受賞者インタビュー
2021/10/20 17:00

東京の街で出会う2人の女性を描く、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 「Cinematic Tokyo」部門受賞作に込めた想い2 / 2 [PR]

東京の街で出会う2人の女性を描く、ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 「Cinematic Tokyo」部門受賞作に込めた想い

フィルムメイカーとして描くアイデンティティと孤独

––本作には旅や出会い、恋愛といったテーマを感じますが、作品に込めた想いを教えてください。

『それから』ではさまざまなテーマが描かれているので、観る人それぞれが何かを感じ取っていただけたのではないかと思います。例えば、クリエイティブであるということとはどういうことなのか、孤独というものが私たちにどのように影響するのかといったことや、いかに私たちは恋に落ちやすく、互いに影響し合っているのかなど。そして、人生において失われた関係が、再び現れてはもと戻ることについての物語でもあります。

『それから』は、終わったと思っていた誰かとのつながりや、過ぎ去っていった関係性が、後の人生においても影響することを描いています。過ごした時間の長さに関わらず、その人との出会いが人生を変えることになったという思い出は、すべての人にとって関わりのあるテーマだと思います。

作品を通して伝えたいのは、もし誰かとの関係において孤独感を抱いていたとしても、相手側には、いつもなにか別の感情があるということです。人間関係というものは、終わってしまった後でも意味のあるものになり得ますし、いつまでも互いに影響し合うものなのです。

『それから(And Then)』のワンシーン

––『それから』では同性間の恋愛が描かれていますが、LGBTQやアイデンティティといったテーマについて、映像作家としてどのように考えていますか?

アジア系アメリカ人であり、LGBTQのアーティストとして自身の経験を描く上で、私自身のアイデンティティは映画制作にさまざまな影響を与えています。

自分と似た容姿の人々が暮らす国で、自分がアウトサイダーだと感じてしまうことは、私が普段属しているコミュニティで時々感じていることや、他の場所でもアメリカ人として感じていることと同じだと思います。私は時々、中国人やベトナム人でもなく、さらにはアメリカ人でもないような感覚を抱いてしまうのです。いつもそういった属することへの隔たりのようなものを感じています。このことは、『それから』の主人公であるマナが、ハルに対してベンチで話すシーンで少し表現されています。

同様に、本作での孤独というテーマは、アイデンティティを模索するさまざまな過程において生まれるものとして描いています。カミングアウトすることや、クィアであることを自覚するのは孤独なプロセスです。私自身、なんとかそのことに向き合うためのひとつの方法として、後ろめたい気持ちから解放された東京という街で、恋に落ちる女性についての映画をつくりたかったんだと思います。

映画をつくる理由は、あくまでストーリーと自分自身のため

––本作の制作にあたってクラウドファンディングを実施されていますが、インディペンデントな活動をする映像作家にとって、製作費を集めるための手段としてのクラウドファンディングについてどのように感じていますか?

本作では、キックスターターを通じてクラウドファンディングを実施しました。私にとってはじめての経験で、製作や撮影クルーへの支払い、ポストプロダクションの費用に充てました。

ただ、クラウドファンディング自体については、有用かどうかに関わらず、さまざまな面から疑問を感じています。オンラインでの活動は重要ですし、すでに著名な方の支援のもとで映画をつくる場合、クラウドファンディングはとても有効だと思います。

ですが、インディペンデントな作家にとっては、作品のアイデアが観客にとって魅力的かどうかが最も大切です。クラウドファンディングが成功するかどうかのすべては、そのことにかかっているとも言えます。良いアイデアがあり、戦略ときちんとした見込みがある場合は、クラウドファンディングは確実に効果的だと思います。

––『それから』は、本年度のSSFF & ASIAにおいて「Cinematic Tokyo」部門優秀賞を受賞されましたが、映画祭へ応募された経緯を教えてください。また、フィルムメイカーにとって賞はどのような意味を持つと思いますか?

SSFF & ASIAについては、「Film Freeway」という作品応募プラットフォームを通して知りました。正直なところ、本作が私にとってはじめての映画だったので、「Cinematic Tokyo」部門へは、手当たり次第映画祭に応募していた中のひとつでした。

映画祭は、より多くの方に作品を観てもらう機会になりますし、社会的に孤立してしまうフィルムメイカーにとって、とても重要な存在だと思います。映画業界は競争率が高く、ある特定の層によって独占されてきた歴史があるので、作品を観てもらうこと自体が難しい場合があります。賞を受賞することで少しでも多くのみなさんの目に触れることにつながることは、インディペンデントなフィルムメイカーにとってなによりの救いですね。

ただ、フィルムメイカーにとって賞をとることをモチベーションにするべきではないと思っています。映画をつくりたいと思う理由は、あくまでストーリーと自分自身のためであるべきです。

『それから(And Then)』のワンシーン

––ちなみに、映画制作にあたってのインスピレーションや、影響を受けている人はいますか?

映画監督ならソフィア・コッポラ、クロエ・ジャオ、エイヴァ・デュヴァーネイ、ケリー・ライヒャルトですね。俳優なら、イッサ・レイやミカエラ・コールなど。

––最後に、「Cinematic Tokyo」部門の受賞を振り返ってみていかがですか?フィルムメイカーとしての今後の展望についてもお聞かせください。

『それから』では、登場人物の性的指向やトラウマについてフォーカスするのではなく、シンプルに日常の断片を描きたいと考えました。LGBTQのカップルが日々の生活を楽しむストーリーを、誰もが楽しめる逃避的な要素と共に描きたかったんです。それは、東京というすばらしい街での撮影だからこそできたことだと思います。

また、本作はコロナ禍の映画祭で公開されたので、結果として観る人にとって旅へのロマンスを感じさせる作品になったのではないかと思います。そのことはとても嬉しいです!

本作では、LGBTQの登場人物たちにとって、ハッピーエンドとなる物語を描きたいと思いました。エンディングで主人公の2人がまた会うことをほのめかしていますが、2人は再会しますよ!

今後はよりロマンティックで希望に満ちたラブストーリーを描きたいと思っています。観る人を幸せにするような、心地よい映画をつくりたいですね。

文・編集:堀合俊博(JDN)

『それから(And Then)』

『それから(And Then)』 日系アメリカ人のマナはアーティストとして行き詰まり、息抜きのため東京を訪れる。ハナはアーティストになる事を夢見る日本人女性。二人の女性がアートと眠れない夜を通して東京の街で出会う。

ラヴェンナ・トラン監督による受賞コメント

『それから(And Then)』は、ショートショートフィルムフェスティバル & アジア 2021秋の国際短編映画祭にて配信・上映
(オンライン会場:10/1〜10/31、リアル会場 東京都写真美術館:10/21〜10/24)
https://www.shortshorts.org/2021autumn/ja/film/154/

「Cinematic Tokyo」部門の作品を2022年の映画祭に向け募集中(締め切りは1月31日)
https://www.shortshorts.org/ja/creators/cinematic.php

ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 公式ページ
https://www.shortshorts.org

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