受賞者インタビュー
2022/02/03 10:00

自分の視点を、鑑賞者が追体験できるような絵画を描きたい – シェル美術賞2021グランプリ 福原優太1 / 2 [PR]

シェル美術賞2021グランプリ 福原優太さん
40歳以下の若手作家による、平面作品を対象とした出光興産主催の公募展「シェル美術賞」。「国内の文化・美術の発展に寄与したい」という思いから1956年に創設され、2021年で66年目(開催は50回目)となる。2021年度は508名による732作品の応募の中から、福原優太さんの「無題」がグランプリを受賞した。2020年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻を卒業した1997年生まれの画家だ。福原さんに応募の動機や制作活動などについて話を聞いた。

場所や時間は見る人に委ね、新鮮さを大事に描く

──グランプリ受賞おめでとうございます。受賞作品「無題」について教えてください。

夜中に6~7人の友達とドライブに行き、東京・八王子の見晴らしのいい高台から撮った写真をベースに描きました。空の色が暗くないのは、まず最初に、大きい空を好きな色で描きたいと思っていたからで、空が抜けた空間にしたかったんです。そこから草原を描いて、距離感を生むために赤いラインを引いたことで奥行きが出ました。

シェル美術賞2021 グランプリ受賞作品『無題』162×130.3cm 油彩・キャンバス 2021(福原優太)

グランプリ受賞作品『無題』162×130.3cm 油彩・キャンバス 2021

──いつも写真を撮って描いているのですか?

どこへ行ってもスマホで写真は撮っていて、どう絵にするか考えながら風景を見ていますね。写真を撮る時は常に描きたい、どう描くかというイメージをしています。

今回は、写真に写っていた街の光は描かず、場所や時間は見る人に委ねています。コロナ禍が割と落ち着いた頃のドライブで、久しぶりに友人と会った開放感と、せめて絵の中では違うどこかに旅をしたいとの気持ちを、鑑賞者に追体験してもらうためです。

この絵は、自分では楽しい思い出とともに描いているんですけど、審査員の中には「不穏な感じ、でも希望がある」といった読み取り方をされている方もいらっしゃいました。自分も鑑賞者になった時には「確かにそう見えるな」と。見る人の感じ方は100人いたら100通りあっていいと思っています。タイトルも、つけると連想が限定されてしまうので、あえて「無題」としています。

──ストローク(筆跡)から風のうねりを感じます。絵に勢いを感じますが、描くのにどのくらい時間がかかったんですか?

制作では30分から1時間程度のスピーディーな作品もあれば、数日かかる作品もあるんですが、これは数時間で描けました。空の流れの跡は、100円ショップで買った大きなプラスチックの箒で描いています。そのほか草原の一部はティッシュ箱の底に絵具をつけてジャーッと流したり、あとはタワシとか、身近なものを筆の代わりに使ったりするんですよ。所々に違う味みたいなものが出るんじゃないかと思って。描いている自分自身が新鮮な感覚でいたくて、いろいろな道具で描いてみたり、描きすぎて絵が硬くなる前に手を止めるようにしています。

シェル美術賞2021 グランプリ受賞作品『無題』162×130.3cm 油彩・キャンバス 2021(福原優太) 空のストロークにフォーカスした写真

──福原さんは同じサイズの作品をもう1点応募していて、創作の幅広さに可能性を感じてグランプリに決まったそうですね。審査員にはそれぞれ別の作家の作品だと思われて、両方が一次審査を通過していたと聞きました。

系統の違う2点を出した方が面白いのではと思ったのですが、この2点を出して本当に良かったです。受賞作は数時間で、もう1点は1か月ほどかかりました。もう1点は祖母の家の裏の林を撮影した写真をもとに、群生した植物を描いたのですが、こちらの作品で苦戦したことを受賞作で活かせたので、早かったし楽しかったんですね。今回受賞した作品があまりにも早くできたので、何枚も立て続けに描いたんです。シェル美術賞に出すタイミングでかなり枚数ができたので、他の公募展にも出しました。そちらは落ちてしまったんですけど(笑)。

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