トップクリエイターを刺激し続ける「CSデザイン賞」[1] 一般部門編 [PR]
すっかり一般名称化している“カッティングシート”という言葉だが、実は1960年代にこの素材を開発した中川ケミカルの登録商標だ。同社が実施しているコンペが「CSデザイン賞」。「登竜門」では、2回にわたってこの賞を特集し、一般部門/学生部門それぞれの魅力を紹介する。
節目の第20回に寄せる中川ケミカルの想い
CSデザイン賞はカッティングシートに特化したコンペで、2年に1度のビエンナーレ方式で開催されている。デザイン業界を代表する著名審査員による審査や、中川ケミカルのショールーム「CSデザインセンター」での受賞作展示が魅力だ。
賞のはじまりは1982年。カッティングシートを適切に活用したクリエイティブな発想やデザインに光を当てることが企業責務だとした中川ケミカルが、故・勝見勝さんの協力を得てスタートさせた。
以来36年続き、今回で第20回を迎える。節目の開催に、中川ケミカル社長の中川興一さんはこう語る。
今回から一般部門に五十嵐久枝氏、服部一成氏、そして学生部門に色部義昭氏を審査員として新たにお迎えして臨むこの第20回CSデザイン賞。個性溢れる審査員それぞれの視点、感性によって、今回はどんな作品が選ばれるのか。東京オリンピックに向けて世界からの注目度が高まる中で、両部門ともに海外の方の作品も増えたら面白いかなと思っています。
一般部門は、現物作品の良さが伝わり易い写真と構成が一つの鍵になるかと思います。学生部門は、カッティングシートを実際に切って貼って遊んでみたら意外な発見があるかもしれません。ショールーム「CSデザインセンター」もご活用ください。
今回もたくさんの素敵な作品のご応募を楽しみにしています。
受賞者インタビューから解き明かす カッティングシートの可能性
CSデザイン賞には一般と学生の2部門が設けられており、この記事では以降、一般部門について紹介する。
一般部門は、カッティングシートおよびそれに準ずる装飾用シート素材を使用し、2016年4月1日から2018年3月31日までに実際に製作された作品が対象。応募資格やテーマに細かな制限はない。
審査員は原研哉さん・佐藤卓さん・石上純也さん・五十嵐久枝さん・服部一成さん。各業界を代表するトップクリエイターが揃っている。
これまでどのような作品が選ばれているのだろうか? 昨年JDNで行った「第19回CSデザイン賞」受賞者インタビューから解き明かしていこう。
第19回 一般部門グランプリ「ハイツYの修理」
「ハイツYの修理」は築20年超の賃貸住宅の一室を改修するプロジェクトだ。一見してどこにカッティングシートが使われているかわからない異色の作品で、審査の過程で話題を集めた。
主に使われているカッティングシートは「IROMIZU」という透明色の製品で、澄みきった“色水”のような美しい表情を見せる。合板に貼ると、合板の特性である経年変化を透過しつつ、経過してゆく時間を可視化。また、貼られた「IROMIZU」により、合板表面に室内外の風景の映り込みや光の反射が現れる。通常の木材の仕上げを超えた表現だ。
受賞者の木村吉成さん(木村松本建築設計事務所)はこの斬新な使い方を次のように説明する。
カッティングシートという素材を“読み替える”ことで、広がる可能性
「IROMIZU」を使うと、(貼られた)素材の表情を生かすということを、コンマ何ミリの単位でできる。それはこの物件を通して発見できたことで、ものの見方をかなり変えられました。<中略>僕たちは「素材そもそもの使い方ではない使い方をする」というのをよくやります。この場合も(カッティングシートが持つ)平滑な面に貼って向こう側が透過し、そこに色がついて重ねられるという属性だけを取り出すと下地がガラスである必要はなくて、合板でも、石やメラミンに貼ってもいいはずです。いろんな材料が、そんなふうに読み替えできるんです。
【CSデザイン賞受賞者インタビュー】あらかじめ間違っておくことで、建築は自由になる- 木村松本建築設計事務所
https://compe.japandesign.ne.jp/special/2016/10/24203/
第19回 一般部門準グランプリ「MIDTOWN CHRISTMAS 2014」
東京ミッドタウン2014年のクリスマスイベントを彩った店内グラフィック。館内各所のガラス面を繊細なイラスト文字で装飾した。また、50mのディスプレイショーウィンドウはメインビジュアルの文字をプリントしたカッティングシートで覆い、文字の形で窓を作りディスプレイ空間に。
作品を制作した関本明子さん(ドラフト)は、制作の工夫やカッティングシートについてこう話す。
彫刻のよう/よく考えられた色がきちんとそろえられている
カッティングシートは平面ですが、シートを削ってつくる感覚は、彫刻のように感じます。印刷とはまったく違った立体的な物質感がある印象です。<中略>(カッティングシートを使って感じたのは)よく考えられた色がきちんとそろえられているということです。ベースとなっているカラーシステムの中から必要な色を均等に選ぶだけではなく、そこにさらにデザイナーの感性を生かし整理されていることで、使いやすい色や必要な色がラインナップされていると思います。
【CSデザイン賞受賞者インタビュー】表現に込めるのは「温かさ」と「上質感」- 関本明子
https://compe.japandesign.ne.jp/special/2016/11/24303/
受賞作はいずれも、カッティングシートが持つ色、加工性、テクスチャ感といった強みを最大限に引き出している。
クリエイターを刺激し続ける「CSデザイン賞」
CSデザイン賞は故・内田繁さんや永井一正さんなどの著名なデザイナー・建築家から、応募するクリエイターたちまで、多くの人たちに支えられて回を重ねてきた。
関本さんはCSデザイン賞の存在を以前から知っていたそうで、昨年の応募理由について「デザイナーの表現の幅が広がることにもつながり、カッティングッシートをもっといろいろな人に知ってもらえるきっかけをつくれたら、と思ったことが応募の決め手でした」と語っている。
クリエイターの制作意欲を刺激し続けるカッティングシートとCSデザイン賞。今年はどんな作品が見られるのだろうか?
CSデザイン賞 一般部門 募集要項
賞:グランプリ(1点)賞金100万円・トロフィー・賞状 ほか
募集期間:2017年12月1日(金)~2018年3月30日(金)
募集要項:
https://compe.japandesign.ne.jp/cs-designaward-ippan-2017/
次回は学生部門を特集する。2018年1月公開予定。