結果発表
2025/03/05 10:00

第16回 エイブル空間デザインコンペティション《学生限定》

主催:主催:株式会社エイブル
協力:DESIGN ASSOCIATION NPO
運営:TOKYO COMPANY株式会社

受賞作品数:8点

グランプリ

純粋階段のアフォーダンス
大西明日香(武蔵野美術大学 造形学部 建築学科)
純粋階段のアフォーダンス
作品コメント
階段は本来、ワンルームには不要なものである。しかし、ワンルームに存在することで、階段は上り下りという機能から解放され、新たな価値を私たちに与えてくれるのではないだろうか。冗長性を持つ純粋階段をふたりの生活に組み込むことで、空間は視覚的な広がりを持ち、機能的な分節が生まれる。階段がもたらすのは、単なる物理的な区切りではなく、ふたりの距離感や時間を緩やかにゾーニングする柔らかな領域である。無用の中に潜む豊かさが、ふたりの暮らしにさらなる彩りを添え、静かに、そして確かに生活を形作っていく。
受賞コメント
この度は、グランプリという名誉ある賞をいただき、心より感謝申し上げます。学生のうちに実物大展示という貴重な機会を得られたことを、今後の設計にしっかりと活かしていきたいと思っています。そして審査員の皆さまからいただいた言葉の一つひとつが、私にとってこれからの大きな指針となりました。その言葉を胸に抱き、これからも迷わずアクセルを踏み込み、新しい建築の形を模索していきたいと思います。

セミグランプリ

三人目がやってきた
杉原大河・玖代鈴香・竹内純怜(広島工業大学 環境学部 建築デザイン学科)
三人目がやってきた
受賞コメント
この度はセミグランプリをいただき大変嬉しく思います。今回のテーマの“ふたり”というキーワードに着目することで、ふたりのライフスタイルや関係性を読み解き、それをコンセプトや空間設計に落とし込んでいきました。出来上がった作品は私たちも実際に住みたいと思えるようなワクワクで溢れるようなものになったと思います。プレゼンの機会をいただけたことで、この作品を介して審査員の方々の意見をいただけたこと、他大学の学生との交流ができたことが新たな刺激となり、とても貴重な経験ができました。

入賞

層に住まう
辻本雄一朗(早稲田大学 創造理工学部 建築学科 田辺新一研究室)
層に住まう
作品コメント
一人で過ごす時と二人で一緒に過ごす時との間の曖昧な距離感を大切にしたいと考え、各々が居場所を見つけつつもお互いの活動を感じられるような層状のワンルームを設計しました。本設計において、2人を仕切るのは強い間仕切り壁ではなく、柔らかなカーテンや視覚的に重なり合うアーチです。アーチは暮らしの振る舞いを切り取るだけではなく、2人のものを共有する建具や多様な光空間を生み出す幕として機能します。多様なライフスタイルが存在する現代において、長期的な住みやすさや自由さ以外にも、住みこなしていくなかでの発見や新たな暮らしの様相に価値があるかもしれません。そのひとつの選択肢として、一種の風景のような層の中でお互いの存在を感じあうような暮らし方を提案します。
tasty room
小野 翼・内許博翔(新潟大学 工学部 工学科 建築学プログラム)
tasty room
作品コメント
ひとりよりもふたりで食べる方が楽しいのはなぜでしょうか? それは、ふたりでの食事が「心の味覚」を刺激するからです。一緒に食事をする相手やその場の雰囲気は食事の体験に大きな影響を与えます。食事は単なる栄養補給以上のもので、人と共有することで得られる心理的な満足感や幸福感を感じることができます。しかしながら、現代の生活を見てみると、人々は忙しない日常に追われる中で食事をおろそかにしています。ルームメイトとの食を中心に据えた生活の中で、心の深いところから喜びや幸せを感じることができるワンルームを提案しました。食卓を囲む時間は、日常の中で特別なひとときとなり、心の豊かさを広げてくれます。食事が中心にある暮らしは、ふたりの人生をより豊かにしてくれると考えます。
7.39m²の転回する壁体
西本 光・岡倉慎乃輔(東京藝術大学大学院)
7.39m²の転回する壁体
作品コメント
一般的なワンルーム28m²の賃貸空間において、2人の人間の為の空間を用意することは容易ではない。なぜなら賃貸空間における必要最低限の機能や設備は既に最適化され、他者の介入を想定していない為である。そこで2人分の空間を隔てて用意するのではなく、ワンルーム28m²を限りなく共有することで、ふたり部屋として提案することはできないだろうか。賃貸空間における水回りの機能を7.39m³の気積に集約し自立させる。空間の中心に配置された気積の内側ではトイレ、シャワールーム、キッチンなどの生活に必要最低限の機能と面積を備え、部屋の中心を軸として転回する。この約7.39m³の気積は、28m²の限られた面積を2人の人間の為のワンルームとして扱う装置としての提案である。
ワン・ルームズ
岩崎伸治(東京藝術大学大学院)
ワン・ルームズ
作品コメント
ワン・ルームズ
私はひとつではない。
引き込まれるように小説を読んでいるわたし、難解な専門書を読んでいるわたし、電話をしながらキッチンに立っているわたし…枚挙にいとまがない。これら全てが異なるわたし、である。
ワン・ルームにはさまざまなモードのわたしが共存して、それが空間に記憶や痕跡として残ってゆく。自分の脱いだ洋服も、シーツのあとも、棚からのぞくグラスも、開け放しの戸も、、、
あれ、僕がしめ忘れたんだっけ? あらゆる光景が記憶であり痕跡である。
ワン・ルームにおける
いまのわたしと、痕跡という他者のくらし。
行き着くふたり
松野真翔(九州大学大学院 人間環境学府 空間システム専攻 建築環境学コース)
行き着くふたり
作品コメント
ふたりが互いの意思で部屋の使い方を決められ、距離感を自由に選択できる空間とは何か。行き詰まりやすい、フラットで閉ざされた絶対的ふたりの空間ではなく、外との連続性の中で共に居ることを感じられる相対的ふたりの空間を目指す。通常、街から共有空間を経て個室へと至る構成を、あえて個室の先にふたりの空間とすることで、個を確かに持ちながら、その上で「会いに行く」「落ち合う」「行き着く」場所としてふたりの空間を位置づける。そうすることで狭いワンルームでも互いを尊重し、節度を持った暮らしを意識しながら、その上で共に暮らしている喜びを分かちあえるのではないか。結果、全体から個の空間を引き算したふたりの空間となった。中央から躙口のように赴き、天井高の変化や奥行きの狭さによって外へと広がっていく空間である。ふたりの多様な活動が気ままに行われ、使い方が自然に多様に展開されていくだろう。
1Room 4Mode
小野巧真(京都大学大学院 工学研究科 建築学専攻)
1Room 4Mode
作品コメント
2人でワンルームに住むという特殊な状況下でどのようにしたら2人の関係性の変化に空間側が追従できるかと言うことを考えて提案しました。具体的には、揺籠と名付けた動く什器を1人分ずつ、計2つ導入しました。
この揺籠内にベッドや机などが内包されることで、それぞれの領域が確立されるとともに、それらが室内の長手方向を動くことで、空間のモードチェンジが可能となりました。什器同士が入れ子のように、最大半分まで入り込むことでベットが簡単に一体化できるところが最大の魅力です。
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