結果発表
2025/11/21 10:00

第36回 人と海のフォトコンテスト「マリナーズ・アイ」

主催:一般財団法人全日本海員福祉センター

応募作品数:2500点
受賞作品数:18点(入選を除く)
※ここでは、上位7点をご紹介します

大賞

潮垢離
樋口良夫
潮垢離
作品コメント
垢離とは、神仏に祈願するために心身を水で浄めること。作品は愛媛県西予市の賀茂神社秋の大祭の宵宮でおこなわれる儀式を撮ったものだ。
地元の若者たちが何度も海へ飛び込み浄め、夜空を焦がす篝火に身を暖めて、また海水へ、をくり返す。最後に一昼夜海につけていた牛鬼を引き上げて終るという神事であり、当日は多くの見学者がある。
作者はその勇壮な行事を2点の組写真でドラマティックに仕上げている。臨場感もある。何よりも海に囲まれた日本の歴史と文化をしっかりと学んだ上で、被写体に向き合っているので、他作品との差が否めない。
しかし、受賞者はこの3回展で、続けて大賞2回、推薦を受賞している。36年間の「マリナーズ・アイ」展ではなかった快挙だ。しかし、応募者の皆さん。来年こそはチャレンジしてこの現状を打ち破ってほしい。切に期待している。(小松健一)

推薦

NEW錨鎖
山本健太郎
NEW錨鎖
作品コメント
今治市にある造船所で撮っている。それもよく発表される進水式でなく、その5日前に現場に立ち、球状船首と呼ばれる船の造波抵抗を打ち消すための球状の突起物(赤色)を主役に、まだ収められていない新しい鎖を対称にして不思議な造形を捉えている。簡素化した、いままでに見たことないアングルから切り撮っている。労働者が写りこんでいれば、さらに勝れた作品となった。(小松)
耳をすまして
皆川春奈
耳をすまして
作品コメント
伊予港に住みついている野良猫だと言う。つぶらな瞳孔に吸いこまれてしまいそうである。漁船がつながれている静かな港の景観をうるさくない程度にボカして猫を際立てている。凪いだ海面の中に主役を入れたのも成功している。耳毛の一本一本が鮮明となり「耳をすまして」いる様に見えるのだ。港の猫の写真としてはもうし分ない作品ではあるが、テーマ、メッセージが弱い。第33回展に作者が大賞を受賞した作品「海に憂う」と比べると理解できよう。(小松)

特選

クリーン活動
谷口常雄
クリーン活動
作品コメント
静岡県浜名湖に隣接している湖西市で撮影している。作品の内容は見ての通り海底のゴミ拾いをダイバーたちがしている様子だ。
最近、海岸でのゴミ拾い活動の作品は少しずつ目にしてきたが、水中でのゴミ回収の活動は初めてである。作者の視点が新鮮であり、メッセージ性が明確であったことが評価できる。古稀の作者が海中に潜って撮影している姿を想像しただけでも拍手を送りたくなる。(小松)
今年もよろしく!
室田あい
今年もよろしく!
作品コメント
京都府の丹後半島の突端に位置する伊根町での撮影だ。伝統的な舟屋と美しい海とのコントラストに人気がある。今展にも多くの応募があったが、特選に輝いたのは、この作品である。
作者は自宅のある兵庫からよく訪れていると言う。祭祀の日に町を歩いてのスナップ。特に祭りの大役さんとの談笑しているカットが良い。ほとんどの応募者が狙っていた舟屋をメインとせず、対岸の水平線にかすかに認められる程度にしたのが成功した。(小松)
暗雲をくぐり抜けろ
梅津郁朗
暗雲をくぐり抜けろ
作品コメント
明石海峡を航行する大型貨物船。遠方は夕日に染まり晴れているが、手前の空には巨大な黒雲が広がっている。作者も船上から見守りながら撮影しているのだろうか。タイトルから緊迫感が窺える。この作品のポイントは、宙に浮かぶ橋長3911m、世界最大級のつり橋である明石海峡大橋を撮り入れたことである。(小松)
海風
永廻賢二
海風
作品コメント
日本の代表的な海岸砂丘で、東西約16km、南北2.4kmにおよぶ鳥取砂丘で撮っている。その広さは日本最大級である。海からの風は、砂まみれ、砂嵐の表現がふさわしく、その気象は想像を絶する程のことがある。
砂丘に来た人びとは皆、砂嵐対策を講ずる。特に少年たちはそれぞれにユニークだ。その様子を撮ったのが本作品である。奇抜な着想の発見がこの作品の真骨頂である。特に赤い手鏡みたいなものを持っている少年の写真は秀逸である。(小松)
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