若手作家の登竜門「学生限定・立体アートコンペ AAC 2017」最終審査会レポート2 / 2 [PR]
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東京オペラシティで行われた表彰式・懇親会には最終審査を終えた3名のほか、一次審査で入選した8名の学生も参加。学生、美術関係者、アーバネットコーポレーション関係者、協賛企業関係者などが勢揃いし、華やかな祝いの場となった。
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懇親会は華やかなパーティーの場であり、プレゼンテーションの場でもある。招待された入選以上の学生作家たちはポートフォリオを持参し、見せ合った。中央はアーバネットコーポレーションの服部社長
編集部は懇親会の場で、入賞の3人にお話を伺った。
入賞者インタビュー「学生の皆さん、ぜひチャレンジして」
金さん「漆作品の可能性を見せることができた」

金俊来(写真中央):1979年生まれ。2007年に韓国の建国大学絵画学部を卒業、2015年に京都市立芸術大学大学院を修了。現在は京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程漆工専攻に在籍
―― 最優秀賞、おめでとうございます。今のお気持ちは?
とても嬉しいです! 小さなサイズの工芸品が多い漆作品ですが、大きな立体アートが作れるということを多くの人や後輩たちに示せたと思っています。また、自然素材の漆や螺鈿は落ち着いた色合いで、高年齢層向けというイメージがあると思いますが、今回は華やかな色で若い方向けの作品を作れました。これからもさらに表現に取り組みたいです。
―― このコンペ最大の魅力はどういった点だと思いますか?
マンションエントランスという実在の公共空間に、実際の作品が設置される点だと思います。舞台が仮想空間ではないので、より本格的に自分の作品と向き合う機会になると思います。
―― 今後応募される方へひとこと!
自分の作品について客観的に考えられるチャンスです。学生だけのコンペということも大きなメリット。学生の皆さん、ぜひチャレンジしてみてください。
後藤さん「新たな感情とともに新たな作品が生まれる」
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後藤宙(写真左):1991年生まれ。2016年に東京藝術大学美術学部を卒業、同年より東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻に在籍
―― 今のお気持ちは
悔しいです。もちろん優秀賞は嬉しいですが、4回目の挑戦で最終審査に進み、自分自身も最終学年。このラストチャンスに最優秀賞を手に入れる気持ちでいたのでとても悔しい! でも、悔しい時の方がいい作品が作れるようにも思っています。
―― 悔しい時の方がいい作品が作れる、というのは?
本質的には、アートは「勝ち負け」という線引きでは評価されない。評価はグラデーションです。でも今回はコンペに出て勝ちか負けかで評価され、負ける経験を得ました。このことで、普段自分の中にはない感情が生まれ、新たな作品が生まれるかもしれないと思います。
―― このコンペの魅力はどういった点でしょうか?
制作費、審査員、賞金はもちろん、なにより実際にマンションに設置されることがとても魅力的だと思います。
―― 今後応募される方へひとこと
私は4回目の挑戦でやっと入賞できました。諦めずに挑戦し続けてください。
土井さん「石材への想いが報われた」

土井彩香(表彰式の様子):1989年生まれ。2015年に多摩美術大学美術学部彫刻学科を卒業、2017年に東京藝術大学大学院美術研究科修士課程を修了。現在は東京藝術大学大学院美術研究科研究生彫刻専攻に在籍
―― コンペ受賞により、どのようなことを得たでしょうか。
自分の研究素材である石材に、どこか自信のないところがありました。「昔は石材がよく使われたが、今は軽くて扱いやすい素材が良い」などと言われてきたので。それでも強い思い入れを持って続けてきたことが受賞により報われた気がして、卒業後も続けるのだと強く思えました。今後も頑なにならず、自分なりに様々な表現を探求し積極的に発表したいです。
―― このコンペの魅力は?
例えば住居者への配慮など、普段の制作とは違う考え方が学べます。また、賞金の高さはもちろん、搬入費の支給や事務局のサポートなども充実していてとても良いです。
―― 今後応募される方へひとこと
「きっとこれはダメ」「私は経験が浅いから」……など尻込みせず、マンションのエントランスに置くことを念頭に置いて作品を考え、楽しんで挑戦してほしいです!
若手を育て、社会を創る存在に 進化を続けるAAC
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土井さんのポートフォリオに興味津々の審査員たち。こうした縁もAACの魅力だ
今回で17回を迎えたAAC。年々レベルが上がっており、今年はついに応募作品数が100を超えた。受賞者はみな口をそろえて「挑戦してほしい」と語る。
主催のアーバネットコーポレーションは年間数棟のマンションを手掛けており、全ての物件にアート作品が設置される。このコンペで最優秀賞を逃しても、条件が合えば別物件に採用されたり、新規で制作を依頼するケースもあるという。AACでの縁が将来の活動につながる可能性が広がっている。
11月2日、AACは企業メセナ活動の顕彰「メセナアワード」にて優秀賞(アートの玄関賞)を受賞した。プロへの道が極めて険しい立体アート分野で学生にチャンスを与える前例のない活動であること、経営資源を活かした継続的な支援によって若手作家の育成に貢献していることが、豊かな社会を創る活動として高く評価されたのだ。
進化を続け、来年以降もさらに盛り上がることが予想されるAAC。彫刻や立体アートを志す学生の方は、ぜひチャンスをつかんでほしい。
取材・構成・文:猪瀬香織(JDN)