結果発表
2021/07/01 10:00

第4回サンゲツ壁紙デザインアワード

応募作品数:420点
受賞作品数:7点
主催:株式会社サンゲツ

大賞

うつろい
高橋 賢治
うつろい
作品コンセプト
人の動きにより色や光が移り変わる壁をデザインしました。エンボス加工の凹凸を4色で塗り分けることで、角度によって見えてくる色が変化し、人の動きに伴ってグラデーション状に多様な色味が現れます。カフェやラウンジスペースに用いれば、一つの空間に明るさや落ち着きといった異なる質感が同居する場所となり、その時の気分に合わせて居る場所を選ぶ楽しさが生まれます。固定されたグラフィックではなく、うつろいゆく壁面とすることで、人の動きに合わせて場所の雰囲気も変わるような空間演出を想定しています。
受賞コメント
壁紙自体は動かないものですが、人の視線や感情は常に変化していて、自分の中では、こんなものがあったら楽しいだろうなという思いを作品にしました。自然の風景の移ろいを壁紙で表現しています。受賞を大変嬉しく思います。
審査コメント
人の意識や動きを考えたデザインで、静止したものと捉えられていた壁紙の役割が広がると思う。言うなれば、ヤコブ・アガムを壁紙にしたものだが、現代の技術ならそれを建材化できる。非常にポテンシャルの高い作品だ。(谷山 直義)

アイデアが圧倒的。始めから空間を意識していて、マクロからミクロへという視点でつくられている。色合いなどは日本的にも感じるし、世界でも通用するミニマルなデザイン。技術的な懸念も感じたが、実現可能だと聞いたので、ぜひ商品化してほしい。(植原 亮輔)

アワードのコンセプトをとても良く理解していて、「あったら楽しくなる」というものを作品化できている。非常に作り込んだものだが、それが前に出すぎることなく客観性を保っている。そういう距離感も作者の人となりが現れていて、評価したい。(安東 陽子)

色とエンボスの凹凸を同調することにより、見る方角によって全く違う色調が表われる作品。当社はこの色の移り変わりを、現在のベストの技術および製造方法により商品化するべく挑戦したいと思います。(安田 正介)

優秀賞

first rhythm
小野 竜哉
first rhythm
作品コンセプト
遠くから見ると細かいパターンの空間だが、壁紙の近くで見れば各々のパターンに個性があることがわかる、「気づきの空間」を目指した。規則的に並んでいるように見えるパターンだが、よく見ると一つ一つ違う形状が敷き詰められている。各々の形状は、実際に彫刻刀で木版を彫り、配置している。ステイホームが続く中、アナログでの作業や所作を大切にするようになってきた。一つの空間に居ることで、手作業の痕跡が見えるようなプリミティブな空間を目指した。
受賞コメント
線の集合に見えるものが、実は一つ一つ異なる形状を持っています。手彫りの木版をベースにして、懐かしさや温かさを感じさせるアナログ感を大事にしました。初めて参加させていただき、こういった賞を授かることにとても感謝しています。
審査コメント
不思議な作品だ。古いようで新しく感じる。若い世代ならではの感性で抜き出てきたものがある。多様な見え方をする奥行きを持っている。(谷山 直義)

デザインとしてヌケの良さがある。パターンのネガポジの関係がいろいろな見え方を誘発している。ありそうでないデザインだなと感じた。(植原 亮輔)

ベースを手彫りの版画で起こしたという、手作りの良さがうまく出ている。とはいえ、色の選び方など心地良いクールさもあって、好感が持てる。(安東 陽子)

審査員賞(谷山賞)

rain-feel
千葉 拓
rain-feel
受賞コメント
私は建築学科の学生で、畑違いで難しいのかなと思っていました。作品では、雨のガラス窓がそのときどきで空間を変えうる様子を、淡い光沢とマットホワイトの雨垂れで表現できればと考えました。今回を機にもっと頑張ってデザインをしたいです。
審査コメント
身近なところからの視点で、空間として壁紙を捉えている。ある種の二重性があり、壁紙という軸はぶらさずに、現象を表現したところはチャレンジだし、新しいあり方と思う。(谷山 直義)

審査員賞(植原賞)

karanuri
南澤 詩音、澤田 昂之介
karanuri
受賞コメント
平坦な壁紙に層を感じさせながら、華美と重厚感を持たせました。私たちは学生と社会人なので、それぞれの見えない領域を埋め合うように、制作に励みました。(南澤)

和の空間が持つ経年変化に着目し、津軽の唐塗にたどり着き、モチーフとしました。なるべく楽しい作品をつくろうと頑張ってきたのが、こういう結果に結びついて誇りに思います。(澤田)
審査コメント
特徴的なデザインで、センスの求められる難しさがある。漆というモチーフのせいか、奇抜さがありつつも、どこか日本的な親しみを感じる。豊かな表情で想像力を掻き立てる。(植原 亮輔)

審査員賞(安東賞)

呼応する壁紙
大塩 峻由、濱村 太郎、田巻 翔平、松田 豪
呼応する壁紙
受賞コメント
光の変化や人の動きで変容する空間を壁紙で提案しました。透明・不透明の素材を何層も重ねています。4人は同じデザインの会社に勤めていて、一人ではできない発想や手法を試みるという経験は貴重でした。人によって異なる見え方や体験のできる作品に仕上がったと思います。(松田)
審査コメント
異素材をうまく組み合わせて、多彩で複雑な表情をつくっている。人、時間、そして壁紙が、空間に介入する関係性を意識して取り入れていて、アワードの趣旨にもふさわしい。(安東 陽子)

奨励賞

大百鬼夜行
中澤 正美
大百鬼夜行
受賞コメント
さまざまなものを入れ込んだ構成と鮮やかな色遣い、モチーフの生き生きとした表情を重視しました。絵を描くためのPCソフトも全然使えない自分が、まさかこんな賞をいただけるとは思いませんでした。これを励みにいろんなことに挑戦したいです。

サンゲツ社員賞

AtoZ
松本 千明
AtoZ
受賞コメント
グラフィックデザイナーで書籍・雑誌など文字を扱う仕事をしています。より多くのマテリアルを扱える空間のデザインをしてみたくて、応募しました。文字の反復と距離による見え方の差をデザインに生かし、100以上のフォントの検証を経て、たどり着いた作品です。
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