結果発表
2026/01/06 10:00

第2回 テクニカルディレクションアワード

主催:一般社団法人テクニカルディレクターズアソシエーション

応募作品数:152点
受賞作品数:17点
※ここでは、上位7点をご紹介します
デジタルサービス/プロダクト部門

Gold

Q SKIP
東急電鉄株式会社、東急株式会社
Q SKIP
作品コメント(一部抜粋)
Q SKIPは、東急グループが提供するチケットレス乗車サービスであり、都市の移動体験を再設計することを目指したプロダクトです。

■新たな鉄道チケッティングの導入:「紙のきっぷ」や「ICカード購入」に加え、新たな鉄道チケッティングシステムを導入。スマートフォンに表示されたQRコードを、本システムに対応した改札機にかざすだけで、東急線全駅をスムーズに通過可能。直感的かつストレスフリーな体験を実現。

■“移動”そのものをアップデート:乗車券のデジタル化に留まらず、沿線の店舗やイベントとの連携により、移動の目的自体を創出。「楽しむための移動」へと価値を拡張。

■「人」「まち」「交通」をデジタルでつなぐ移動プラットフォーム構築:自社だけではなく鉄道他社や路線バスの乗車券も同一サービス内で提供。
審査コメント(一部抜粋)
新型改札機との連携を含むハード・ソフトの協調設計、多様な交通手段への対応、堅牢なセキュリティ設計など、技術的完成度が高く評価されました。鉄道業界においてアジャイル開発を導入し、サービス価値の検証と改善をスピーディかつ着実に進めている点も先進的です。特に、店舗オペレーションへの影響を最小限に抑えながら、ユーザー利便性を最大化するバランス感覚は秀逸で、社会実装を見据えたテクニカルディレクションの優れた実践例といえます。(高尾航大)

首都圏を支える大規模なインフラサービスでありながら、従来の「完璧を目指す」開発スタイルではなく、小さな実験を重ねながら段階的に開発を進めるという設計方針が採られていました。また、改札がない場所では目視で対応可能とするなど、人的オペレーションによって補完するUX設計も印象的です。(荻野靖洋)
フィジカル・エクスペリエンス部門

Gold

EXPO 2025 OSAKA : SOUNDSCAPE
EXPO 2025 OSAKA : SOUNDSCAPE DESIGN TEAM
EXPO 2025 OSAKA : SOUNDSCAPE
作品コメント(一部抜粋)
2025年大阪・関西万博の屋外エリアにて、会場全体を包み込むサウンドスケープのサウンド/ミュージックディレクションおよびプロデュースを担当しました。

本サウンドスケープは、「いのちのアンサンブル」というコンセプトのもと構成されています。夢洲の会場を「地・空・水・森・街・祭・命」の七つのエリアに分け、それぞれのテーマに沿った音をデザイン。サウンドスケープのクリエイティブチームと7名のアーティストが共創し、エリアごとに異なる世界観が立ち上がります。

すべての楽曲はBPM(テンポ)を共通化することで、エリアを越えて自然に響き合う設計に。人間、自然、動物、テクノロジー ── 世界中の「いのち」の音が混ざり合い、一つの大きなアンサンブルを奏でます。

音は会場のオープンからクローズまで毎日流れ続け、時間帯や天候によって常に変化。
審査コメント
空間における音楽演出を、多様なアーティストをアサインしながらも、キーやテンポなどの音楽のパラメーターを適切にディレクションすることで、会場全体で破綻のないインタラクティブな音楽システムを構築した点が、音楽というテクノロジーの特性を巧みに活用したテクニカルディレクションとして高く評価されました。(土屋泰洋)

複数のアーティストに余白はありつつも共通の認識を持たせる確実な楽曲制作依頼を行い、万博会場という制約のある環境、さらにオープン前には容易に想像できないスケール感の中で実装された本プロジェクト。そのサウンドを的確にテクニカルディレクションすることで、時間軸や気候によるインタラクティブ性、エリアを跨いだうねりと一体感という新たな要素を会場全体に付加し、空間体験として成立させた点が高く評価されました。(久我尚美)
オンスクリーン・エクスペリエンス部門

Gold

青は止まれ「しじまのはて」
青は止まれ
青は止まれ「しじまのはて」
作品コメント(一部抜粋)
ボーカル<Aohada>とコンポーザー<いおたす>、から成る、次世代のプロデュースユニット『青は止まれ』のシングル『しじまのはて』のMV、およびそのMVよりアクセスできるノベルゲームサイトを制作。

楽曲の制作開始段階より本企画が開始され、楽曲と共に複合的に、さまざまな仕掛けが組み込まれた作品群となっている。

MVは、映像上で展開されるドットアニメーションの全フレームが読取可能な<QRコード>となっており、スマートフォンのカメラなどで情報を読み込みながら視聴すると、QRコードの中に仕込まれた歌詞やURLなどさまざまな情報が矢継ぎ早に表示される。

QRコードを読み込んだ際にアクセスできるURLは、楽曲とリンクしたオリジナルの<ノベルゲームサイト>へのリンク。
審査コメント(一部抜粋)
アーティストからの依頼に対し、テクニカルディレクションによって期待を上回る成果を実現している点が高く評価されました。noteでは、試行錯誤の過程やノウハウが丁寧に共有されており、創作における透明性と誠実さも印象的です。また、映像コンテンツの中に隠されたメッセージを手がかりにノベルゲームアプリへと誘導するなど、QRコードの特性を活かした巧みな企画設計がなされており、視聴者を飽きさせない導線が確立されています。1枚のオンスクリーンに留まらず、デバイスを通じて視聴者に深い感動体験を届ける、非常に完成度の高い取り組みです。(高尾)

「QRコードを使ったMVを作りたい」というオーダーに対し、要件を満たしながらもギミックに縛られすぎることなく、あくまでビジュアル表現を追求するための的確なテクニカルディレクションが行われていました。(久我)
R&D/プロトタイプ部門

Gold

OLM Smoother v2
株式会社オー・エル・エム・デジタル
OLM Smoother v2
作品コメント(一部抜粋)
アニメ制作は原画、動画、仕上げ、撮影の順に進みます。「仕上げ」の色塗りでは、効率化のため「二値化」(線を白黒にする)を行いますが、線の縁がギザギザになるため、「アンチエイリアシング」(滑らかにする処理)が不可欠です。OLMは2009年に無償プラグイン「OLM Smoother」を提供し業界標準となりましたが、改善の必要性や自社作画ツール「SAKUGADO」開発に伴い、アンチエイリアシング処理の「ライブラリ化」(共通部品化)が求められました。そこで「OLM Smoother v2」の開発に着手しました。

「OLM Smoother v2」では、「色漏れ」バグ修正、豊かな色表現のための「色空間」対応、斜線の特殊処理を実装しライブラリ化しました。
審査コメント(一部抜粋)
まず、Resultが素晴らしいです。特に、ガンマ補正によるリニアカラースペースでの処理は、色漏れ対策とともに、クオリティに大きな貢献をしていると感じました。動作速度もCPU実装で10~15msという高速性を実現しており、現場での実用を念頭に置いた研究開発が行われています。論文発表だけでなく、OLM OpenToolsとして実装を公開しており、業界のボトムアップに貢献する姿勢も評価に値します。SAKUGADOの取り組みも期待しています。(岡田太一)

社内内製ツールを自社のノウハウに留めず、社外にオープンツールとして公開し、継続的に業界全体への貢献活動に繋げている点が評価されました。(大西拓人)
AI部門

Gold

Debate Generation System in Japanese Rap Battle Format
株式会社電通、株式会社電通クリエイティブピクチャーズ、株式会社朝日新聞社、兵庫県立大学、神戸大学
Debate Generation System in Japanese Rap Battle Format
作品コメント
AIを用いてさまざまな議論を日本語ラップバトル形式で行うシステムです。世界では言論の分断が叫ばれています。その原因の一つとして、他者の意見を聞かず、見たいものだけをみるフィルターバブル現象などが原因の一つとして挙げられます。このシステムは「議論」をラップバトルというエンターテイメントのフォーマットに落とすことで、まずは人の話や議論を聞くことを促します。この体験を通して、誰かの意見に耳を一度傾けてみる、「議論」のはじめの一歩となることを目指しています。
審査コメント(一部抜粋)
デモンストレーションの完成度が見事です。LLMに当たり障りの“ある”ことを言わせるのは、そこそこ面倒なのですが、どんなお題に対しても強引に対立軸を設定し、ユーモアを交えたバトルを成立させるのはなかなかの手腕です。音声合成についても一聴の価値があります。既存のTTSは、日本語のイントネーションにおいて難がある場合が多いですが、本作品ではラップ特有の表現やイントネーションを含めて音声合成ができており、全体の完成度に寄与しています。異業種のチーミングによるアジャイルなイテレーションがうまく回っていたことも評価しました。(岡田)

LLMの新しい使い方として斬新な事例だと感じました。対立するディベートの文脈作りはLLMの強みだと思いますが、それらを高い完成度で表現するアプリケーション設計や合成音声の実装にも優れた工夫が見られ、技術的な成熟度も感じさせました。(荻野)
特別賞

アーカイブデザイン賞

100+ prototypes
株式会社博展
100+ prototypes
作品コメント(一部抜粋)
100+prototypesは、プロジェクトの過程で生まれた試作(プロトタイプ)をアーカイブし、創造の循環を生み出すことを目指した取り組みです。完成には至らなかった断片にも、試行錯誤の跡やひらめきの種が宿っています。それらを捨てずに蓄積・共有することで、別の誰かの新たな発想に繋げることを目的としています。

社内ではNotionを使い、素材や制作背景などの情報を記録・集約。社外には、「オープンスタジオ」で実物を展示。デジタルアーカイブとしてインスタグラムで公開しています。展示物にはURL付きのタグが添えられており、インスタグラムのキャプション情報にアクセスできます。

体験デザインにおいては、完成品だけでなく、そこに至るまでの道のりや思考のプロセスも大切な要素です。
審査コメント(一部抜粋)
多かれ少なかれ、各社日の目を見なかったアイデアやプロトタイプはたくさんあると思いますが、それらの資産をどう組織内で有効に活用するかも同様に各社の抱える課題だと思います。本プロジェクトでは、社内まとめサイトに留まらず、物理的に棚を確保しての陳列や、オープンラボやInstagramでの一部社外公開、メンテナンスのための社内ツール整備および担当のローテーション制度など、持続的かつ発展しやすくするための工夫が随所に見られました。(大西)

何かを「つくる」ことに取り組んでいる企業やチームには、必ず真似して欲しいと思える事例として特別賞を表彰させていただきました。ものづくり現場において、プロトタイプは大切な資産です。すぐに手に取れる場所に保管され、整理されていることが理想ではありますが、実際には非常に労力がかかります。(荻野)

ユーステクニカルディレクション賞

SCHOOL IN WONDERLAND
都立田園調布高校73期3年D組
SCHOOL IN WONDERLAND
作品コメント
2024年9月13日~14日に開催された都立田園調布高校の文化祭「ぽろにあ祭」にて、73期3年D組がクラス企画「SCHOOL IN WONDERLAND」を実施しました。

本企画は、教室全体を使用した没入型アトラクションで、来場者は専用の2人乗りカートに乗車し、「不思議の国のアリス」の世界をモチーフとした空間を移動しながら、ミニゲームやジェットコースター的な演出を体験できます。

制作にあたっては、東京都知事選挙2024で使用された選挙掲示板を再利用し、低予算でありながら大規模な装飾と演出を実現しました。結果として、都立田園調布高校史上最大規模のクラス企画となりました。
審査コメント(一部抜粋)
高校の文化祭のクラス出展物でありながら、会場となる教室のLiDARスキャン、Blenderによる完成系シミュレーション、Googleスプレッドシートを用いた進捗管理と、商業案件で見られるようなレベルでのプロジェクトマネージメントを低コストで導入し、実現に結び付けている点に審査委員一同が驚きました。若年層でのテクニカルディレクターの芽吹きと、各種デジタル制作ツールの普及を強く感じさせる、現在において象徴的なプロジェクトだと思います。(大西)

テクノロジーを使った企画や体験づくりに注目が集まりがちですが、“チームの意思統一”や“円滑なコミュニケーション”にテクノロジーを活用することも、重要なテクニカルディレクションの意思決定だと、日々感じています。(荻野)
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