「第16回 学生限定・立体アートコンペ AAC 2016」最終審査会レポート&受賞者インタビュー1 / 2 [PR]

「第16回 学生限定・立体アートコンペ AAC 2016」最終審査会レポート&受賞者インタビュー
今年開催されたAAC2016は「(仮)蔵前Ⅱプロジェクト」のマンションのエントランスに飾る作品を募集。審査員に服部信治氏(アーバネットコーポレーション代表取締役社長)、秋元雄史氏、望月かおる氏、内田真由美氏を迎え、2016年5月2日~7月7日の間に集まった応募作品は62点(応募者数57名)。2016年7月20日にプロフィールを伏せて行う厳正な一次審査が行われ、古川千夏さんの「GEMME」、中尾俊祐さんの「Corona」、堀田光彦さんの「朝の輝き」が最終審査に進んだ。

今回登竜門編集部が、普段一般の人へ公開していない最終審査会と表彰式、懇談会に参加し、最優秀賞と優秀賞を受賞した3名にインタビューを行い、作品の想いを聞いてきた。

最終審査会

最終審査に進んだ3名は主催であるアーバネットコーポレーションと、実際に作品を設置することになるマンションに視察を行い、数回の打合せを行いながら、作品制作を行っていく。審査会当日は、作品をマンションのエントランスに設置し、作品の前でクリエイター自身がその作品についてのプレゼンテーションを行い、作品だけではなく、エントランス空間との調和、安全面なども考慮し、審査が行われた。

最初にプレゼンテーションを行った古川千夏さんは自身の作品について、以下のように話した。

作品「GEMME」のプレゼンテーションをしている古川千夏さん

作品「GEMME」のプレゼンテーションをしている古川千夏さん

モチーフとしている菊の模様は、高貴なイメージもありますが、愛情や真実、信頼などの意味もあり、昔から親しまれている模様の1つでもあるので、人が行き交う公共の場としてふさわしいと思い、モチーフに選びました。今作は有線七宝技法を用いて制作しますが、一般的な有線七宝技法とは異なる工程で、「研磨をなくし、銀線を突出させる」という表現方法で制作します。銀線が出ている状態が美しいなと思ったので、銀線の高さまで釉薬を入れないこのような技法で制作しました。銀線、銀箔、釉薬がそれぞれ違った輝きを放ち、見る角度や光の加減によって、作品の表情も変化してみえます。

質疑応答では、審査員から作品の制作工程や設置方法について鋭い質問が投げかけられた

質疑応答では、審査員から作品の制作工程や設置方法について鋭い質問が投げかけられた

1つ7回前後、全部で57個の花がついており、すべてあわせて、約400回窯に入れて焼いています。タイトルの「GEMME」はフランス語で宝石という意味で、宝石のように輝きを放ち、人と人のつながりをもつことで生活に輝きが増すようにという意味を込めています。

続いて登場したのは中尾俊祐さん。

作品「Corona」のプレゼンテーションをしている中尾俊祐さん

作品「Corona」のプレゼンテーションをしている中尾俊祐さん

私の作成したオブジェクトのテーマは、東京都の都会の忙しさのなかで癒しを与えるオブジェクトを考えました。帰ってくるマンションの住居者に癒しを与えることを「柔」、これから出かける住居者へモチベーションをあげる活力を与えることを「剛」ととらえ「柔と剛」のオブジェクトを表現しました。徐々に力を増していくイメージと手を広げて人を出迎えてくれるようなイメージの両方をもってもらうように下からかみ合った3本のラインが上にあがるにつれて太くなるようなフォームにしました。全体としての形状はシャープに見えるように、逆円錐形をイメージしています。

質疑応答だけでなく、審査員が作品を近くで見て触って、質感や安定性を確かめる場面も

質疑応答だけでなく、審査員が作品を近くで見て触って、質感や安定性を確かめる場面も

このオブジェは光の当て方によって影ができて、台座の根元を中心として、日食時のコロナのように見える作品になっています。素材はステンレスを使い、光を大きく反射して透明感のある質感にしています。

最後に登場したのは堀田光彦さん。

作品「朝の輝き」のプレゼンテーションをしている堀田光彦さん

作品「朝の輝き」のプレゼンテーションをしている堀田光彦さん

この作品は朝顔をモチーフにして制作しました。朝顔は台東区の区の花であり、入谷や御徒町で江戸時代に広く栽培されていて、人々に親しまれてきた花です。その花を今回自分なりに解釈して作りました。このマンションの空間は、金のスリットが入っているなど、緊張感がありギラギラしていたので、この空間と調和しつつ癒しを発信できるようなエントランスにしたいと思っています。また、応募時のデザイン案は一見地球に見えるような青色と緑色を使い分けた作品を想定していたのですが、このエントランスを見学したときに図面にみる以上に空間がはっきりしていたので、青色と緑色を区別せず全体を青系統の1色に変更しました。

作品の置き場所を白い背景にしたほうがいいのではないか、という意見があがり作品を移動して検討した

作品の置き場所を白い背景にしたほうがいいのではないか、という意見があがり作品を移動して検討した

物理的に一人では難しい作業は研究室の仲間に手伝ってもらい、原型制作や仕上げ作業などはほとんど一人でやりました。今回の作品は大きいので蝋原型を4分割にして4つの鋳型を作り、湯道などを切り除いた後に溶接して制作しました。3mmほどの薄い葉っぱの全てに金属が上手く流れるようにするのは難しかったです。


プレゼンテーション後の質疑応答では、安全面を考慮した台座との設置方法についての質問が全員に投げかけられていた。また、制作過程やその際のエピソードなど、作品に関する質問がある一方で、クリエイター自身の今の活動や、今後の取り組みについての質問も多く、作品制作にたどり着くまでの背景にも関心が高まった。そして、一通りの質問が終わると審査員が近くまで作品を見にいき、実際に触れて審査が行われた。最終審査が終わったあとは、表彰式と懇談会が行われる会場へ移動。

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