結果発表
2015/12/02 10:00

MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD 2015

応募作品数:177点
受賞作品数:13点
主催:MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD 実行委員会

大賞

『「14:31pm.2013.7.3」-in Tamagawa Aqueduct』
孫 思嘉(武蔵野美術大学大学院 造形研究科 デザイン専攻 修了)
『「14:31pm.2013.7.3」-in Tamagawa Aqueduct』
作品概要
視覚、触覚、聴覚、嗅覚という四つの感覚について、玉川上水沿いで私が経験した一分間の「時間+空間」を「世界体験の神経細胞(セル)」として分析した。一つひとつの「セル」は、一分間における視覚、触覚、聴覚、嗅覚の最小単位の変化を表現しており、これらと向き合う人は、見る、触れる、聞く、嗅ぐといった行為によって、「微分された世界」を感じさせられる。新しい伝達の可能性を探す、立体的な実験作品である。

佳作

『ある豆の話』
田嶋 晃子(東京藝術大学 美術学部 デザイン科 卒業)
『ある豆の話』
作品概要
あなたはチョコレートを食べたことがあるだろうか?大抵の人が、「はい」と答えるだろう。しかしこの身近なお菓子が、どのような原料から作られているか、生産者はどのような人で、今までどのように食べられてきたのか、あなたはご存じだろうか。この作品は、華やかなチョコレート文化の裏側に隠れた歴史を拾い上げ、まとめた絵本である。食べ物を「食べる」とはどういうことなのか、それを考えるきっかけの1冊となれば光栄だ。
『Sense of Field』
佐藤 仁美(武蔵野美術大学大学院 造形研究科 デザイン専攻 修了)
『Sense of Field』
作品概要
光の「ゆらぎ」を見ていると、さまざまな自然の光を連想することができる。たとえば水面の漣、木漏れ日、雲間に見える光などがある。私たちはそれらに魅力を感じる。光の「ゆらぎ」を観察しているうちに、人工的な媒体を通した光でも自然の光を感じることができるのではないか。本作品では、単に「ゆらぎ」の美しさを表したいのではない。時間が経つにつれて身体が自然のリズムを掴み、光の中で「ゆらぎ」と一体となることを感じてもらいたい。

MITSUBISHI CHEMICAL賞

『Design for living better.』
堀越 真魚(京都精華大学 デザイン学部 プロダクトデザイン学科 卒業)
 『Design for living better.』
作品概要
僕の卒業制作のテーマは、人々の生活を少しだけ便利にするアイデアを具現化することです。それはデザインをもって、個々の足元から「より良く生きる」を摸索する試みです。今回作った作品は、僕がタンザニアで生活し、その日常の中で閃いたアイデアを単純に形にしたモノです。ほんの少しのアイデアで何かが良い方向に変わっていく。その最初のきっかけとしてこの作品たちが生きていけば、僕の卒業制作は成功だといえるでしょう。

水野誠一賞

『家具を葺く』
望月 和也(東京藝術大学大学院 美術研究科 デザイン専攻 修了)
『家具を葺く』
作品概要
自然素材による伝統的茅葺屋根はかつて人々の生活を支えてきた。現代では生産効率、耐久性の高い素材がそれに替わり、伝統的な屋根は歴史的文化財になりつつある。しかし、これらのリサーチを重ねることで、自然素材で作られる伝統的屋根には、現代の建築やプロダクトとは異なる、五感や記憶を呼び覚ます力があることを実感した。そこで伝統的屋根工法を屋根ではない新しいかたちでいま一度身近に感じ、再発見をすることをコンセプトとして家具を制作した。

石井幹子賞

『滲むことば』
入佐 巴(武蔵野美術大学 造形学部 視覚伝達デザイン学科 卒業)
『滲むことば』
作品概要
本作品は、縦糸と緯糸が重なることで滲む見え方をする文字を作り、編み合わせて文章にしたグラフィック作品です。私は福岡県の伝統工芸である「久留米絣」の織元に取材を行いました。絣の美しさ、媒体としての価値を学ぶと同時に、手織り工芸の縮小という現実を知りました。手織り工芸の光と闇を表現したことばを、より多くの人々に伝えるために欧文に落とし込み、自らの手で編み、縦2.5m、横6m程の巨大な文様を制作しました。

榮久庵憲司賞

『MOON』
福井 勝一(九州大学 芸術工学部 工業設計学科 卒業)
『MOON』
作品概要
日本の超高齢社会において、介護は体力的にも技術的にも大きな負担を強いる動作であり、介護問題は今後一層深刻度を増すと考えられる。その解決策の一つとして、「自宅に住む高齢者同士がお互いをケアすることをより楽にする」ということが考えられる。本研究では要介護レベル1~2の高齢者同士の介護を対象に、介護動作の中でも特に負担の大きい「起き上がり」と「移乗」を楽にする、新たな補助具のデザインを創出した。

向井周太郎賞

『金魚』
加藤 美帆(武蔵野美術大学 造形学部 基礎デザイン学科 卒業)
『金魚』
作品概要
長年にわたり日本人好みに品種改良されてきた、いわば人工の生き物である金魚。その姿を分析的に整理し、グラフィカルに表現することで、彼らの美しさ、愛らしさと同時にある「人工的ないびつさ」を顕在化させた。人が制御することによって生み出す作為的な形と、そこから逃れようとする生物としての自然な形。二つのせめぎ合いの中で、金魚特有の情緒は生まれる。彼らによって誘い出される、私たちの多様で複雑な情感を示したい。

柏木博賞

『Trace of Motion』
三谷 直樹(京都工芸繊維大学 工芸科学部 造形工学課程 卒業)
『Trace of Motion』
作品概要
人間の身体の動きは美しい。本作ではスポーツに焦点を当て、動きの本質を抽出することで美しさを再認識することを目的とした。綿密に収集した映像からアスリートたちの生み出す軌跡を抽出し、洗練された線によって出来上がるカタチを描いた。鑑賞者は具体的なイメージを持たない美しさに引きつけられ、文字情報によりカタチの意味を理解したとき、線は動きだし、身体の動きの美しさを再認識することになる。

河原敏文賞

『rhythmos』
上野 陸(多摩美術大学 美術学部 情報デザイン学科 卒業)
『rhythmos』
作品概要
人は他との関係が生じた際、その状況を俯瞰視することで、自己の存在を意識することがある。その存在のかたちは、奥行きがあり、視点によって見え方が変化する立体的なものであると考えた。作品の前に立つことで起こる、「現実」と「3Dの仮想的な自分」の干渉。インタラクティブな映像によって、その場を俯瞰視した一瞬につくられる自己の存在のかたちと、その連続する蓄積から現れる存在の全体像や凸凹などの立体感の表現を試みた。

坂井直樹賞

『Lotti -道具をまとめて運んで出先で楽しめる小さな乗り物-』
森川 優(成安造形大学 芸術学部 芸術学科 卒業)
『Lotti -道具をまとめて運んで出先で楽しめる小さな乗り物-』
作品概要
日本の若者のクルマ離れが進んでいるとされる昨今、その原因のひとつとして、公共交通機関の発達や趣味の多様化に伴い、クルマの魅力が十分に発揮されていないことがあげられるのではないだろうか。そこで私は、手軽に使え、新たな生活スタイルを作り出す乗り物をデザインできないかと考えた。同じ趣味を持つ者同士のつながりの場として、また時にはプライベートな時間や空間を楽しむためのモノとして、さまざまな趣味やスタイルに合わせて使える乗り物をデザインした。

都築響一賞・茂木健一郎賞

『undergo』
八島 良子(武蔵野美術大学 造形学部 空間演出デザイン学科 卒業)
『undergo』
作品概要
美しさとは何か。人にとってのファッションとは一体何なのか。外見によって多くを判断される中で、私たちは何を見つめているのだろう。その人のどこまでを感じているのだろう。経験に包まれ、蓄積されてきたものから生まれる人の表層、それを美しいと感じる意識を捕えたい。

日比野克彦賞

『BORO (2014, Japan)』
溝部 みすず(多摩美術大学 美術学部 生産デザイン学科 卒業)
『BORO (2014, Japan)』
作品概要
かつての日本文化には、布が朽ち果てるまで無駄なく活用し続ける「ぼろ布文化」が根差していた。大量生産・大量消費の対極ともいえるこの営みのもとで発展した刺し子や裂織から着想を得て、家庭で不要となった衣服をミシンで加工して作る、現代ならではの「ぼろ布作り」を考案し、この「ぼろ」を生かす足袋と手袋を制作した。家庭で繕い物を楽しみ、布を慈しむ、現代日本における「ぼろ布文化」再生への試みである。