第10回 惑星地球フォトコンテスト
応募作品数:338点(一般・大学生部門:310点/中学・高校生部門:28点)
受賞作品数:12点(一般・大学生部門:11点/中学・高校生部門:1点)(佳作を除く)
主催:一般社団法人日本地質学会
一般・大学生部門
最優秀賞
- 作品コメント
- 2018年11月17日は、オンネトー国設野営場から雌阿寒岳を目指して登山しました。登山開始から深夜です。実は前週も同じ時間帯の雌阿寒岳に登っており、2週連続です。雌阿寒岳から阿寒富士にかけての稜線にさしかかったとき、いつもと違い噴煙が多いことに気がつきました。11月20日以降にポンマチネシリ想定火口を震源とする火山性地震が増加し、23日は噴火警戒レベルが2に引き上げられたので、その前兆かもしれません。写真左側の噴煙がポンマチネシリ想定火口、右側の噴煙が中マチネシリ想定火口。左側の阿寒富士から雌阿寒岳の頂上までの雄大な地形を入れるため、フルサイズの魚眼レンズを使用しました。撮影は、強風・微風の中、激しく舞い上がる両噴煙でしたが、月が見えた一瞬、シャッターを切りました。手前側の赤色から黒色の火山土質、空の青さ、星、氷結した青沼など質感も表現してみました。
- 審査コメント
- 阿寒岳は日本百名山の一つで、月齢10の月が雌阿寒岳の火口を逆光気味に照らしています。魚眼レンズを使用していますが水平にセッテングしているために歪みがなく、たなびく白煙、その向こうに見える阿寒富士、雲海の上に浮かぶ月と星々、広がりがあって気持ちの良い作品です。4500万画素の高画素カメラとシャープなレンズの組み合わせで撮影されており、大伸ばしでの作品をじっくり見たいものです。(白尾元理)
優秀賞
- 作品コメント
- ギリシャのテッサリア平原が尽き、ピンドス山脈が始まる境にカルスト台地が浸食をうけた「メテオラ」がある。巨大な柱のような岩峰が何本も聳え立ち、その岩峰の上に修道院が建っている。14世紀にセビリアの侵攻による混乱を避けた修道士たちが俗世との関わりを断ち切って共同生活を始めたのがその始まりとのこと。「メテオラ」とは、ギリシャ語で「中空の」を意味する「メテオロス」からきていて、流星の「メテオ」と同じ語源だ。
- 審査コメント
- メテオラはギリシャ北西部にあり、石灰岩の岩峰群の上には14~16世紀に修道院が建てられました。1988年には世界遺産に登録されています。従来の応募作品には「ジオ+星景」という組合せはありましたが、この作品ではさらに歴史が加わりました。月齢13の月光に照らされた石灰岩の岩肌、修道院の建物、遠くの街明かりからは現代人の営みなどさまざまな思いを辿ることができます。(白尾)
- 作品コメント
- 小笠原父島。一度も陸続きになっていない海洋島です。水中で吹き出したマグマが急速に冷却されこのような不思議な模様に。枕状溶岩が壁一面見える位置と星を写したくあえて月が出ているときを狙いました。砂浜がレフ板替わりになり月光がこの溶岩の壁を優しく照らしてくれました。雲が流れている感じが時間の経過を表しているように思って撮りました。圧倒されるようなパワーがありとても好きな場所です。
- 審査コメント
- 小笠原諸島の父島周辺には枕状溶岩の露頭がたくさんありますが、海に面した急崖が多く、陸上で見やすい場所は限られます。その数少ない場所が小港海岸で、ここでは多くの写真が撮影されています。この作品も上弦過ぎの月光と超広角レンズを使ってうまく撮影しています。低空に白雲があったのが少し残念でした。(白尾)
ジオパーク賞
- 作品コメント
- 湯河原の新崎川の上流、沢沿いに登っていくと紫音の滝が現れます。その滝の横からロープにそって登ると柱状節理の岩盤からに流れる滝があります。六方の滝は女性的で優しい水流でした。
- 審査コメント
- 六方の滝は、箱根火山のカルデラ形成期噴出物である幕山溶岩にかかる落差20mの滝です。作者は望遠レンズで滝上部をクローズアップしました。滝の飛沫に濡れた柱状節理の岩肌が美しく、後方の新緑と相まって落ち着いた雰囲気の作品となっています。(白尾)
日本地質学会会長賞
- 作品コメント
- 四角い形状とモザイク状の割れ目が面白くてシャッターを切りました。噴石の大きさは、一辺40cmくらいです。雌阿寒岳はいくつかの火山からなり、その一つのポンマチネシリは現在も噴気が立ち上がる活火山で、最近では2008年に小規模な水蒸気噴火が発生しました。周辺にはマリモで有名な阿寒湖や風光明媚なオンネトーなどの観光地のほか、泥火山“ボッケ”や生きている酸化マンガン鉱床“湯の滝”などの地質学的な見どころもあります。
- 審査コメント
- この作品は、最優秀賞と同じ雌阿寒岳で撮影されたパン皮状火山弾です。肩の力を抜いてあっさりと撮影したようにみえるのがこの作品の魅力です。火山弾の落下時には割れ目がなく、落下後に内部が膨らむ結果、表面にこのような割れ目ができるのです。火山学の教科書に使いたくなるような作品です。(白尾)
ジオ鉄賞
- 作品コメント
- 沖積平野の上に細長く伸びる地形とその下を潜る短いトンネル、そしてそこには「大砂川」の文字。天井川は堤防の建設という人間の力と、土砂の供給と堆積という自然の力が合わさって出来上がった特異な河川であり、滋賀県を走る草津線には全国的にも珍しい天井川の下を潜るトンネルが存在します。このトンネルは草津線開業の1889年に建設されたもので、天井川は100年以上も前から形成されていたことが分かります。
- 審査コメント
- 写真はJR草津線三雲-甲西間で柘植方面へ列車を見送っている風景です。平らに見える土手は典型的な天井川の大沙(おおすな)川で、列車が河底をくぐる瞬間を捉えています。河川勾配も読み取れる優れたアングルです。大砂川トンネル(14.5m)は1889年建設当時のまま今に至る煉瓦造りの貴重な河底隧道で、トンネル完成後に電化したため(草津線の全線電化は1980年)、トンネル部分の路盤を低く盤下げして架線を通した様子も作品に写し込まれています。鉄道の旅を通して大地の成り立ちと変化に思いを馳せる「ジオ鉄賞」に相応しい作品でした。(藤田勝代)
スマホ賞
- 作品コメント
- 砂漠を抜けた先に広がるのは、鮮やかな絶景。自然の造形美に目を奪われます。
- 審査コメント
- ムイネーはベトナム南部のホーチミン市からバスで6時間の海岸にあるリゾートで、近くにあるのがこの渓流です。長さ600m、崖の高さは20m程度ですが、この作品では崖上部の赤い地層に目が惹かれます。対岸の緑との対比でより鮮やかに赤が際立ちます。しかし雲が青味をおびていることからもわかるように彩度が強調されており、赤い地層も同様です。過度な彩度強調は実物とかけ離れてしまうのでご注意ください。(白尾)
入選
- 作品コメント
- キラウエア火山山頂の火口では、2018年4月末~5月初に溶岩水位が上昇し、ジャガーミュージアム前の展望台から溶岩湖表面が観察できました。空気で冷却された黒い表面は何枚かに割れ、その割れ目は溶岩の赤い線に囲まれていました。火口壁では時々溶岩のしぶきが上がっていました。その辺りの表面はうねり、引きちぎられて飛ばされていました。
- 審査コメント
- 最初はエチオピアのエルターレ火山の溶岩湖を撮影した作品と勘違いしましたが、キラウエア火山ハレマウマウ火口の直径150m程の溶岩湖の溶岩水位が運良く上昇したときを捉えて撮影した作品でした。このように撮影できたのは最近数十年間ではわずか数カ月だけ。その後、南東山麓からの割れ目噴火によってキラウエア山頂部は陥没し、この溶岩湖も消滅しました。(白尾)
- 作品コメント
- 北海道胆振東部地震発生の7時間前の2018.9.5。午後8時撮影です。この夜は雷が頻繁に発生してその光が岩肌を照らすと共に。月明かりのない空を明るくしました。とても不思議な夜でした。
- 審査コメント
- 昨年は昼の仏ヶ浦で最優秀賞を獲得された作者が。今年は夜の仏ヶ浦を応募されました。夜の仏ヶ浦に行くには長い階段を降りなければならず。潮の満ち引きにも注意しなければなりません。やはり土地勘のある地元の作者ならではの作品です。奇岩の間に見える月光がないのに明るい空と雲間からのぞく無数の星。地平線付近の雷光(街明かり?)。夢心地のような作品です。(白尾)
- 作品コメント
- 海岸には玄武岩の柱状節理が広がっていた。海水を浴びその色はますます黒い。奥には荘厳な節理の崖がそびえていた。海と空の動・節理の静のコントラストを高濃度NDフィルターを使うことにより強調した。
- 審査コメント
- 北九州には新第三紀の柱状節理が広く見られますが、生月島の潮俵断崖もその一つです。この作品は濃いNDフィルターをかけて日没直前に219秒の長時間露光をしたものです。そのため波が手前の柱状節理上面をベールのように覆い、バックの海面の波は消されています。遠方には夕日に照らされた柱状節理の崖、雲の動きも表現されて幻想的な作品になっています。(白尾)
- 作品コメント
- 南紀熊野ジオパーク、エリア内の奇岩です。干潮時に現れるひび割れた岩肌から奇岩を撮影しました。遠近法で人物を小さく見せることで、もたれかかった岩をよりダイナミックに表現しました。後ろに垂直に立つ奇岩も引き立て役となって巨大な大砲のように見えました。
- 審査コメント
- 不思議な雰囲気の作品です。モデルが立っている地層はほぼ水平ですが、その上に二つの巨岩が置かれています。夏の正午、トップライトの光線でできた影が巨岩の存在感を強く感じさせます。この巨岩はどこから来たのでしょうか。モデルの立ち位置やポーズも決まっています。(白尾)
中学・高校生部門
入選
- 作品コメント
- 東京都西多摩郡奥多摩町にある海沢三滝の一つ「ねじれの滝」を撮影しました。夏は一面緑の苔に覆われますが、冬は褶曲した層状チャートのごつごつとした岩肌が現れます。
- 審査コメント
- 冬の苔の少なくなる時期を選び、岩肌をはっきりととらえたのは良いアイデアでした。ジオフォトらしく、ねじれの滝をつくる層状チャートの岩相が明瞭に映し出されています。しかし難しいのは露出で、岩肌に露出を合わせるとこのように空が露出オーバーになってしまいます。HDRによって空の部分も描写できれば、より魅力的な作品になったことでしょう。(白尾)