結果発表
2017/05/25 10:00

YouFab Global Creative Awards 2016

応募作品数:23点
受賞作品数:196点
主催:ヤマハ株式会社
※ここでは、上位4点をご紹介します

GRAND PRIZE、Yamaha AWARD

OTON GLASS
株式会社OTON GLASS
OTON GLASS
作品コメント(一部抜粋)
OTON GLASSは、視覚的な文字情報を音声に変換することで、文字を読むことが困難な方の「読む」行為をサポートするスマートグラスです。視点と同一位置にあるカメラで撮影した文字を、文字認識技術でテキストデータに変換、音声として読み上げることで、ユーザーは文字情報を理解することができます。

OTON GLASSを開発した動機は、私の父の失読症でした。2012年に父が脳梗塞を発症し、言語野に障害が残りました。会話することには問題は無く、文字を読む能力だけが低下してしまいました。私は、この父の病気をきっかけに、「読む」ことをサポートするデバイスを開発することに決め、OTON GLASSを開発しました。
審査コメント(一部抜粋)
社会課題解決型のデバイスであり、オープン・デザインのプロジェクトとして、コミュニティを巻き込みながら開発が続けれられている点が、非常にFabらしいと感じられる。ただ、ウェブ上に公開されるオープンなハードウェアの提案は、Fabと並走するように展開してきたものの、そろそろ萌芽期(=とりあえずオープンにしてみるという実験段階)を終え、本格的にその結果と価値を一旦は評価しなければいけない段階に来ているのではないだろうか。オープンにすることで、単純に「技術が拡散して利用者が増える」だけでなく、共感する志を持った技術者が集って改良を加えることで、「技術がよりよく進化する」ことが起こりうるかどうか、が重要なカギだと思います。本プロジェクトには、より発展するオープンデザインの値についた可能性を体現してくれることを期待します。(田中浩也)

FIRST PRIZE

干渉する浮遊体
干渉する浮遊体
干渉する浮遊体
作品コメント
シャボン玉は、はかなく消えるもの。そのようなイメージを打ち破り、自然の美しさに対する認識を問い直す作品です。

上空から降り注ぐシャボン玉がガラスの器の中に浮かび、シャボン玉の揺れや破裂に音と映像が呼応します。シャボン玉の美しさ、生まれてから消えるまでの微細な変化や儚さを空間全体から感じとることができます。

ガラスの中にシャボン玉を浮遊させることで膜を安定させ、全体をモノクロの光環境で包むことで、シャボン膜本来の美しさを引き出しています。膜の美しさを最大限引き出したことで、シャボン玉の動きを上空のカメラで認識し、音や映像を同期させることが可能となりました。それにより、シャボン玉の美しさをより際立たせています。

シャボン玉は誰もがその美しさを知っていると思います。しかし本作品で見られる美しさは、我々の想像を超えます。周囲の自然の中にも、これまで思っていた以上に美しい本来の姿が潜んでいるかもしれません。
審査コメント(一部抜粋)
本作は、茨城県北芸術祭の枠内で2015年秋に行われた「アートハッカソン」で異分野の専門家がチームを結成、企画および試作を含めたプレゼンテーションで採択され、芸術祭出展作品として制作されたものである。この芸術祭のキュレーターとして担当した作品でもあるため、私からのプッシュは控えめにしたが、他の審査員から高い評価を得ることができた。ガラスの器の中、落下せずに浮遊するシャボン玉は、繊細なその動きに呼応して変化する音や映像とともに、かつて見たことのない幻想的な世界に人々を誘う。本作は、アートとサイエンスを見事につなぎ、自然のもつ美をあらためてクローズアップする契機ともなった。最後に、ハッカソンで生まれた作品で65日間という長期オペレーションを安定的に乗り切った事実も特記しておく。(四方幸子)

STUDENT AWARD

IrukaTact: Submersible Haptic Glove
Aisen C. Chacin
IrukaTact: Submersible Haptic Glove
作品コメント(一部抜粋)
IrukaTactは、水中に沈んだ物体の位置を特定するのに役立つ「水中型触覚探査グローブ」です。イルカのエコーロケーション(反響定位)に着想を得て作りました。超音波距離測定器を使い、水中や浸水区域の地形を探査し、ユーザーの指先に信号を発信します。信号の強さは、ユーザーと物体の距離によって変わり、物体に近いほど強くなります。

指先のパッドには、繊細な動きもとらえるレセプターが取り付けられています。信号は、水の粘性を利用して作っており、ユーザーは振動や張力を感じることができます。モーターが周囲の水を吸い、指先のパッドの上を水流が流れ、ユーザーは、蛇口から流れる水に指を当てているような触感を感じます。

IrukaTactは、水中でも自然な感覚で手を使えるようにデザインされています。人差し指、中指、薬指に装着して、親指と小指は自由に動かすことができます。
審査コメント(一部抜粋)
学生部門賞受賞おめでとうございます! 若いデザイナーやクリエイターが3Dプリンターを使い、社会の課題を解決し、インパクトを与えるものを製作していることを証明するような作品です。今後研究を続けていき、より発展したものを見られるのを楽しみにしています。Iruka Tactはまだ始まったばかりですが、素晴らしい出発点だと思います。(Natalia Arguello)

GENERAL AWARD

This New Technology - The World's First Analog 3D Printer
DANIEL DE BRUIN
This New Technology - The World's First Analog 3D Printer
作品コメント
世界初のアナログ3Dプリンター、“THIS NEW TECHNOLOGY”は、皮肉なデジタル3Dプリンターの引き立て役、と言えるでしょう。3Dプリンターの魅力は素早く効率的にモノを作成することですが、3Dプリンターで作られたプロダクトは「手作り」にはなりません。それらは技術が産み出した単なる「製品」に過ぎないのです。

モノをつくるワクワク感を味わい「自分で作った」ことを証明するために、私はアナログの3Dプリンターを開発しました。このプリンターを使えば、手作り感をおぼえながら、個性溢れる昔ながらの陶器を作ることができます。約10kgの重りを吊るすと、その重りが重力に引かれる力を動力として、3Dプリンターが動き始めます。この重りのおかげで、自分自身が製作のプロセスに関わることができます。製作しているのは電力ではなく、自分自身なのです。
審査コメント(一部抜粋)
このアナログ3Dプリンターのプロジェクトは、様々な可能性を実現させました。高度な技術を使わなくてもイノベーションは起こせること、重力のみでエネルギーを作ることができること、金棒を曲げてプログラミングができること、プラスチックをセラミックで代用できること、電気を使わずとも美しい機械仕掛けで機械が動くことです。私はこのプロジェクトによって、物作りの手法というものを考えさせられました。また、このプロジェクトは、3Dプリンターが数世紀前から発明可能であり得たことの証拠にもなるかもしれません。木製のサングラスを作るために虫眼鏡を使ってレーザーカットを行ったマーカス・カイザー(Markus Kayser)の作品を思い出しました。(Nicolas Lassabe)
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