結果発表
2019/10/28 10:00

東京TDC賞 2019

応募作品数:2860点
受賞作品数:10点
主催:NPO法人東京タイプディレクターズクラブ

グランプリ

「VR」タイプデザイン
(Client:Non-commercial work)
Michael Kelly(イギリス)
作品コメント(一部抜粋)
このタイプフェイスは石や粘土板に刻まれた古代の文字と、未来のコンピューター端末や回路基板との間のスタイルにおける組合せである。学士号卒業論文の見出しのためにデザインしたが、最終的に大学での追加プロジェクトとして全体のタイプフェイスとなった。
このタイプフェイスは私の論文における考えを伝達することを意図する。それは、石器時代から人間が徐々に世界を形成していき、たとえば、分、センチメータ、ドルのように、現実を仮想装置に概念化し、これらの概念の積み重ねの上に我々の世界を形成しているという議論である。今や我々は都市という人工的環境に住み、人工的食物を食べ、貨幣、国、政治的イデオロギーのような人工的アイデア ─ 「仮想現実」を受け入れる。しかしそれらは自然の物ではない。

TDC賞

「NYT MAG OLYMPIC FONT*」タイプデザイン
(Client:THE NEW YORK TIMES MAGAZINE)
Henrik Kubel、Matt Willey
「NYT MAG OLYMPIC FONT*」タイプデザイン<br />(Client:THE NEW YORK TIMES MAGAZINE)
作品コメント(一部抜粋)
縦に積み重ねるタイプは正確さを得るのが難しい、コントラストが大きい場合は、ほぼ間違いなく複雑になる。そのため、雑誌全体にそれを使うことは勇気のいる決定だ。この場合何があなたの動機となったのか?

このタイプフェイスは不足するスペースから生まれた。特集号はアルペンスキーからスピードスケートまで15種の冬季オリンピック競技すべてをカバー。全部を入れるのにスペースが不足する。ページの多くにヘッドライン(スポーツの名称)、デッキ、イメージ、文章を入れなければならない。伝統的なやり方では無理。広い幅の縦に積み重ねたタイプフェイスは、細いコラムの中にあるヘッドラインにスケールとタイポグラフィ的存在感を与えてくれる。
「Das Kapital ist weg – Wir sind das Kapital!」ポスター
(Client:Zwischenraum Schaffhausen, Switzerland)
Sven Lindhorst-Emme(ドイツ)
「Das Kapital ist weg – Wir sind das Kapital!」ポスター<br />(Client:Zwischenraum Schaffhausen, Switzerland)
作品コメント(一部抜粋)
3枚組のポスターはシャフハウゼンでのグループ展のために組織の完全な独立性を表すために制作された。かつてのホール・オブ・アートでは、数年前に閉鎖されるまでヨゼフ・ボイスの「ダス・キャピタル」が展示されていた。その場所を35人の若手アーティストが復活させ、「Das Kapital ist weg - Wir sind das Kapital」(キャピタルは去った ─ 我々がキャピタルだ)と題した展覧会を開いた。
ポスターの中心に位置する三つの物体はAdobe Illustrator(Cinema 4Dは使用していない)で制作された。これらは削除したり壊したりできる機能を持つ。消しゴムは文章を消すことができる。ライターを使って燃したり、シェイバーは顔から気に入らない部分を剃り取ることもできる。
「The Trumpet of the Swan」Experimental Work
(Client:Academic Research in Machinic writing)
Andy Simionato、Karen ann Donnachie
「The Trumpet of the Swan」Experimental Work<br />(Client:Academic Research in Machinic writing)
作品コメント(一部抜粋)
本作品「白鳥のトランペット」は、ツイッター・アカウント@realDonaldTrumpで公開されるすべてのツイートを、カスタム・コードのマシーン草書体文字を使い、途切れない記録紙のロールに自動的に書き込む筆写ロボットマシーンである。
作品のタイトルは、1970年に出版されたE.B.ホワイトの童話から取った。その本は歌うことのできない白鳥の物語。独りぼっちで友だちがいなかったけれど、一人の少年が白鳥のために楽器店からトランペットを盗んできて白鳥を救う話である。また作品のタイトルは、トランプ大統領がツイッターというソーシャルメディアのメッセージ・サービスを使い、さえずる小鳥のロゴマークのみならず、造語のツイートでメッセージを発信する行動を表す。第45代USA大統領就任式以来、ドナルド・トランプは自分のツイッター・アカウントから4500回ものツイートを発信している。
「Hong Shi Ban Farmer’s Market」ブランディング
(Client:H-CHANGE GROUP)
Mei Shuzhi(中国)
「Hong Shi Ban Farmer’s Market」ブランディング<br />(Client:H-CHANGE GROUP)
作品コメント
ホン・シ・バン・ファーマーズ・マーケットは古都杭州市の伝統的農産物市場である。本プロジェクトは若者たちを引きつけ市場を活性化することを目的としている。2018年夏に市場は改装された。空間からブランドデザインまで一新され、ファーマーズ・マーケットは新しくデザインされたブランドイメージに変身した。この新しいブランディングは漢字で視覚化される。それは主に「機能」を仮定する言語である。元のテキストを分解して、新しい読み方の論理や視覚体験を得るために境界を置いた。
漢字は象形文字で一つ一つの文字が意味を持つが、英語は一つの単語を作るのに複数の文字を必要とする。漢字の結合は点の形の組合せのようであり、欧文文字は線のようである。文字を構成する点と線は詩の韻に似て、興味深いシステムを形成する。我々はデザインにおいて読むことから生じる障害と多様性の感覚に特に重きを置く。
「Portugal em vias de extinção」ポスター
(Client:National Theatre Dona Maria II)
Lizá Ramalho、Artur Rebelo
「Portugal em vias de extinção」ポスター<br />(Client:National Theatre Dona Maria II)写真イラスト:© Maria Joao Guardão
作品コメント(一部抜粋)
本ポスターは雑誌「消滅しつつあるポルトガル」のプロモーション用であり、ドナ・マリア二世国立劇場(ポルトガル、リスボン)による展覧会、講演、コンサート、ワークショップ、書籍販売から構成されるガイドブックとして出版され、ポルトガル国内の砂漠化、一般大衆が住む地域の再開発、熟練職人の不足、文化遺産の消失を反映する。概念的にポルトガルの田舎が消えていくことをタイポグラフィの構成によって表わした。フォントのLa Nordを使用して雑誌のタイトルとプログラミング・サイクルがポスターの核となる要素を構成する。しかし、国名(ポルトガル)は最初の文字だけを残して、徐々に消えていく。このプロジェクトのゴールは過ぎ去った時の思い出を保存することなので、我々はポルトガルの数少なくなっていく代表的な職業の一つ、羊飼いの写真を使うことに決めた。
「ZER01NE Day」ポスター
(Client:zer01ne)
Kim Dohyung(韓国)
「ZER01NE Day」ポスター<br />(Client:zer01ne)
作品コメント(一部抜粋)
このプロモーション用ポスターは半年ごとに開催されるイベント「ZER01NE Day」のために、アート、テクノロジー、ビジネスへの情熱を持つ人々に向けて制作された。独創性豊かなネットワーク・プラットフォームとして、多様なバックグラウンドを持つプロ達が出会い意見を交換し、コミュニケーションの新しい形やスマート・テクノロジーそしてアートについての新しい技術を話し合う。ポスターは、印象的な仮面の顔を使いイベントの主要な要素を視覚化する。ほとんどガラス球のように見える仮面の目は、イベントで提示されるバイオニクスやロボットを表す。
知的インプットはポスターの右側に描かれた仮面の額に向けて発射される銃弾のイメージによって象徴される。一方ロゴマークは二次元的に切断されたゼロと1、あるいは三次元的に半球体と1によって形成された漏斗のように見え、さらに仮面の下に置かれた二つの紙コップにも描かれている。

ブックデザイン賞

「One Artist’s Theater」ブックデザイン
(Client:AZ Museum)
Konstantin Eremenko(ロシア)
「One Artist’s Theater」ブックデザイン<br />(Client:AZ Museum)
作品コメント(一部抜粋)
「ワン・アーティスト・シアター」はAZ美術館による出版プロジェクトである。それは美術館所蔵の写真によるアーティスト、アナトリー・ズバレブのビジュアル物語である。この物語はアーティストの日常の生活を語る。アーカイブの大部分は素人が写したユニークなスナップ写真から成る。
この本のデザインは無作為に選んだアーカイブの写真から視覚的ストーリーを創り出し、それを本の形式に転換することが目的である。大半の写真は一人の人物のポートレートであるため、イメージが持つ性格が難しい。
写真のほとんどが家族用に撮られているため、アートと見なすことができないという事実に基づき、デザインの主な要素はスペースを構成するシステムの構造である。このシステムによりすべての物語が創られる。本の表紙は透明な赤いプラスチックでデザインされ、現像暗室のイメージを表している。

タイプデザイン賞

「ひです」タイプデザイン
(Client:Non-commercial work)
岩井 悠
「ひです」タイプデザイン<br />(Client:Non-commercial work)
作品コメント
「ひです」は、キリシタン版「ひですの経」の古活字をデジタルフォントとして復刻した仮名書体です。
肥前国出身の日本人コンスタンチノ・ドラードは、天正遣欧少年使節に随行するローマ旅行において活版印刷術を会得し、帰国後キリシタン版を印行しました。帆船時代の幾年にもわたる旅の果てに印刷機を持ち帰り、本邦初の西洋印刷術による出版事業を立ち上げる。その仕事の大きさは想像を絶するものです。
書体デザイナーは巨人の肩の上に立つ存在です。有史以来、文字を書いたり刻んだりしてきた人々の遺産を受け継いで、その務めを果たしています。ドラードもその先人の一人であることは言うに及びません。「自分が役目を終えるとき、巨人の背が1ミリでも伸びていたらいいな」時折そんな不遜なことを考えてしまいます。
このたびタイプデザイン賞を受賞したことで、励ましていただいたような気持ちになりました。心より御礼申し上げます。

RGB賞

「めくる映像_特集」映像作品
(Client:Non-commercial work)
伊東友子、時里 充
「めくる映像_特集」映像作品<br />(Client:Non-commercial work)
作品コメント(一部抜粋)
「めくる映像_特集」は2018年に古書店「コ本や」にて行なわれた「めくる映像」シリーズの展覧会です。
本を読む人や映像を見る人といった「鑑賞者」たちは、常にそのメディアの中に没入することでコンテンツとかかわり合う存在です。鑑賞者とコンテンツをとりまく様子を俯瞰する「第三者の視点」への考察をきっかけに、本と、それをめくる手が登場する映像作品が「めくる映像」シリーズです。
日常の読書の際には意識に上らない「本をめくる手」は、この作品においては本の扱いを制御すると同時に、印刷されたテキストに制御される存在でもあります。ページがめくられていくことと、映像が流れていくこと、それぞれの時間はちぐはぐのまま進みます。テキスト、本、めくる手、映像。ディスプレイに現れているものは、それらの関係が未分化のまま、一層になったものです。言葉、そして文字の作用はそれらの関係をつなぐ作品の核の一つと言えます。
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