受賞者インタビュー
2021/02/17 12:10

生まれ育った土地を再認識した気持ちを表現。「FACE2021」グランプリ 魏嘉インタビュー [PR]

生まれ育った土地を再認識した気持ちを表現。「FACE2021」グランプリ 魏嘉インタビュー

SOMPO美術財団が創設した、「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を募集する、公募コンクール「FACE」。同コンクールは新進画家の登竜門として定着しつつあり、第9回目の開催となった「FACE2021」では、前年度を大きく上回る1,193名の作家から応募があり、受賞・入選作品83点が決定した。

現在、「FACE2021」の受賞入選展がSOMPO美術館にて開催中で、第10回となる「FACE2022」の作品募集も発表された。

「FACE2021」にてグランプリを受賞したのは、台湾出身の画家、魏嘉(ウェイジャ)さんの作品「sweet potato」だ。キャンバスに大胆にパステルやスプレーで直接ドローイングされた、見れば見るほど味わい深い魅力を持つ受賞作品について、作者の魏嘉さんに、作品のコンセプトや自身の表現したいこと、受賞の感想などをうかがった。

――グランプリ受賞おめでとうございます!改めて受賞の感想をお聞かせください。

受賞の連絡を受けたときはとにかく驚き、信じられませんでした。素晴らしい賞をいただいたことでプレッシャーも感じますが、とても嬉しいです。

自分自身でも面白い作品が描けたとは感じていたのですが、ほかの方からどう評価されるか少し不安なところもありました。今回、自分が良いと思える作品を審査員の方々にグランプリとして選んでいただき、とても励みになりました。

魏嘉

魏嘉 1988年台湾生まれ、東京都在住。2019年多摩美術大学大学院博士前期課程油画研究領域修了。2022年東京藝術大学大学院博士後期課程修了予定。2018年にグループ展「Crossover」(ギャラリー・ルデコ、東京)、「Taipei Art Book Fair 草率季」(Songshan Cultural and Creative Park、台北)を開催。シェル美術賞2019入選。

――今回、FACEへ応募した理由を教えてください。

普段、公募展やコンペにはあまり積極的に出品はしていないのですが、やはり自分の絵をたくさんの人に見てもらいたいと考えていました。「FACE」は受賞者のお知らせなどを目にする機会が多く、私も挑戦してみようと応募を決意しました。数ある公募コンクールの中でも、年齢・所属が不問な点などからオープンな印象があり、誰でも参加できることが魅力のひとつだなと思います。

生まれ育った土地を再認識したことで生まれた作品

――グランプリ受賞作の「sweet potato」は、一言では表現できない不思議な魅力を持った作品ですが、印象的なタイトルを含め、作品のコンセプトを教えてください。

「sweet potato(スイートポテト)」は、生まれ育った土地を改めて認識したことがきっかけとなり、制作した作品です。昨年3月頃に一度台湾へ帰国したんですが、新型コロナウィルス感染症の影響で一時日本へ入国することができませんでした。その結果、半年くらい台湾に滞在した時期があったんです。

台湾島の形は、よくサツマイモの形に似ていると言われています。台湾には「蕃薯精神(ばんしょ ※サツマイモの別称)」という言葉があって、それは「堅忍不抜の精神を養う(どんなことがあっても心を動かさず、じっと我慢して堪え忍ぶ精神を養う)」という意味なのですが、そこからきているという説もあります。

FACE2021 グランプリ作品 sweet potato

グランプリ受賞作品「sweet potato」2020年 パステル・スプレー・エアブラシ・キャンバス 130.3×162cm

以上のことから、サツマイモは台湾の一つのシンボルといっても過言ではないと私は考えています。今回の作品では、直接画面にサツマイモを描くのではなく、タイトルを「台湾」の代わりに「サツマイモ=sweet potato」と題しました。

画面右下にあるネズミのような形は、文字を使ってかたどったもので、抽象的なお碗や食べ物のイメージに近いです。文字の内容は、市場や美術館、観光地などの名前を描いていて、台湾に滞在していたあいだに家族や友達と一緒に行った場所を文字であらわしました。

FACE2021 グランプリ作品 sweet potato

テキストグラフィックの表現

わざわざ行くような特別な場所ではありませんが、2020年に台湾にいたという時間を大切にしたいと思い、これらの場所へ行ったことを記録するように、テキストグラフィックの形式で配置してイメージを作成しました。

突然の台湾長期滞在や、コロナの影響で将来に不安を感じながら、生まれ育った土地を改めて認識した気持ちから今回のような作品になりました。

制作しながらどんどん発見をしていきたい

――普段はどのようなテーマやモチーフをもとに制作していますか?また、表現したいと思っていることについても教えてください。

子どもの頃から絵を描いたり、自分の手で何かをつくり出すことが好きでしたが、いつもその時々に描きたいものを描いています。モチーフは実物のときもありますが、画像を見て描くことが多いです。最近は中国の山水画をモチーフに制作をしたいなと思っています。

グランプリ受賞作品の「sweet potato」にも、中国の山水画をイメージしたようなモチーフが描かれている

現在、東京藝術大学の博士課程で研究しているテーマは「聴覚障害者の情報を受け取るgap(ギャップ)」です。私自身が聴覚障害を持っているのですが、たとえば映画やテレビ番組などで字幕がない場合、私にとってそれはほぼ黙劇です。字幕がなければ会話の内容ははっきり聞こえず、想像と会話の前後関係から内容を類推することになるんです。

そういった、字幕がない映像を観ることで聞き間違えた言葉から得た感情をもとに作品をつくろうと考えていて、今後もこのテーマで制作を続けていきたいです。

――最後に、今後目指していることを教えてください。また、来年の応募を考えているみなさんにメッセージもお願いします!

素晴らしい賞をいただいた今でも、まだ自分が作家だという実感はありませんが、これからも絵は描き続けていきたいと思っています。まだ自分の表現が定まっていないため、これからも制作しながらどんどん発見していきたいですし、自信が持てる手法を確立したいです。また、日本で個展を開催した経験がないのでいつか実現できたらいいなと思っています。

こういった公募コンクールに応募することは自分と作品について客観的に考えるいい機会ですし、自分を信じて描き続ける強さが鍛えられると思います。ぜひ挑戦してみてください。

FACE展2021 概要

●会期
2021年2月13日(土)~3月7日(日)10:00~18:00
※入館は閉館30分前まで、月曜休館

●会場
SOMPO美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1)

●観覧料
700円/高校生以下無料
※学生は学生証・生徒手帳を提示のこと
※障害者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方は無料(詳細は公式ホームページにて確認のこと)

FACE2022 募集概要

●応募期間
2021年9月13日(月)~10月17日(日)

●賞
グランプリ(1点) 賞金300万円
優秀賞(3点) 賞金50万円
他賞あり

●募集内容
未発表の平面作品

募集要項
https://compe.japandesign.ne.jp/face-2022/

公式ホームページ
https://www.sjnk-museum.org/

取材・編集・文:石田織座(JDN) 撮影:里永愛

関連リンク

関連記事