結果発表
2016/07/22 12:00

KONICA MINOLTA ソーシャルデザインアワード 2016

主催:コニカミノルタ株式会社

グランプリ

「新人Hソケリッサ!」踊る路上の身体。
アオキ裕キ
「新人Hソケリッサ!」踊る路上の身体。
作品紹介
私は2005年よりビッグイシューの協力を得、路上生活者に声をかけ参加者を募り「新人Hソケリッサ!」という名称において、路上生活者及び路上生活経験者とともにダンスを踊っています。(H=human、homeless、hope等/ソケリッサ!=それいけ、前進等のイメージ、造語)

私は原始時代の頃の体に興味があります。日が昇って鳥の声が聴こえて目が覚める。お腹が空いたら食べ物を探す。夜になると静けさに怖くなる・・

世の中が発展して便利になって行くにつれ、人の体は「生きるということ」に向き合う機会をなくしているように感じます。路上生活状況の体は少なくとも現在の社会に埋もれる私より原始の感覚に近いのではないかと感じます。又、生きることに向き合わざる得ない路上生活経験の体から生まれる肉体表現は、身体の重要性を失いつつある現代社会にとって必要な景色が見えると感じています。

「生きるということ」に向き合う路上の身体記憶を生かしたこの芸術活動は、人間のあるべき姿への復興へとつながり、参加メンバーの自己肯定および社会参加意識の回復、および社会的弱者のモチベーションの獲得へとつながり、踊る側、観る側双方にとって幅広い可能性を大きく持つ展開になると感じています。

アート賞/協賛社特別賞(J-WAVE賞)

とくいの銀行 取手-山口-札幌
深澤 孝史
とくいの銀行 取手-山口-札幌
作品紹介
お金の代わりに自分のとくいなことを運用するとくいの銀行を開設し、運営するプロジェクト。作家(深澤)自身が頭取に就任し、2016年時点で、茨城県取手市井野本店、山口市ななつぼし商店街支店、札幌市札幌支店 since1869 を開業。

自分のとくいなことを銀行に預ける(ちょとくする)と他の人が預けた「とくい」を引き出すことができ、その仲介を銀行員が行っていく。個々人の特性と関係性から導く公共をテーマに、とくいを預けた人と引き出した人が軸になってできる場をつくり続けている。これまで合計で 2500 件以上のとくいを預かっており、200 件ほどの引き出しイベントを行ってきた。 また支店ごとの特色もあり、銀行を開くことでその地域の課題を浮き彫りにしていく活動を同時進行してきた。都市の規模が大きくなるにつれ、どうしても個から公共が遠のいてしまう現状を見つめなおす点、銀行を開業していく場所ごとに地域についての捉えなおしも行っていく点で、簡易なシステムと柔軟なインストールの手法で展開していく。

プロダクト賞

BOP LIFESTYLE IMPROVEMENT PROJECT
南出 由裕、原田 真之介/COTATSU
BOP LIFESTYLE IMPROVEMENT PROJECT
作品紹介
後進国の人々は、私達が想像できないような危険な生活環境で暮らしています。
私達が持っているアイデアで彼等の生活を改善する事がソーシャルデザインと捉え、サンプル国として選んだ東ティモール民主共和国でリサーチ活動を行い、プロダクトのプロトタイプを2つ制作しました。
プロトタイプ1は、現地調達できる素材を使った歯ブラシ。
一般的な毛先がダメになったら捨てるタイプの歯ブラシでは買い替えが必要になってしまい、その都度購入ができないため、歯を磨く事自体が習慣化されていません。それによって多くの人が歯を失ったり病気を患っている問題に着目しました。
ブラシ部分を取り外し可能にし、交換用の毛に一般的に家畜として飼われているブタの毛を使用する事で、新たに買い替える必要がなく使い続けられる流れを考えました。
プロトタイプ2は、廃タイヤを再利用した子供用シューズ。
現地の子供達は成長に合わせた靴の買い替えができないため、素足での生活を強いられています。そのため衛生環境の悪い荒れた路面で怪我をし、重症化する事があります。
さらに捨て置かれた廃タイヤに雨水がたまる事で、ボウフラの発生源になり伝染病の広まるリスクが高まっています。
そこで廃タイヤを再利用したシューズを制作する事で2つの問題を解決できると考えました。
一枚のゴムからなるシューズにする事で、足のサイズに合わせて調整できるフレキシブルさ、運搬時のコスト削減に繋がります。

プロジェクト賞

MATEREAL ~障がい者の方々が制作した生地が社会問題を解決するプロダクト~
竹鼻 良文(代表者)・香川 芳樹・中村 みずき
MATEREAL ~障がい者の方々が制作した生地が社会問題を解決するプロダクト~
作品紹介
MATEREAL(マテリアル)とは
Mate (片方) Real(現実)
「就労支援事業所の現実に目を向けよう」という意味からできた造語。

MATEREALのコンセプト
人が助け合ったり、頼ったりする時に「手」が相手の記憶に残す「温もり」を手がかりに、障がいを持つ方々が織った手織りの生地とTシャツなど普段身につける物で「手の温もり」をデザインし表現することをコンセプトとしています。温もりは健常者や障がい者に関係なく全ての人が持ち合わせる能力です。その能力を1つのプロダクトで、しかも障がい者・健常者が力を合わせて製作し表現することで、ボーダーレスな社会を目指す為の意識の共有、情報発信の為の存在価値としてMATEREALがあります。

安藤貴之 審査員特別賞

手紙のすゝめ -郵便局におけるパブリックスペースのあり方についての提案
川合 遥香
手紙のすゝめ -郵便局におけるパブリックスペースのあり方についての提案
作品紹介
普段顔を見られない、日本中、あるいは世界中、遠く離れたところにいる相手にこそ、時間をかけて手紙を書き、届けたい。
その手紙を送る手段として、郵便局 がある。
手紙を送る手段としてだけではなく、手紙を書くという行為、相手を想うという行為を広めていく手段としても、郵便局に可能性があるのではないだろうか。設計対象は郵便局とし、郵便に着目しパブリックスペースを充実させたその新しいあり方を提案する。
郵便局という日本全国最大にして最古のネットワークにより、誰かが誰かを想うあたたかい場が、日本中に広まってゆく。
ひとつのモデルをもとに、23331局(郵便局の数)が徐々にかわる
Type S があたたかい場にかわること = 日本中があたたかい場にかわってゆくこと
慌ただしい現代に送る、場とそのしくみの提案。

廣田尚子 審査員特別賞

おじゃま工房
南 美月/京都Xキャンプ美山
おじゃま工房
作品紹介
京都府南丹市美山町。過疎化高齢化のすすむ中山間地であるこの地域の、宮島地区長谷(世帯数45、人口139)という集落で、私たちはこの取り組みをしています。山に囲まれたこの小さな集落で暮らすひとたちは、都市部で育った私たちから見ると、地域全体がみんなお互いのことをよく知っていて良いなあと感じました。しかし、彼らは「これといって話題のない毎日」と。このプロジェクトは、代わり映えしないここの日常に、外から来た私たちが何か新しいことを持ち込むのではなく、地域の人とのれんをつくる活動を通して、日常に埋もれた記憶を引き出し、既知を新鮮化することで話題をつくり、のれんができるまでのプロセスにおいても、できてからの暮らしにおいても、コミュニケーションの手がかりをつくる取り組みです。

ものの姿を変えて、使うこと
ものが持つ記憶や思い入れが、めぐりめぐって人の心に何かを語りかけられるのではないかという思いから、着る機会を失った着物など、そのお宅に眠る布を材料にし、のれんをつくっています。

コミュニケーションの手がかりを
私たちがデザインしたのれんを、作って渡すのではありません。そのお宅におじゃまして、そのお宅の人と一緒に考えるデザイン。そのお宅のマークをデザインし、のれんにあしらう。そのマークを含めたのれんのデザインです。 つまり、地域の人が、地域にあるものをもとに、作り出すものだということです。

山本裕子 審査員特別賞

ONE VOTE 20代のための政治・選挙情報アプリ
山戸 蕗
ONE VOTE 20代のための政治・選挙情報アプリ
作品紹介
「ONE VOTE」は20代のための選挙・政治情報アプリケーション。
選挙に行かなければいけないのは分かっているけど、政治ってなんだか難しい。
調べるのも面倒で、関心が持てない若者は多い。
そんな20代が普段からチェックしやすいアプリがあったら?
いざ選挙に行く時も、自分がどんな政党や政策に興味があるか知っておけば困らないのでは、と考えた。

デザインポイント
● アイコンやイラストで難しい言葉を削減
● 爽やかで知的なイメージのカラーリング
● 政策・マニフェストもアイコンで表示
● 自分の気になるワードから舟(政治家)を選べる

さあ、あなたが乗りたい舟(boat)はどれ?

山崎亮 審査員特別賞

ATMEAL
MISHOW × 石崎育味
ATMEAL
作品紹介
いつでもどこでも胃ろう患者と家族が、一緒に食事を楽しむことができる新しい介護補助機器。

現在、胃ろう造設患者数は全国約26万人います。(2011年全日本病院協会調べ) 今、胃ろう患者へ栄養剤を注入する時のほとんどは、手で栄養剤を押し出し15分以上かけて胃に流し込んでいます。その作業は三食全てに要し、また注入中は患者の傍から離れる事ができません。そのため、胃ろう患者を看護する人の”労力”と”時間”が日常の大きな負担となっています。

この労力と時間の負担を軽減するために開発した商品がATMEALです。
ATMEALの特長は、①自動で栄養剤を巻き取ることができます。②携帯の充電器で可動するので、持ち運びが可能です。③安全装置付きなので離れていても安心です。④食卓にも馴染むよう、お弁当箱の形です。(トートバック付)

私たちは、ATMEALを使うことで日々の食事にかける労力や時間の負担を軽減し、胃ろう患者家族の食卓風景に彩りを添えることができるよう願っております。

協賛社特別賞(IDÉE賞)

オオタノカケラ
酒百 宏一
オオタノカケラ
作品紹介
町工場のまち大田区。かつては9000もあった町工場は現在半分以下にまで減り、工場跡はマンションや駐車場となり、今後も後継者のいない高齢者の町工場は人知れず廃業し、まちは何事もなかったように様変わりしていきます。

この活動は、大田区北糀谷で町工場を営まれていた職人が不慮の事故で亡くなり、不在となった町工場から提供していただいた道具を一つの資源として、美術作家の酒百宏一がフロッタージュという写しとりの技法によって参加者とともに作品をつくります。
写しとった作品をつなぎ合わせることで、大田区のモノづくりの特徴である「仲間まわし」を表現します。住民と恊働して作品を制作することにより、モノづくりの魅力と大田区の魅力を再発見し、これからのまちにつなげていく活動です。
この活動では、職人が使用していた道具や部品をフロッタージュという写しとりの技法によって作品をつくります。フロッタージュは、木や石などの凹凸面に紙を置いて上から鉛筆などでこすり、図柄を紙面に写し取る描画技法です。表面を写し取ることで、カメラにはけっして写すことの出来ない、町や職人の記憶をこすり出します。小さな子供から大人までが思い思いに写しとった作品をつなぎあわせて、この秋、ひとつの大きな作品をつくります。

オーディエンス賞

『焼きコップ』陶磁器文化振興プロジェクト
上久保菅原山根(現:coneru)
『焼きコップ』陶磁器文化振興プロジェクト
作品紹介
日本では、一年に10ヶ所、窯元が消失しています。
陶磁器の販売数量が年々減少する一方で、より安価な食器が世の中に普及し、その結果、やむなく廃業にいたる窯元が後を絶ちません。その中の大半を占めるのが、銘柄のほとんど知られていない小さな窯元。1970年代から30年間で、約半数以上の窯元が消失しました。私たちは、日本全国に散らばるさまざまな陶磁器の魅力を広く世の中に伝える必要を感じ、本プロジェクトを考案いたしました。
 
焼きコップ ~日本全国約160種の陶磁器を紙コップに~
日本全国に点在する陶磁器を、メジャーなものだけではなくマイナーなものまで、身近な紙コップで再現しました。陶磁器ならではの風合いを持たせ、コップの底には銘柄にまつわる物語や由来を記載しています。さらにそこから本プロジェクトのWEBサイトへと誘導します。
WEBサイトでは、モチーフとなった実際の陶磁器を購入することが可能です。陶磁器の特徴やこだわり、作り手の思いを伝えていきます。さらに、窯元からの求人情報やワークショップ情報などもサイト上に掲載し、生活者と生産者をつなぐプラットフォームとなっています。
本プロジェクトでは、今まで見過ごされがちであった陶磁器の魅力を身近な紙コップで再現することで多くの生活者に気付きを与え、実際に購入できる場へとつなげることによって、作り手にも買い手にも利益が生まれる仕組みをデザインしました。