結果発表
2019/03/07 10:00

第20回記念 雪梁舎フィレンツェ賞展

応募作品数:260点(うち229点出品)
受賞作品数:6点(入選を除く)
主催:公益財団法人雪梁舎美術館

フィレンツェ大賞

小さな銀河の物語
沼田愛実
小さな銀河の物語
作品コメント
心に留まった様々な要素の欠片が、ある時一つに結びつく瞬間があります。
それらを物語のようにつなぎ合わせ、その本の表紙を描くように作品を制作しています。
そしてその中身は、人生とは何かについて考えるものでありたいと思っています。

ここ数年、静物画を中心に制作を行ってきました。
普段、人のそばで静かに佇むばかりの静物たちは、歴史から、神話から、人々の営みから、様々な物語を吹き込まれています。
そして、それは今日も同じです。
私は、生きて感じているその今日の部分を新たに静物に吹き込み、命の通った静物画を描いていきたいと思っています。

フィレンツェ美術アカデミア賞

遮蔽の切杭
中尾真奈
遮蔽の切杭
作品コメント
人生で初めて公募展に入選したのが、第10回記念雪梁舎フィレンツェ賞展でした。
なので、とても思い入れのあるフィレンツェ賞展の第20回記念で賞をいただけたのは、とても感慨深く思います。
私は植物、特に木の表皮や切り株の年輪を描くのが大好きです。
最初は純粋にその部分を描くことが好きだったのですが、長く描いていくにつれて過去に描いた切り株が、どんどん形を変えていくことに気付きました。
10年前に描いた切り株は、今は周りが朽ち果て、中心部分が小さくひっそりと残るだけ。
他にも落ち葉や苔に覆い隠されて見えなくなってしまったものや、土に埋もれてボロボロになってしまったものと様々でした。
その姿に、儚く、寂しく、そしていつか地に還り、朽ちていく存在として改めて魅力を感じたのです。

第20回記念賞

夏草の粒
古石紫織
夏草の粒
作品コメント
絵を描くとき、私は自分の庭を散歩する。
今までに出逢ってきた心揺さぶられる世界を、ぎゅっと凝縮させた箱庭だ。
今ではどれほどの広さがあるのか分からないが、自分しかいない自分だけの庭を練り歩く。

今回は、温室を描いた。目に映る世界のどこまでが現実で、どこまでが夢か。あの花は手に触れる距離にあるのか、それともガラスを隔てた向こうの世界のものなのか。ひとたび風が吹けば変わる世界。その曖昧な狭間を描いた。

優秀賞

いろはに
開藤菜々子
いろはに
作品コメント
私は石や廃墟など形が崩れゆくものを描いている。
存在するからこそ、いつか風化していく。
その現象における、刹那に感じた美しさを日本画の材料を用いることで表現している。
日本画の材料の中でも、特に銀箔と和紙を用いている。
それは、銀箔が年月を経ることで酸化し作品が変化していくことが、まるで風化していくような儚さを感じさせ、モチーフからイメージされる刹那の美しさを表現するために使用している。
また和紙を何層にも重ね合わせることで、イメージをより膨らませ深めていく。
今回の作品では縦に積み上げられる石を描いた。
崩れそうな石は互いの重みで支えあうことで構築されているように見えるが、実際に積み上げようとしても現実では崩れていく。
現実で実現できないものを描くことで、虚構と現実の狭間の美しさを表現した。
翠緑の
河原由佳
翠緑の
作品コメント
植物は季節によって様々な感情を呼び起こしてくれます。
春には暖かくなった喜び、秋には郷愁、冬には寒さに耐える強かさ…。
夏に見る植物には、他のどの季節にもない強い生命の輝きを感じさせてくれます。見上げた眼前いっぱいに広がる緑、その鮮やかさと輝きに思いを馳せながら描きました。
ユートピアII
朴 常希
ユートピアII
作品コメント(一部抜粋)
現代人は発達した文明の中で豊かに暮らしているように見えますが、多忙な生活の中で疲れたり寂しさを感じたりするときもあります。しかし私たちはこのような生活の中でも自分だけの細やかで素朴な幸せを楽しんでいると思います。例えば、美味しい店を探し回ったり、一生懸命に働いて高価な靴やバッグなどを買ったり、日常から離れて旅行をしたりします。
この作品で椅子は休みを象徴しています。忙しい日常生活の中で一休みの時や日課を終えて椅子に座っている時間は私にとって日常から抜け出して自分だけの時間を持つことができる幸せな瞬間です。このように私は吉祥の意味を持つ韓国の民画のイメージと現代的シンボルを融合することで、日常の細やかな幸福を表現しています。
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