ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 「Cinematic Tokyo」部門の魅力とは?東京を舞台にショートフィルムを制作する、2人の映像作家に訊く1 / 2 [PR]
米国アカデミー賞公認、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(以下 SSFF & ASIA)」。1999年より毎年開催され、22回目となる今年は新型コロナウイルス感染拡大のため、9月に延期し行われ、112の国と地域から集まった作品の中から約200作品を上映およびオンライン会場より配信を行った。
世界中から様々なショートフィルムが集まる同映画祭の「Cinematic Tokyo」部門は、東京をテーマとしたショートフィルムを募り、東京という街の魅力を発信することを目的として、2017年に設立された。本年度は、オーストラリア出身で13歳の頃より映画制作を始めたチャールズ・リチャードソンさんの『グッピー』が優秀賞を受賞。若い外国人のカップルを主人公に、旅行先の東京で終電に乗り遅れ、離れ離れになってしまった2人の心の機微を丁寧に描いている。
本インタビューでは、東京の多彩な魅力をショートフィルムにして発信する「シネマスポーツプロジェクト」のオリジナルショートフィルムとして製作された、「Cinematic Tokyo」部門特別上映作品『This is Tokyo』を監督した鈴木勉さんと、チャールズ・リチャードソンさんのそれぞれに、作品の制作背景や、ショートフィルムの題材としての東京について考えを語っていただいた。
「あらゆる扉が開いた」2008年のグランプリ受賞
──最初に、これまでの鈴木監督の経歴と現在の活動について教えていただけますか?
鈴木勉さん(以下、鈴木):元々は会社に属していて、ミュージックビデオを撮ったり、テレビCMのディレクターとして映像を制作していました。2000年からフリーランスになって、テレビCM以外にも、企業のプロモーションビデオなど、様々な映像を撮っています。
──では、フリーランスになってから、SSFF & ASIA 2008年のグランプリ作『胡同の一日』を作られたんですね。
鈴木:そうなんです。けど、そもそも「映画祭に応募しよう」とか「映画を作ろう」と考えて作り始めたわけではないんです。仲のいいプロデューサーと「自分たちが本当に作りたいものを作りたいね」とはずっと話していて、自主制作という形で撮り上げたのが『胡同の一日』でした。
せっかく作ったので「どこか映画祭に応募しよう」となり、一番最初に応募したのがクレルモン=フェラン国際短編映画祭でした。招待していただいたので現地に行き、そこで初めて多くの短編映画に触れたんですね。そこで感激してしまって。
──ショートフィルムならではのよさを感じた、ということでしょうか?
鈴木:フランスに行くまでは、短編映画は長編映画を短くしたもの、もしくは「こんなものを撮りましたよ」というひとつのショーリールとして使えるもの、というイメージを持っていたんです。けれど、現地では短編だけを撮っているような作家の方もいらして、「生涯ずっと短編を作り続ける!」というお話をされていて。僕の認識とは全然別のものを作ろうとしているんだな、と痛感したんです。
短編映画は、日本で言うなら俳句みたいなものというか。五七五という限られた語句の中に物語を埋め込むのと同じで、10分や15分の中で何を詰め込み、何を取り除いた上で、何を語るのか、というものだと。非常に魅力的だと思いました。
──その後、SSFF & ASIAでグランプリを受賞されるわけですが、賞がその後のキャリアに与えた影響はありましたか?
鈴木:キャリアと言っては大げさですが、「あらゆる扉が開いた」という感覚でしたね。それまでは広告を主にやっていたので、受賞したことでこれまで会えなかった映画会社の方や、まったく別のメディアの方、もっと言えば行政の方にまで、お声がけいただけるようになって。受賞したことで「国際映画祭のグランプリ監督」という看板ができたので、本当にあらゆる扉が開いていった感じです。そうやって出会い、つながりができた方々との関係性は一番の財産ですね。
作り手の視点から見る、作品の舞台としての東京
──今年は、東京の多彩な魅力をショートフィルムにして発信する「シネマスポーツプロジェクト」のオリジナルショートフィルムとして『This is Tokyo』を監督され、「Cinematic Tokyo」部門にて特別上映されました。制作の背景についてお聞かせいただけますか?
鈴木:東京都を舞台にスポーツを絡めたショートフィルムを作る企画に、ショートショートフィルムフェスティバルの実行委員会からお誘いいただき応募したところ、ありがたいことに選んでいただけました。通常のショートフィルムでしたら、「これを作りたい」とか「こういった物語を語りたい」というところから広がっていきますが、今回は東京の観光地的な場所やスポーツを入れるなど、要素がいくつか決まっていたので、そこをどうまとめるか考えましたね。物語として興味を惹くものを作ろうと、10稿くらい練り直しました。
──東京を題材にした映像作品はいろいろとありますが、鈴木監督が好きな作品はありますか?
鈴木:古くは『東京物語』、黒澤明監督の『野良犬』とかがありますね。中でも、僕は『007は二度死ぬ』が好きなんですよ。東京が舞台にもなっていて、ホテルニューオータニが出てきたりしているんです。最近で言うと、『ロスト・イン・トランスレーション』、『横道世之介』あたりでしょうか。すごく東京らしさを捉えているな、という印象がありますね。
──今年「Cinematic Tokyo」部門で優秀賞を受賞した『グッピー』も東京が舞台です。鑑賞されて、いかがでしたか?
鈴木:「東京でショートフィルムを撮りました」というと、例えば渋谷のスクランブル交差点のような、通常はいわゆる“ザ・東京”といった場所が出てくるんですよね。今回もちらっとは出てきますけど、いわば「別にどこの交差点でもいいじゃないか」ぐらいの感じで撮っている。東京で撮ってはいるけど、ある意味、あえて東京らしさを象徴するものがない感じで撮るのが面白いなと、作り手の視点として観ていましたね。しかも、場面のほとんどが夜で、仄暗いようなバックグラウンドがメインという。だからこそ、主人公である恋人たちの心の機微だったりが映し出されていたのかもしれないですね。