2016/08/31 10:00
親子の日エッセイコンテスト 2015
応募作品数:811点
受賞作品数:22点
主催:親子の日普及推進委員会
※ここでは、入賞作品からオリンパス賞の2点を一部抜粋してご紹介します
オリンパス賞
ふたつの親孝行
堀江千春
- 作品内容(一部抜粋)
- "父のことが嫌いだった。気が利かなくて、品がない。友だちのうちみたいにスーツを着て、役職を持って働いているわけでもない。劣等感。家がボロいのも、希望の高校に行けないのも、恋愛がうまくいかないのも何もかも、うちが貧しいせい。すべては父のせいだと思っていた。
高校卒業後はそんな父の存在から早く逃れたいと、実家を出て一人暮らし。たまに帰省することはあったけれど、母や兄弟や友達とばかり話して、父の存在は一切無視。思春期以降、ろくに話もしてこなかった。
父に対する思いが変化したきっかけは、私が子どもを持ったことだ。父はおじいちゃんになった。父は孫を溺愛した。帰省をすれば駅まで迎えにきて、改札を出るやいないやベビーカーを私から奪い取るようにして自分で押していく。まだ眠そうに眼をこすっている早朝から寝る時間まで、一日中孫の名前を呼んでいる。鼻歌まじりにお風呂掃除をして、孫を毎日お風呂に入れる。
…"
打ちゃ当たる?
尾種栄春
- 作品内容(一部抜粋)
- "家内が嫌な顔をする私の趣味にカメラがある。家内の目から見れば、同じにしか見えないようなレンズを幾つも欲しがるものだから、叱られるのも当然だ。まして何時もピンボケばかりで上達しないのだから。
言い訳はある。チョーがつく程のド近眼なのだ。運動会やお遊戯会の写真を撮ろうとしても我が子が何処にいるか分からない。分かったとしても、現像した写真を見て、初めて子供の表情分かるくらいだから、もともと向いていないのだ。半開いた目の写真なんて山ほどあるから、フィルムカメラの時代ならば、離婚訴訟に発展していたかもしれない。
父もカメラが好きだった。私と違い、子供の頃の私や兄の写真はどれも実に上手く撮れている。
問題は、弟や妹の写真が少ないことだ。父は、子供が出来る度に自分の小遣いを減らしていた。煙草は最後まで止めなかったが、それ以外はずいぶんと節約していたから、必然的に現像代のかかる写真はあまり撮れなくなった。
…"