2018年度 新聞広告クリエーティブコンテスト
応募作品数:787点
受賞作品数:6点
主催:一般社団法人日本新聞協会
※略号凡例
CD:クリエーティブディレクション、AD:アートディレクション、C:コピー、D:デザイン、Ph:フォト、I:イラスト
最優秀賞
楽しい日々
代表:石川 平(株式会社電通)
AD・C:石川、C・I:小池 茅
- 講評
- もしも新聞がなければ、流行やいっときの興味に関する情報に囲まれ、それに流されてしまうのではないかという危機感を、皮肉をこめて、逆説的な表現で描いた作品です。審査委員から大きな支持を集めました。
「新聞の有用性を、あえてインターネットの緩い部分を羅列することで表現しており、とぼけたコピーとデザインのアウトプットが非常に巧みだ」(児島委員)、「新聞、テレビも他人事ではないのではないか。ただネットのことを笑っているだけではない深みも感じさせる」(照井委員)などと評価され、最優秀賞に選ばれました。
副田委員長は「ネット情報のマイナス面を、わざと稚拙な表現でユーモラスに皮肉っている。新聞とネットを比べた作品はたくさんあったが、うまく核心を突いた作品だ」と評しました。
- 制作意図
- 新聞がなくなると不安ですが、毎日読んでいるわけでもありません。「新聞っていいよね」とただ無邪気に語ることができず、あれこれ考えるうちにシニカルな企画ができあがりました。同じようにぼんやりと違和感を感じている方々に届いたらうれしいです。(石川)
優秀賞
どちらに寄っている?
代表:遠藤誠之(有限会社アルファ・シリウス)
CD・C:遠藤、AD・D:福田哲也
- 講評
- 日の丸をモチーフに新聞各紙の論調、報道の違いを表現した刺激的なクリエーティブに審査委員の注目が集まり、活発な議論が交わされました。「鋭利な表現で見る者を考えさせる。クリエーティブに潔さを感じる」(副田委員長)、「読者はそれぞれの新聞に特定の傾向があることを理解している。その点を表現したうえで、メディアリテラシーの大切さを訴えていることは評価できる」(児島委員)、「新聞だけではなく、この国のあり方を読者に問う作品だ」(照井委員)などの意見が寄せられ、優秀賞に選出されました。
- 制作意図
- 他紙と比べて読む楽しさを提案する広告です。新聞社が社の垣根を越えて行うセールスプロモーション企画として考えました。掲載紙によって微妙にデザインを変えることも可能です。
「新聞」をテーマに新聞広告をつくると、どうしても自画自賛になってしまいます。新聞のメリットを過剰に演出するのではなく、デメリットも含んだ、ありのままの面白さを伝えることが、新聞にとってふさわしい広告表現だと思いました。(遠藤)
コピー賞
- 講評
- 山と川の間に広がる町並みを背景に、シンプルなコピーを配置した作品です。コピーは回文になっています。「非常にシンプルかつ明快なコピーで、核心を突いている」(一倉委員)、「全国津々浦々に配達され、日本のど真ん中にあるメディアとしての自負が込められている」(児島委員)といった評価で、コピー賞を受賞しました。
- 制作意図
- 毎日届く新聞。そこには政治や経済、スポーツ、社会、事件などの様々なニュースがまとめられています。それは新聞にはその時々の「日本」が映し出されているということ。新聞を「定期刊行物」ととらえるのではなく、「現在の日本」が集約された存在だと感じてもらえるような作品を目指しました。
デザイン賞
新聞で世界はひろがる
代表:中村洋平(株式会社ADKアーツ)
CD・C・Ph:中村、CD・AD・D:楠 陽子
- 講評
- 新聞の切り抜きをモチーフに、多様なニュースが掲載されていることを分かりやすく表現しました。「切り抜きの裏面(自分の関心以外)をコラージュしたビジュアルで、新聞の奥深さを表現している」(副田委員長)、「関心を広げていくために新聞が有効であることを、視覚的なアイデアでうまく伝えている。見た目にインパクトがあり、記事の切り取り方もうまい」(服部委員)との評価があり、デザイン賞に選ばれました。
- 制作意図
- 興味のある記事をスクラップしたとき、その裏面に自分の興味とは関係ない、不自然な形で切り抜かれた世界が広がっていました。そこには、読む人に合わせて記事を勧めてくれるネットニュースとは違う、表も裏もある、紙の新聞だからこその世界を広げる「きっかけ」があると思い、それを表現しました。(中村)
学生賞
- 講評
- 幼い娘からの質問の手紙を通じて、その答えや知識を得るために新聞が役に立つことを描きました。「新聞には人生相談やコラムなどためになる記事も載っている。ニュースにとどまらない新聞の幅広さを表している」(副田委員長)、「高尚な問題から卑近な話題までを行き来するコピーが面白い。その場しのぎの知識ではなく、新聞を読む積み重ねで得られる知性の大切さを、逆説的に表現している」(服部委員)といった点が評価され、学生賞に輝きました。
- 制作意図
- 年ごろの娘が感じる素朴な疑問の中に、いくつか大人でも分からないような核心をつく質問を入れてみました。昔を思い出して娘からの手紙を考え、親しみやすいよう方言を取り入れました。
特別賞
会ったことのないお隣さん
代表:井上裕貴(株式会社クリエイターズグループMAC)
CD・C:井上、D:大久保佳津江
- 講評
- 特別賞は、新聞社の審査委員の視点で選ぶ賞です。新聞そのものが持つイメージ、安心感を表現している点が評価され、初めての特別賞に選ばれました。クリエーター審査委員からは、「新聞の信頼性をテーマにした応募作品はたくさんあったが、その中で絵空事ではないリアリティーのある表現が印象的だ」(児島委員)、「実際の体験を元にした視点が共感できる」(照井委員)と高く評価されました。
- 制作意図
- ポストにはさまっている新聞を見て、会ったことがないお隣さんの印象が良くなった。そんな実体験をもとに、この作品は生まれました。ネットで簡単に情報を得られる時代だからこそ気づく新聞の良さを、この作品を見た人に感じてもらえれば幸いです。(井上)