結果発表
2021/10/25 10:00

第1回 つなぎコンペ ─ もちをつくる《学生限定》

受賞作品数:12点
主催:つなぎコンペ実行委員会(株式会社日建設計、ArchiTech株式会社)
※ここでは、優秀賞をご紹介します

優秀賞

子守木 森の大木が街の幼木を守る
小西くるみ・川合布公帆(奈良女子大学 住環境学科)
子守木 森の大木が街の幼木を守る※奈良県立奈良公園の樹木を対象とした取り組み
作品コメント
街の樹木は今、様々な問題を抱えている。そこで、森の木(「つな木」)が、街の木が抱える問題を解決できないかと考えた。この案では、屋外での利用になるため、木材の劣化が見込まれる。しかし、木材の劣化により必要となる交換と「つな木」の組換えやすさが合わさることで、街の木が抱える問題を複合的に解決する仕組みを考えた。森の木が、街の幼木を守りながら、街ににぎわいを生むことを実現する。
受賞コメント
この度は、優秀賞をいただきありがとうございます。私たちが提案した「子守木」が、街の中に実現することをほんとに嬉しく思います。また、学生の間にこのような実現の機会をいただけたことに感謝しまして、たくさんのことを学びながら精一杯頑張りたいと思います。
「子守木」が街に増えていくことで、街の小さな木が、森の木と人の手を借りながら健康に育ち、やがて大きな木となって人の憩いの場となり、街ににぎわいを生む、そんな豊かな緑と活気に溢れた街になっていくことを期待して「子守木」を実現させていきたいです。
審査コメント(一部抜粋)
タイトルとなっているコンセプトをしっかり守りながら「奈良の鹿被害」という地域課題を解決するためのつな木を利用したプロダクトデザインを提案しただけではなく「守っている幼木を育てていくためにはどうするか?」という育成方法や「地域の人たちが街路樹を愛おしむ仕掛けを作っていく」「しっかり大きく育った時にも組み替えることで簡単にフィットできる」というつな木の利点を活かした非常に優れた案だと思いました。
立派な金属製の支柱を建てるより安価なのはほぼ確実でしょうから採用する側にコストメリットがある提案もできると思います。まずは奈良での実現を支援していきたいと思っております。その後、全国の街路樹や公園などの樹木の課題を把握し、それに対応した子守木のデザインを作っていくことでどんどんと広がっていくイメージもできます。

(小友康広)
土と木で編むまちかど擁壁
山本拓海・大沼聖子(早稲田大学理工学術院 創造理工学研究科)
土と木で編むまちかど擁壁
作品コメント
木を介して大地を繋ぎとめる「木製擁壁」は、森の知恵の賜物だと気づいた。これを街に転用し、コンクリートでできた擁壁を木製擁壁に変えていく「まちかど擁壁」提案する。「つな木」のクランプを用いて編むように擁壁を築くことで、素人の施工によりかたちを変えていく「柔らかい土木」が生まれる。まちかど擁壁は街の人々の手で大地に編みこまれ解かれ、また編みこまれる。やがてこの擁壁は緑に覆われ街は森へと近づいてゆく。
受賞コメント
この度は光栄な賞をいただき、ありがとうございました。私たちは普段都市空間の研究をしているため、都市を舞台にしながらも森山までを射程に入れた横断的なアイデアを提示したいと考え、コンペに臨みました。土木という共通する言語を見つけることができ、つな木の特徴を活かした新しいモデルの提案につながって良かったと感じています。
審査員の皆様からも現実的なクリティークや可能性を評価するコメントをいただき、心より感謝申し上げます。構法や構造などのブラッシュアップを重ね、実現性を高めていきたいと考えています。他の作品などからも森や林業、木材について幅広く学びを得ることができ、参加しているだけでも楽しめるコンペでした。ありがとうございました。
審査コメント
この提案は日本全国津々浦々で見られる人工的で無機質な土木景観を、自然により近い「柔らかな土木」に更新していける大きな可能性を秘めていると思います。街の中では、公園や住宅街など高低差があるところはいたる所にありますし、山間部の道路沿いは大小様々な土留めや法面で構成されています。まずは、小さな高低差から実験・実践していき、ゆくゆくは本格的な土木工事でも使用できるようなものに発展できれば非常に画期的だと思います。
また、林業の現場から木材物流の道筋を整えればたくさんの材が使用でき、森林資源の利活用という意味でも有効な出口となり得ます。製材を採った残りを挽き板として用いて、下地の土留めとすることで、丸太一本を余すことなく活用することも可能でしょう。森と街をつなぐまちかど擁壁の可能性を、皆さんと共に知恵を出し合って実現していきたいと思います。(澤 秀俊)
ねあける、森
丹羽悠華(千葉大学大学院 融合理工学府 創成工学専攻 建築学コース)
ねあける、森※新潟県南魚沼市・巻機山麓の人工林を対象とした取り組み
作品コメント
「まち」での暮らしを「もり」の木々が豊かにするように、「もり」の自然を「まち」の人々が豊かにする。それこそが「森+街(もち)」をつくるということではないだろうか。豪雪という過酷な自然環境のなか、期待ほどの成果を得られず見捨てられてしまった「不成績造林地」を敷地として、森と街を影の部分から考えた。
受賞コメント(一部抜粋)
この度はこのような素晴らしい賞をいただき、誠にありがとうございました。本コンペの参加にあたり、森林の抱える問題を知り、向き合うきっかけを得ることができました。建築に留まらず、違う分野の学問に触れられただけでも非常に有意義でしたが、提案に共感してくださり、実現に向けて後押ししていただける機会を得られたことを、なにより嬉しく思います。
私の提案は、他の方の提案と比べても実現可能性という面で非常に様々な人の協力が必要になりますし、専門家の方の声を聞きながら今後さらに磨いていく必要があります。一人だけでは絶対に実現できないことです。長く時間がかかっても、森が人を助けるように人が森を助けるような、街へ遊びに行くように森へ遊びに行けるような、そんな未来のきっかけの一つを作れるよう、今後とも精進していく所存です。
審査コメント
森と私たちの暮らしには長い歴史がありますが、いまだに森のことや木々のこと、また森と暮らしが支え合う方法については、研究が必要であったり、わかっていないこともたくさんあります。
今回の提案「ねあける、森」では、森の現状を観察し、森に人が足を踏み入れるきっかけをつくるものとなると思います。これから、実践や実現に向けて、小さくてもトライして、森のことを少しでも理解する場づくりにつなげていければ、と思います。(奥田悠史)

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