三協アルミ 第1回 学生デザインコンペー未来のとびらコンテストー《大学生版》
応募作品数:152点(参加校73校)
受賞作品数:11点(個人住宅部門:5点、ビル・公共部門:6点)
主催:三協立山株式会社 三協アルミ社
個人住宅部門
最優秀賞
外気を設える家
中塚大貴(東京理科大学大学院)、大田美奈子(関西大学大学院)、阪口友晃(関西大学)
- 作品コンセプト
- 外気が在る事。風が吹き、日に照らされ、季節や天候で湿度が変わる。そんな些細な事柄を迎えるだけで生活は豊かさを増すと考え、集合住宅における建物構成と室単位の設えの2点にコンセプトを与える。
敷地は都市公園と街路に挟まれた敷地であり、2つの異なる環境に挟まれた集合住宅を設計する。まず、構成として4mグリッドの層を3層重ね、中央に水回りなど生活の基盤となるSRC造の層、その両側をS造の層とすることで構造の持つ自由度と開放性に差を持たせる。このS造の各面に、住人に応じた設えが、3×4mの面を分割し、製品化された窓や扉、机や椅子、棚などを組み合わせるシステムによって構成される。そこでは夏風を受けながらBBQをする人々、そよ風を感じながら本を読む人、日を浴びながらヨガをしたり、湿度の変化に雨を感じ取るなど、何気ない一時に彩りを与えてくれ、ずっと居たくなる住居となる。
優秀賞
時・トキ・とき
白石 彩・土井祥太(京都造形芸術大学)
- 作品コンセプト
- 「ずっといたくなる」とは、時間が進むことで生まれる。住居の空間で庭は、時間の流れによりその時にしかない表情が絶えず生まれる。そのような空間性を、生活の中に取り込むことで、時間がつくり出す飽きのこない空間ができる。
外に閉じ、内部に向けて開放的な構成をしているため、敷地内に入ると、内部と外部が一つの大きな空間になっている。どこからどこが庭なのかわからなくなっている。これは時間の流れを持つ庭を、より生活に近づける工夫の一つである。庭が内部のインテリアとしても成り立つよう、庭では床であるものが内部では机や椅子などの家具として存在している。
家族構成は、夫婦二人と子供二人。家族間、または内部と外部に隔たりが出来ないように、壁という壁はほとんど立ててない。住人が早く帰りたいと思ったり、たまに訪れる友人にも、なんだかずっとここにいたい、と思わせる家作りを目指した。
まちの団欒~変わらない風景~
米田誉仙・池田貴大(日本大学)
- 作品コンセプト
- 実家のような非日常かつ恒常的な時間が流れる家を提案する。ここには誰でも来ることができる。主に帰省したいと思う人へネットカフェやビジネスホテルのような気軽に利用できる宿泊の場を提供する。
食事や消灯は定時になされる。朝、障子から淡く光が入り、散歩する近隣住民のちょっとした会話に自然と目を覚ます。食事は大広間で行われ、ちゃぶ台を囲んで皆で食べる時間を共有する。夜には消灯すると居間に布団を敷いて夜に意識を任せていく。まだ起きていたい人は2階の居室へ向かい、好きなことに没頭する。また季節に合ったイベントを行い、四季のゆらぎを感じられる。各部屋から臨める桜の木はイベントと共に四季の表情を映し、緑が囲む空間がまちに団欒を生む。来訪者は洗濯を頼む代わりに食器洗いを手伝うなど、経営に協力することで地域に限らない懐かしくも新しいコミュニティを生む。
建材提案賞・審査委員特別賞
- 作品コンセプト
- 自然界の中で外と内の境界は曖昧である。日本は古くから住宅の中に、縁側や土間などの中間領域を作り出し、外でも内でもない空間でのコミュニティを大切にしてきた。しかし、近年、私たちの住むまちでは、プライベートとパブリックに明確な線引きをしている。
一般的な住宅の壁や屋根は可変性を持ち合わせておらず、境界となっている。我々はこの壁や屋根の在り方に疑問を抱いた。パブリックに開きたいときははがす、プライバシーを守りたいときは閉じる、必要に応じてはがすことのできる、そんな壁や屋根があってもいいのではないだろうか。
はがれてできた空間は、外が内に入り込む空間でもあり、内が外に滲み出る空間でもある。それは時に地域住民が集う空間になり、時に家族だけのくつろぎの空間にもなる。その時々の生活や気分に合わせた空間を、住人自らがはがすことでつくる家。そんな建材でつくられた空間は「ずっといたくなる家」になると、我々は考える。
建材提案賞
- 作品コンセプト
- ずっと居たくなる住宅とは、生活が住宅敷地内で完結することである。ここでの完結とは、住む人の向上心、活動力、アイデンティティーを発揮するために、外に出なくても家の中の空間の使い方で、十分に解決できるということである。
この住宅では、夫婦と2人の子供の4人家族という設定で、個人や家族という単位でのプライバシーを保ちつつ、多くの人の拠り所であり、新たな関係性が生まれるコミュニティセンターのような役割も果たす。そのために、快適、情報、ビジネスという3つのテーマを意識した。この3つのテーマが循環することによって生活が完結する。そして、これらのテーマや完結した生活空間をアルミという建築的には比較的新しく大いなる飛躍を秘めた部材と関連付けることにより、住宅のあり方、未来の住宅のための道標、各空間の細かな快適性などをすべてアルミで解決できるのではないか。そしてより有意義で有機的な建築になるだろう。
ビル・公共部門
最優秀賞
街の間、屋根の連なり
小島悠暉(名古屋大学)・東 瑞貴(名古屋市立大学)
- 作品コンセプト
- 本設計の対象敷地は愛知県犬山市にある城下町の一角を敷地とする。この敷地は東側の観光地として賑わう参道と東側の静かな住宅地の道路に挟まれた二面性をもつ敷地である。この二面性を繋ぐ、地域の住人と観光客の両者の居場所となる図書館を提案する。
それぞれの道沿いには路地のような隙間が存在し、その奥に繋がる図書館の様子が隙間から垣間見え、奥の図書館へと人々を誘う。
街へと連続するように大小様々な屋根が連なり重なることで、どちらの建物の空間なのか、内なのか外なのかわからないような曖昧な空間をつくりだし、参道側と街側をつなぐ。
この二つの操作により人々が滞留し、様々なアクティビティがうまれる。
優秀賞
四季奏音 ─ 四季の音を奏でる図書館 ─
平山大悟・川名恵祐(東京都市大学大学院)
- 作品コンセプト
- 現代の日本は「静寂」を理想として作られています。
高気密高断熱を基本として作られた建築は、気配や音が伝わりづらいのが現状です。しかし、ほどよい音は人に安心感を与え、落ち着く場所へと導きます。そこで、音を用いた図書館を設計します。音から図書館を考えると図書館は本来、本を収蔵し閲覧するための場所であり、不必要な賑わいは必要ないと考えてます。そして本を読み、味わうために必要なものは「静寂」でもなくほどよい「気配」でしょう。
敷地は郊外中心地の近傍。都会の喧騒から少し離れた小さな山の中です。自然の音に囲まれた敷地こそ、ずっと居たくなる図書館としてふさわしいと考えました。その小さな山の中に足音や、風の通る音、樹々のざわめき、雨の音などに包まれる空間提案します。都会から山の中へと蛇行しながら少しずつ入っていく建築の内部は人工的な音から自然の音へと変化してゆきます。音という気配を捉える図書館を提案します。
- 作品コンセプト
- 観光域と居住域が混在し、観光客が減り活気がなくなりつつある温泉地。ここに「湯めぐり図書館」を提案する。温泉地に、図書館と温泉施設、地域施設の複合施設を提案することで地域コミュニティに観光客が参入できるプログラムとした。
分棟形式とした建物は高い回遊性を持ち、様々な空間をつくる。1階小路周辺の半屋外空間は、足湯や汲み湯があり温泉を楽しみながら読書ができる。三協アルミの開口により開放的につくられた1階地域施設は、共同キッチンや温室があり、住民の交流が活発に行われ訪れた観光客も参加できる。分棟建物をつなぐ2階のガラスの渡り廊下は閲覧スペースで、その人々の姿は小路からもうかがうことができる。
湯をめぐるように、空間を歩き回り、書をめぐる。観光客と住民が共に同じ時間を共有する図書館、ぐるぐるめぐってずっといたくなる図書館の提案。
建材提案賞
審査委員特別賞
Time Signature
中 遼太郎・玉田圭吾・中村勇翔(九州大学大学院)
- 作品コンセプト
- ずっといたくなる図書館とは時間を感じる図書館ではないだろうか。
植物や光、風が吹き込むことで均質な空間に揺らぎが生まれ、粗密が生じる。時間によって生み出されるこの粗密は刻一刻と変化していき、一度として同じ空間は存在しない。仰ぎ見れば一面に広がる植物の屋根。それは季節とともに姿を変え、人々を楽しませる。風による木の葉のざわめきや、雲による太陽の陰りなど、ふとした瞬間に自然に感じさせ、本の世界に彩りをあたえる。水平に広がるパーゴラと植物に対し、水平に上下したフロアをつくることで天井の緑との距離や光の入り方を調節し、本のジャンルに合わせた空間を設計する。
こうした時間の移り変わりを感じさせ、刻一刻と変化する自然と共に過ごす環境こそ人々を惹きつけるのではないだろうか。時間を感じることでその場でその時でしか感じることのできない感覚こそ人々を空間へと誘い惹きつける。
まちによりそう図書館
鄭 愛香・塩田優奈(桑沢デザイン研究所)
- 作品コンセプト
- まちの人々が愛着を持ち集う場であった商店街は、市街化によりかつての居心地を失いつつある。「まちによりそう図書館」はほとんど空き家となった店舗2階や主道路裏の住居スペースを改築し、商店街を縫うように新しい動線を引いた、商店街によりそう図書館である。
長さのある商店街がもつ既存の空間的構成を一新する動線を作りながら、長さを生かした「3種類の書庫」を配置した。3つの書庫は駅、小学校と公園、病院のように商店街近辺の環境を取り入れながら、図書館を利用する人々を社会人と学生、こども、お年寄りと3つに分ける。又書庫別に対象者に合わせて本も振り分けられることになり、書庫の間はカフェやテラスなど人々が交わる場で繋げられている。
ずっといたくなる場所は居心地のよい安心した時間が流れる。一度失いかけた慣れ親しんだ場が、再び新しいまちの顔として、ずっといたくなる愛着の場として再構成される。
- 作品コンセプト
- “キッカケ”の変換。
商店街は二つの社会的役割を担っていました。それは消費と地域の核(情報発信、コミュニティなど)としての役割です。
現在、消費の機能を十分に果たせなくなった商店街は衰退しています。それに従って、消費を“キッカケ”につくられた地域の核としての機能も衰退していきます。地域の核としての機能は他の場所に移るかもしくは無くなってしまいました。そこで消費の機能から本の貸出という機能へと“キッカケ”の変換を行います。これにより人々は本を目的に商店街を訪れ地域の核としての機能が維持されます。
もともと徒歩圏内で計画された商店街は老若男女を問わず人々があつまる可能性を持ちます。現存の商店街を利用した新しい図書館は過去と未来をつなぐ生活の拠り所となります。