結果発表
2023/11/29 10:00

富山ガラス大賞展 2021

応募作品数:1126点
受賞作品数:9点(入選を除く)
主催:富山ガラス大賞展実行委員会、富山市、富山市ガラス美術館

大賞

植物の記憶
佐々木 類
植物の記憶Photo: Ryohei Yanagihara
作品コメント
私は、存在の記録や保存が可能な素材としてガラスを用い、自分が存在する場所で知覚した「微かな懐かしさ」を作品を通して、探求している。植物採取は、海外から帰国した際の母国への「懐かしさ」の感情の欠如によるリバースカルチャーショックから、五感の記憶を蘇らせる行為として行い始めた。この作品には、訪れた各地で採取した植物が真っ白な灰として、ガラスの中に保存や記録されている。また、ガラスの中には植物を介して、その土地の湿気や雨や空気も、焼成後に泡として視覚化され、保存されている。真っ白な灰が、ガラスを通した照明で照らされることで、灰が透明になり花びらの重なりや器官や葉脈のデティールが浮かびあがる。自分の身近にある自然に興味を持ち、ガラスで制作することで日常の微かなことに気づき、「懐かしさ」を見つけていく。

金賞

極 #12
神代良明
極 #12
作品コメント
私の焦点は、可能な限り最小限の介入で明確な構造体を取り出すことです。

銀賞

光音
ZHENZHENLAB(Taiwan)
光音
作品コメント
12インチレコード盤ほどのサイズのパターンガラスをターンテーブルの上に置くと、パターンのテクスチャーから立ち上がるのは、電子的なビート、心臓の鼓動、ノイズの炸裂、つぶやきなど、異なる周波数や変調をもつ音です。耳を澄ませば、背景で繰り広げられるメロディーまでもが聴こえてきます。ガラスの盤一つひとつがまるで惑星のように、固有のリズムと音の空間の中で瞬いています。伝統的なパターンガラスの視覚、触覚、聴覚の特性とガラス制作のプロセスを用いて、このアルバムは聴く人に驚きと想像力を搔き立てようとするものです。様々なパターンに見出される洗練と変調に耳を傾け、私たちはガラスの惑星の衝突から生まれる煌めきや、聴き手と音の間に創造される宇宙を探求しています。
Dear my creature
佐藤静恵
Dear my creaturePhoto: Okamura Kichiro
作品コメント
網目状に紡ぐことで生まれるガラスの表情や、新しい素材の一面を表現した。ガラスの粉に糊と水を加えペースト状にし、網目状に繰り返し絞り出す。描いたメッシュを型に引っ掛けて、再度熱を加え三次元的なフォルムを形成する。単純作業の反復で網目状に紡がれた思考は、熱と重力によって立体へと立ち上がり、実体を伴うものとして眼前に現れる。私にとって素材における思考と身体性の視覚化は、外界と内包の境界を現示するものである。
Chorus of One
アナ・マゾフスキー(United States of America)
Chorus of OneSound Performance: Alethea Alexander / Choreography, Cloak, Editing: Anna Mlasowsky / Camera: Derek Klein
作品コメント(一部抜粋)
Chorus of Oneは、着用してパフォーマンスをすることで様々な音が出る作品である。このコートは拾った石の表面をイメージしている。各パーツはその石のどこかの面を表し、大きさも原形の石と同じにした。作品に使用したガラスはCorning Inc.社が軍関係者向けの防護服を製作するために使用している特殊ガラスで、私自身は2016年の特殊ガラスに関する研修中に使い始めた。Rhinoガラスというこの素材は、強い衝撃がかかるような動きに対する抵抗力が特徴である。Chorus of Oneは、ガラガラヘビが発する音やセンザンコウのウロコのような動物が持つ防御システムを模している。人はガラガラヘビの音を聞いたりセンザンコウのウロコに覆われているような外見を見ると、自然とこれらの生き物から離れようとするが、同時に近寄ってみたくもなる。
世界の終わりの始まり
松藤孝一
世界の終わりの始まりPhoto: KATO Norie
作品コメント
流れゆく時間の中で、物質と精神が繰り返し生まれていく、終わりと始まり。美しく輝いた欲望という物質は、人間の精神を虜にする。それは生命体のように、連綿と繰り返される。
Müller
シゲフジシロ(Federal Republic of Germany)
MüllerPhoto: Edin Bajric
作品コメント
2009年から始まったショッピングバッグプロジェクト。これらはディスカウントのスーパーマーケットや高級ブランド、または無造作に棚の奥に貯められた様々な袋の一つである。大量生産された様々な買い物袋を、作家はそれとは対照的な時間軸で緻密に一粒一粒ビーズを安全ピンに通し時間をかけ完全に複製する。袋としての機能を超えたブランドロゴ重要性や、安価に大量生産された消費主義社会に問題を投げかける。また日々目にする日常風景や意図的に想像したストーリーを、作家はショッピングバッグと共に再構築し写真媒体に収めた作品。

審査員特別賞

Pilchuck, Autumn 2019 (2)
カーリン・サザーランド(United Kingdom)
Pilchuck, Autumn 2019 (2)
作品コメント
私の作品の中心には人々と場所の結びつきに関する長年の関心がある。空間の特徴や質がいかに私たちの経験、記憶、環境への結びつきを形成するか作品を通して探っている。基本的に自伝的である私の作品は、鮮明な記憶や大事な瞬間など触れることのできない特質に対する反応であり、特定の空間における光、影、雰囲気に対する経験の本質を抽出して伝えるものである。作ることは黙想的で、それは私自身の場所との関係や意味を探り、熟考し、強化する道具である。この作品はピルチャック・ガラス・スクールでの毎日、早朝の時間の記憶によって誘発されたものである。折りたたみ式シャッターの窓に霞のかかった空気と変化する光を通してくすんだ秋の色が見え、新しい一日が約束されている。
C57BL/6
松尾里奈
C57BL/6Photo: Okamura Kichiro
作品コメント(一部抜粋)
作品の発想の原点は再生医療で、動物の体内で人間の臓器を作る研究に対する違和感から始まった。多くの動物が道具として使われている。人間によって量産されている生物として、動物実験の9割を占めているネズミを作品のモチーフに選んだ。「人間と生命活動が似ている」「小型で扱いやすい」「繁殖のサイクルが早い」ことから研究に重宝されている彼らは、そこに確かに生物として存在しているのに、まるで存在していないかのように次から次へ生産されて消費されていく。現在、私たちは体調が悪ければ薬を飲み、病院で治療を受ける。動物実験に基づいていない医療などほぼ無く、様々な動物たちが私たちを支えてくれているといえる。
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