を紐解く中で気がついた、自然と街をつなぐもの

――作品のタイトル「veins」を訳すと「脈・離れたものをつなぐもの」という意味ですが、作品のコンセプトはどのように考えていったのでしょうか?

今回の募集テーマが「自然と街のつながり」ということで、まずは作品を設置する場所である、流山おおたかの森ついて調べてみました。すると、2005年のつくばエクスプレス開通から現在まで“自然と共生する街づくり”に向けたプロジェクトをずっと行っていることを知り、その並々ならぬ思いに感銘を受けました。

作品が施工された、流山おおたかの森S・C 連絡ブリッジの外観(写真提供:中川ケミカル)

ただとって付けたように駅やビルを緑化するのではなく、本当の意味で人と自然が共に生きる方法を探し続けている場所なんだと――。最初、私は自然と街のそれぞれをどのように表現しようか考えていましたが、流山おおたかの森の取り組みについて知れば知るほど、街と自然を二項対立で考えるのは本質的ではないと思ったんです。それから街と自然のつながり、つまりふたつの共通項を考え始めました。

――その共通項が「脈」だったと。

街のような人工物と自然は対比されがちだと思いますが、本当にそうなのか?と以前から疑問に思っていました。自然が人々を生み、その人々が街をつくった。だから、街と自然の間には何か共通しているものがあるのではないか。そんなことを考えながら、街全体を上から撮影した写真を見ていると、道路が植物の葉脈のように張り巡らされていることに気付いたんです。

しかもそれは偶然ではなく、なるべくしてなっているのかなと。葉脈は葉っぱ全体に酸素などの栄養が行き届くようにあのような構造をしていますが、道路もまた同じように人々が街の隅々にアクセスするためにつくられていますよね。つまりふたつとも同じ目的を追求した結果、似たような構造になっているんじゃないのかなと感じました。流山おおたかの森も街と自然が深い部分でつながりあってできた場所だと思ったので、作品のコンセプトはふたつの共通項である「脈」に決めました。

写真提供:中川ケミカル

――「veins」というコンセプトが決まったあとは、どのように作品をつくり込んでいったのですか?

スケジュールの都合上、現地に訪れることができず、流山おおたかの森S・CをGoogleストリートビューで見て、実際の見え方を想像しながらデザインしていきました。今回カッティングシートを貼るガラス面は南向きなので、デザインする中で光の当たり方は特に意識しようと思いました。デザインデータを紙に出力し、丸の形をくり抜いた紙に光を当てながら、床にどんな影が映るのか何度も検証しました。また、カッティングシートを貼る連絡ブリッジには無数の柱があったので、くり抜いた丸が隠れてしまわないように位置を細かく調整するのには時間がかかりましたね。

――「veins」を制作する中で一番こだわったポイントを教えてください。

最もこだわったのは、一つひとつの丸の大きさと位置の微調整です。丸が大きすぎても葉脈に見えないし、逆に細かすぎてもただのドットのように見えてしまう……。今回ガラスに光が差し込んだ時に木漏れ日のような影を床に映したかったので、一つひとつの丸の影がバランスよく重なり合うポイントを模索し続けました。加えて、プレゼンシートに載せる文章もこだわった点の一つです。読んだ人にすぐ理解してもらうために、短くシンプルな文章を意識しながら書きました。

天気のいい日には、床に木漏れ日のような影が映る(写真提供:中川ケミカル

――細部までこだわりながらつくり上げたデザインが、実際に流山おおたかの森S・Cの連絡ブリッジに施工されたのを見た時のお気持ちはいかがでしたか?

今までの人生で自分がデザインしたものがこのような公共の場で掲示されることが初めてだったので、本当に感動しました。人通りが多い場所ということで、いろんな人に自分のデザインを見てもらえることが素直に嬉しいです。この「veins」という作品は、離れてみた時と近くで見た時の印象が違うところが魅力だと思っているので、この橋を通る人にはその見え方の違いを楽しみながら歩いてみてほしいですね。

一番シンプルなカッティングシートで、作品のコンセプトを表現

――これまでカッティングシートを使って作品制作をしたご経験はありましたか?

恥ずかしながら今回初めて使いました。制作にあたって中川ケミカルさんのショールームにも伺ったのですが、カッティングシートの種類の多さには驚きましたね。光を通すものと通さないもの、透明なものやミラー加工のものなど、いろんな用途に活かせそうな素材だと感じました。

――今回「veins」には、「レギュラーシリーズ ホワイト 711」というカッティングシートを使われていますが、このシートを選んだ理由を教えてください。

今回の作品では木漏れ日のように光を差し込ませたいと思ったので、穴が空いた部分とのコントラストがはっきりと生まれるようなシートを選びました。色を白にしたのは、街の一部にスッと溶け込むようなデザインにしたかったからです。もちろん自然っぽい緑色にするという選択もありましたが、今回のコンセプトは街と自然のつながりだったので、どちらにも寄らないニュートラルな印象を出したかったこともありこの色にしました。

――初めてカッティングシートでデザインしてみていかがでしたか?

私はまだ一度しか使ったことがありませんが、過去の受賞作品を見ていると本当にたくさんの使い方があるんだなと思いました。国道の橋脚を鮮やかに彩ったり、ショッピングモールのショーウィンドウを華やかに飾ったり。この賞を通してカッティングシートの可能性の大きさを知ることができて、今後の創作活動にも積極的に使っていきたいと思いました。

見る人の気持ちを考え抜いたデザインを生み出していきたい

――今回の受賞を受けて、今後はどのような作品づくりを目指していきたいですか?

「CSデザイン賞」を通して、私はコンセプトをとことん考え抜くことが好きなのだなと改めて実感しました。街と自然をつなぐものは何か。流山おおたかの森が何を大事にしているのか。あらゆる面から物事を考え、それをデザインに落とし込んでいくことが、とても楽しかったんです。

そして今回の制作過程では、私のデザインを見る人、つまり連絡ブリッジを通る人についてもかなり意識しました。流山おおたかの森はたくさんのファミリーが住む街なので、ガラスの変わった模様を楽しんでもらったり、特に床との距離が近い子どもたちには床に映る木漏れ日を楽しんでもらったり……そんな光景を想像しながらデザインしました。「CSデザイン賞」で得た経験を活かして、これから誰かの気持ちを少しでも豊かにし、社会をより良くできるような創作活動を目指していきたいです。

■作品展示情報
会期:2022年7月16日(土)~11月30日(水)
会場:流山おおたかの森S・C 本館 2Fと別館のANNEX1 3Fを接続する連絡ブリッジガラスウォール(千葉県流山市おおたかの森南1-5-1)
※展示期間は変更となる場合がございますので、予めご了承ください

■CSデザイン賞 公式サイト
https://www.cs-designaward.jp

文:濱田あゆみ(ランニングホームラン) 撮影:井手勇貴 取材・編集:石田織座(JDN)

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